2012 Fiscal Year Research-status Report
共生社会構築のための比較立法政策論的・学際的研究―社会保障制度研究を中心に
Project/Area Number |
24602001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
辻村 みよ子 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30158381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沢 真理 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (50143524)
嵩 さやか 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00302646)
戸澤 英典 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20335326)
佐々木 弘通 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70257161)
中林 暁生 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (70312535)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 共生社会 / 社会保障 / 男女共同参画 / 多文化共生 / グローバル化 / 市民概念 / 社会政策 / 立法政策 |
Research Abstract |
平成24年度は、共同研究方針と研究遂行方法について共通認識を確立したうえで、各自の計画に沿って研究を進め、それぞれ下記のような成果を得た。 (1)研究代表者辻村は、フランスを中心にEU諸国の男女共同参画政策と共生政策について資料を収集し、生殖補助医療政策とフランス生命倫理法改正等について成果を公表した。 (2)研究分担者のうち大沢は、東アジア諸国、特に韓国との社会保障制度比較とともに、民主的ガバナンス論との接合に努め、2012年6月に成均館大学のSSKプログラムの国際シンポの基調講演に招かれて集中的な討論を行った。また10月と3月にカナダのオタワ大学ガバナンス研究センター等を訪問し、民主的ガバナンスに関して意見交換した。(3)嵩は、多様な個人を集結させる社会保険について、その基本理念とされる「連帯」の法的基盤や規範的内容を、従来社会保険との関係では着目されてこなかった民法での議論を手がかりに探究した。そこでは、民法が想定する個人は公共性を主体的・能動的に構築し参加する「市民」であるとの理解から、社会保険での当事者参加の重要性などを論証した。(4)戸澤は、海外研修等を行ってEUレベルでの社会政策の展開についての研究を継続し、特に最近のEU各国における移民政策に関する論調の変化との関係を精査した。(5)佐々木は憲法学における「市民」概念について社会保障制度との関係から再整理を試みた。憲法上、生存権の享有主体は普遍的に構成されている。だがそれを法律上、各種の社会保障制度として具体化する段階で各種制度の受給資格要件を普遍的に構成するのは、各制度固有の論理を踏まえると困難である。ここに問題の所在があることが究明された。(6)中林は、2012年度には、日本における社会権の研究を遂行し、生存権に関する判例の研究を中心に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は初年度であるため、まずは各自の研究計画に沿って資料を収集し、研究テーマに即して海外研究や国際シンポジウムの機会を有効に活用して研究基盤を確立した。 とくにEU諸国や東アジア諸国、カナダなどでの研修・出張の機会を十分に活用し、研究上のネットワークを形成した。全体としてほぼ計画通りに研究を続け、成果をあげることができたため、「概ね順調に進展している」と評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
各専門分野の観点から、共生社会における社会保障等の諸制度について欧米諸国の状況を調査し検討する。グローバルCOEプログラムなどで共同研究の実績のある研究者等の協力も得て、研究会等も開催する。各自の研究計画は、以下のとおりである。 (1)研究代表者辻村は、引き続きフランスを中心としたEU諸国の男女共同参画政策と共生政策について資料を収集し、とくに雇用平等を実現するためのポジティヴ・アクション等について成果を公表する。 (2)大沢は、6月にイタリアのミラノで開催されるSASE(Society for the Advancement of Socio-Economics)にて分科会を開催し、報告を行う。引き続き、社会保障制度と民主的ガバナンスにつき研究を進める。(3)嵩は、民法の理念と社会保障(とりわけ社会保険)との関係を、比較法(特にフランス法)による考察も含めて探究するとともに、民法とともに社会の構成原理を提供する憲法における市民概念による「連帯」の理念の基礎付けについて検討する。(4)戸澤は、ドイツにおける「ザラツィン論争」の巻き起こした移民に関する一大論議が、ユーロ危機による同国のEUにおける影響力の増大と相まって欧州レベルで如何なる影響を及ぼすのかについて、2013年秋の連邦議会選挙や2014年の欧州議会選挙のウォッチを通して詳細に分析する。(5)佐々木は、理論研究からアメリカ判例研究へと軸足を移し、昨年6月に国民皆保険を5対4で合憲と判断した連邦最高裁判決が最高裁内部におけるどんな理念的対抗の下に合憲の結論に到達したかの究明を試みる。そのことを通じて共生社会における社会保障制度設計に関する示唆を得る。(6)中林は、アメリカ憲法学において社会保障の問題は「給付」をめぐる問題として議論されることが多いことから、2013年度は「給付」をめぐる憲法問題についての研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費については、研究関係和書・洋書を60冊程度(約70万円)購入するほか、海外調査経費・旅費などを合計3回程度(約90万円)予定している。 研究計画の変更を伴わずに平成24年度の研究を効率的に遂行した結果、未使用額が生じているが、これは平成25年度請求額と併せて、平成25年度の研究遂行のために使用する予定である。
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