2012 Fiscal Year Research-status Report
強度変調陽子線治療のためのフル3次元線量分布測定システムの開発
Project/Area Number |
24601013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
歳藤 利行 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30377965)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 陽子線治療 / シンチレーションファイバー |
Research Abstract |
フル3次元線量分布測定システムの検出器として、シンチレーションファイバーブロックを作成した。シンチレーションファイバーは20年近く前にニュートリノ実験(CERN WA75 CHORUS実験)で使用したものを分解、再利用したものである。材料の調達と組み立ては名古屋大学大学院理学研究科の担当であり、直径500μmのファイバーを長さ11 cmに切断したものを積層して8 cm×6 cm×11 cmのブロック形状とした。 名古屋陽子線治療センターにおいては平成24年12月より最大エネルギー250 MeVの陽子線ビームが使用可能となり、本研究のための照射実験の体制が整っている。 平成25年5月までにマシンタイムを2回確保し、シンチレーションファイバーブロックに陽子線を照射し、ファイバーブロックが発光するようすを冷却CCDカメラを用いて撮影した。 シンチレーションファイバーブロックを粒子線治療の線量分布の測定に用いるという前例のない試みであったが、シンチレーションファイバーは治療に用いる線量の1/10程度の線量(0.2Gy)であっても十分な発光量があり、また撮影した画像も個々のファイバーの発光量を測定するために十分な解像度をもっており、粒子線に特徴的なブラッグピークや照射装置で形成した拡大ブラッグピークも鮮明にとらえることができた。 これらの成果は、作成したファイバーブロックがフル3次元線量分布測定システムの検出器として十分な性能を持つことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画は、シンチレーションファイバー検出器組み立て、冷却CCDカメラによる画像読み出し系の製作、ビーム試験、モンテカルロシミュレーションと簡易3次元線量分布再構成プログラムの作成である。 このうち本研究の要となるシンチレーションファイバー検出器の組み立てが予定通りすすみ、冷却CCDカメラの光学系の設計およびノートパソコンとの組み合わせによるリモートでの操作が可能な画像読み出し系の開発が完了している。 名古屋陽子線治療センターでは昨年末よりシンクロトロンから生成する最大エネルギー250 MeVの陽子線ビームが利用可能となり、ビーム試験も随時行うことができる。 またビームラインを模擬したモンテカルロシミュレーションプログラムの開発もほぼ完了している。汎用モンテカルロシミュレーションツールキットであるGeant4を使用し、108コアのLinuxクラスタで計算可能なシステムとなっており、現在、電離箱での測定データをもとにして細かなチューニングをすすめている。 ビーム試験データの解析および簡易3次元線量分布再構成プログラムの作成は少し遅れているが、シンチレーションファイバーの発光量および画像の解像度が十分であり、このままフル3次元線量分布測定システムに使用できる見通しがついたこと、また平成25年度に予定のファイバーブロック回転駆動系の設計、製作については治療用ベッドの回転駆動機構を活用することで期間短縮を見込んでいるため、全体としては順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ビーム試験データの解析をすすめ、シンチレーションファイバーの発行量、ファイバー中の光減衰、発光量のdE/dx(LET)依存性といった基礎特性を明らかする。さらにこの特性をモンテカルロシミュレーションソフトウェアに組み込み、検出器の特性も含めてシミュレーションができるようにし、システムの最適化に活用する。 ファイバーブロック回転駆動系の設計、製作を行う。ステッピングモータを使った駆動装置により検出器をビーム軸の周りに回転させる装置を設計、製作する。治療用ベッドのアイソセントリック回転機構も利用する。駆動のタイミングは陽子線ビーム照射装置のタイミングに合わせて外部のPCから制御できるものとする。 名古屋陽子線治療センターの陽子線ビームを用いて、回転駆動装置を使った測定データの収集を行う。本センターでは平成25年9月よりスポットスキャニング照射用の照射装置が使用可能となる。ビームのプロファイルは単純な1本のペンシルビームから強度変調陽子線治療のための照射パターンまで様々な条件のものとする。 3次元線量分布再構成プログラムの開発。空間分解能1 mmかつ1%の精度で線量分布が得られるように3次元線量分布再構成プログラムを完成させる。吸収線量の精度検証は水ファントム中で小型電離箱を3次元的に走査させたり、フィルムなどの2次元検出器を用いたりして測定した結果との比較で行う。 検出器とソフトウェアを組み合わせてシステムとして完成させる。成果を日本医学物理学会および論文で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ビットラン社製冷却CCDカメラ一式の構成を見直すことで、29万円程度の次年度使用額(B-A)が発生した。平成25年度に使用する回転駆動装置開発費として計上している50万円とあわせて開発用数値解析ソフトウェアの購入および成果発表のための旅費として使用する。
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