2012 Fiscal Year Research-status Report
放射線障害評価に有用なレポーター細胞の開発と幹細胞技術を用いた評価系の確立
Project/Area Number |
24601016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今井 貴雄 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10383712)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射線 / p53 / 幹細胞 / 神経幹細胞 / DNA傷害 / 蛍光蛋白質 |
Research Abstract |
本研究は、低レベル放射線暴露の人体への影響を早急・簡便に評価できる系として、放射線障害を指標可能なヒト由来培養細胞を遺伝子組み換え技術を用いて開発することを目的とした。本研究での対象は、胚性幹細胞・神経幹細胞といった胎児期に存在する「幹細胞」であり、試験管内で培養可能な細胞である。これらの細胞を用いた幹細胞技術と、蛍光蛋白質・生体発光蛋白質を用いた分子細胞イメージング技術を用いて、低レベル放射線の暴露があった場合の細胞障害度について、視覚的・定量的な評価を可能にすることが研究期間を通じての達成目標である。 特に、この評価系により、自己複製的増殖や多分化能を有するといった神経幹細胞の性質に与える影響について平成25年度、平成26年度で評価する。この研究計画のために、平成24年度で行った研究実績は、以下の2点である。①p53遺伝視座を含むBAC DNAのp53遺伝視座にレポーター遺伝子dVenusLuc2を相同組み換え法で挿入した組み換えBAC DNAの更なる改良を行った。改良点は、Renilla Luciferaseと薬剤耐性遺伝子Neomycinの融合遺伝子であるRLucNeoを恒常的発現プロモーターの一つであるpgkプロモーターの制御下で発現可能な様に、同BAC DNAに含まれるDNAH2遺伝子座中のイントロン領域に相同組み換え法で挿入した。②ヒトES細胞由来の神経幹細胞株にp53 BACレポーター遺伝子を電気穿孔法で導入し、安定保持株を複数株得ることに成功した。 現在、この安定保持株の中から、DNA傷害剤添加時にVenus蛍光とLuciferase発光が上昇してくる株を選別中である。平成25年度は目的に合致する細胞株を用いて当初の研究計画に沿い、研究を遂行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度においては、当初の研究計画より2点変更修正を行った。研究計画申請時に既に2種のp53 BAC DNAを調製していたが、同BAC DNA上にLuciferaseの発光を数値化する際に必要となる内部標準遺伝子としてRenilla Luciferase、安定保持細胞株を取得する際に必要なNeomycin遺伝子の相同組み換えによる挿入を追加して行った。この改良を施したために細胞への導入時期が少々遅れた。また、当初、ヒト皮膚繊維芽細胞にp53 BACレポーター遺伝子を導入して安定発現株を樹立する予定であったが、①ヒト皮膚繊維芽細胞は増殖に制限があり継代に伴う劣化があること、② iPS細胞を皮膚繊維芽細胞から誘導する計画であったが、近年のiPS研究の進展により、iPS細胞は選別された「良いiPS細胞」であってもしばしばゲノム不安定性を呈し、分化に伴う抵抗性の腫瘍発生を伴うことがあることから使用する細胞源として見直しが必要となった。このため、若干計画を修正し、p53 BACレポーター遺伝子をヒトES細胞由来分化神経幹細胞株に導入することに変更した。用いる神経系幹細胞は胎児期に存在するヒト幹細胞と同様の性質を有していると考えられ、本研究の目的に合致すると考え、変更を行った。以上の改良と変更点により、当初の予定より1ヶ月程度遅れているが、遅れは軽微であり平成25年度内に研究計画の予定に十分追いつけるものと考え、「概ね順調」との判断をした次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に行う研究内容は、研究計画の通りに行う。初期材料調製に関わる修正・変更が平成24年度に2点あったが、平成25年度の計画に影響を及ぼさない範囲の修正・変更である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額の発生は、効率的な物品調達を行った結果である。例えば、2012年12月に開催された日本分子生物学会の参加に関わる交通費・宿泊費であるが、コストを抑える努力をした結果、半額程度に必要経費を抑えることが出来た。この様に効率性を高めて発生した未使用額であるが、翌年度(平成25年度)の消耗品費に充てて研究内容の更なる充実を図る予定である。平成24年度の未使用額を加え、平成25年度の研究計画に沿い、研究費の使用を行う予定である。
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Research Products
(7 results)