2013 Fiscal Year Research-status Report
胸部X線CT検査における画質評価指標と被ばく線量の関係に関する研究
Project/Area Number |
24601010
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
池田 充 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50184437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 國治 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20335053)
川浦 稚代 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60324422)
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Keywords | X線CTの画質評価 / X線CTの被ばく線量 |
Research Abstract |
X線CTの画像再構成過程を計算機シミュレーションする際には離散量的に処理する必要があるが、計算機シミュレーションではこの離散的処理におけるサンプリング誤差の影響を回避できない。この誤差対策の方法の一つに、Averbuchらが考案した「離散ラドン変換」がある。同法の要諦の一つにディリクレ核を用いた補間法があるが、Shepp-Loganファントムを使用して、ディリクレ核を用いた補間法によって得られるサイノグラムと通常用いられる画素を分割して近似する方法によって得られるサイノグラムを、解析的に得られるサイノグラムを基準として比較検討した。その結果、ディリクレ核を用いた補間法は、画素を分割して近似する方法に比較してかなり精度よくサイノグラムを計算することができることがわかった。 さらに、CT画像の各画素の領域で吸収される光子数を、CTを撮影する際のX線束に沿って質量減弱係数だけを用いて近似的に計算することを試みた。仮想的なX線CT装置に対して、我々の考案した解析的な式によって計算される雑音SD(標準偏差)と比較した結果、CT画像上の各画素の領域において、吸収される光子数の平方根の逆数と(画素別の)雑音SDとの間には強い線形相関が認められる結果となった。このことは、これまでに知られている両者の関係が各画素の領域においても近似的に成立することを意味するとともに、雑音SDの値は被ばく線量と密接に関係していることを示唆するものである。これまでの検討結果からは、各画素における散乱を考慮しなくても各画素の吸収線量は比較的精度よく求められることが示唆され、雑音SDの測定から被ばく線量の推定を比較的高い精度で行うことができることが示唆された。さらに、この方法による被ばく線量の計算の精度について、モンテカルロ・シミュレーションによる計算結果と比較し、両者の差は一定の範囲内におさまっている結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初より、色々な検討場面において、仮想的なCT装置を使用したシミュレーションによる検討が必要となり新規のプログラム開発をしてきた。この過程でX線束と対象物との相互作用のシミュレーションを巨視的な意味での微少体積と見なして実施する上で、離散的処理におけるサンプリング誤差の影響が少なからず生じることが判明した。この誤差の減少させる検討に長時間を有したが、Averbuchらが考案した「離散ラドン変換」によって克服する見込みがつき、さらにこの方法を応用して、CT画像の各画素の領域で吸収される光子数についてCTを撮影する際のX線束に沿って巨視的な意味での微少体積と見なして近似的に計算する方法を新しく考案した。この方法によって、被ばく線量と直接的な関係のある雑音SDに関する理論的な解析については、昨年度からの検討に引き続く形でかなりの進展が認められ、本研究の主目的である「胸部X線CT検査における画質評価指標と被ばく線量の関係」について本質的な検討ができる段階に至った。従って、この部分については、当初の計画外の進展が認められたと自己評価している。しかしながら、実際のX線CT装置とファントムを使用した被ばく線量に関する検討については、当初の計画より遅れたものとなってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度考案した、CT画像の各画素の領域で吸収される光子数についてCTを撮影する際のX線束に沿って巨視的な意味での微少体積と見なして近似的に計算する方法の精度を、モンテカルロ・シミュレーションによる計算結果との比較検討を行うことによって明らかにする。そして、この計算精度を明らかにすることによって、「胸部X線CT検査における画質評価指標と被ばく線量の関係」に関する仮説的な関係の精度について明らかにする。 一方において、青山らにより考案され作成されたシステムを用いて、名古屋大学医学部附属病院に設置してある(市販の)X線CT検査装置を使用して、被ばく線量測定用ファントムを用いた被ばく線量の測定と、画像評価指標を実測するための同ファントム画像の撮影について、引き続き実施する。被ばく線量は、測定に使用するX線CT検査装置において許容される範囲内の各種の管電流と管電圧にて測定を実施する。ここで、被ばく測定した各管電圧に対して、使用したX線の実効エネルギを測定しておく。このようにして得られた実測によるデータとシミュレーションによって得られたデータを比較することによって、シミュレーションによって検討した関係の精度を実証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、当初計画した科学技術計算用のソフトウエアについて、所属機関のサイトライセンスを利用することとフリーソフトウエアを慎重に検討して代替使用することにしたことによって、同ソフトウェアの調達費用が当初の計画よりかなり節約できたことによる。 ワークステーションの購入費として使用するとともに、名古屋大学情報連携基盤センタの計算機の使用料と論文発表における英文校正のための費用として使用する予定である。
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