2012 Fiscal Year Research-status Report
透過型アナライザを用いた極小角X線散乱イメージングの開発
Project/Area Number |
24601011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
島雄 大介 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (20404907)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射線 / 散乱イメージング |
Research Abstract |
これまで屈折コントラスト画像撮影用に使用していた透過型アナライザを用いて、高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリーにて、極小角X線散乱イメージングを行った。当初は、回折X線をX線強度モニタと利用して前方回折X線を撮影することを計画していたが、今年度は回折X線像で極小角散乱X線イメージングを行うことを試みた。本研究で使用するX線エネルギー領域では、前方回折X線の回折強度曲線は非対称であるが、回折X線のそれは対称だからである。透過型アナライザの回転ステップは0.04 arcsecとし、5 arcsecの範囲で125枚の回折X線像を取得した。撮影試料はアルコール固定された厚さ10 mmの乳房摘出試料とした。 また一方で、透過型アナライザによる極小角散乱X線イメージングの画像再構成を行う画像計算プログラムのプロトタイプを作成した。ここでは、得られた125枚の画像について同一位置の画素の画素値を読み取り、各位置の画素毎に画素値の変化を示すプロファイルを作成して、その半値幅を各画素の画素値に置き換えるというものとした。散乱の程度が大きいほどこの半値幅が広がるとみなして、これを極小角散乱X線イメージと定義した。 乳房摘出試料により得られた125枚の回折X線像をこの画像計算プログラムにより処理したところ、皮下脂肪と乳腺の境界やクーパー靭帯の領域で半値幅の増大すなわち散乱が大きいことを示す画像が得られた。 ここで得られた極小角散乱X線イメージと吸収コントラスト画像もしくは屈折コントラスト画像とフュージョン表示すれば、各コントラストを相補的に描画することができる。これにより、特に軟部組織において、これまで可視化されなかった構造を描出できる可能性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の平成24年度の計画通り、極小角散乱X線イメージングの撮影システムを立ち上げ、プロトタイプではあるが画像計算プログラムを作成し、初期画像データを得ることができた。ただし、当年度中期までは正常に動作していた透過型アナライザが後期には不安定となり、回折画像データを安定的に取得することが困難となった。今のところ原因不明であり、新たに透過型アナライザを作成しなおすことが必要と考えられる。透過型アナライザを作成しなおした場合は、平成25年度も引き続き極小角散乱X線イメージングの撮影システムの構築に時間を要することとなるので、現在までの達成度を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、平成25年度は今年度までに構築したシステムにより数種の乳房試料と関節試料の撮影を行い、吸収コントラスト画像、屈折コントラスト画像、さらには病理画像との対比をおこなうとしていた。しかし、前述のように当年度中期までは正常に動作していた透過型アナライザが後期には不安定となり、回折画像データを安定的に取得することが困難となった。従って、今年度も引き続き安定したシステムの構築に向けた作業を続行する。具体的には、透過型アナライザの改良となる見込みである。これまで、シリコン結晶の薄板を利用していたが、更なる安定性を目指しシリコン結晶の厚板の中央部を薄板状に研磨した枠付きアナライザの導入を検討する。平成25年度中にこれが完成すれば、最終年度の平成26年度中に当初予定していた各種の乳房試料と関節試料の撮影が遂行できる見込みである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はX線画像検出器もしくはX線強度モニタとして使用するX線CMOSセンサカメラの購入費を計上していたが、撮影実験を行う高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリーBL14Bに本研究課題の遂行にふさわしい仕様のX線CCDカメラが整備され、試しに使用することが許された。そのため、今年度はX線CMOSセンサカメラの購入を控え、このX線CCDカメラの性能をチェックするとともに画像取得に利用させてもらった。次年度以降もこのX線CCDカメラを借用できるかは不確実であるため、本研究課題遂行のために引き続き次年度にX線CMOSセンサカメラの購入費として予算計上させていただく予定である。 また、次年度請求の研究費については、今年度の繰り越し分と合算するのではなく、当初の予定通り、画像処理ソフト開発、透過型アナライザ作成費用、学会出張等とする予定である。
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Research Products
(5 results)