2013 Fiscal Year Research-status Report
共同観賞記録にもとづくより深いコンテンツのデザイン手法
Project/Area Number |
24603019
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
川嶋 稔夫 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (20152952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 健一 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (60280327)
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Keywords | 共同観賞 / 博物館 / 美術館 / 観賞記録 |
Research Abstract |
共同観賞のためのツールのプロトタイプを開発し、実展示での評価を行った.今年度は次の3点について研究開発を行った.1. 写真アーカイブと専門家の知識にもとづくナビゲーションカードツールの開発, 2. 画像回転型インタフェースによる鑑賞ポイント発見ツールの開発,3. 高精細写真に基づく鑑賞支援ツールの開発. 1は,街歩き鑑賞支援を行うためのカードツールのデザインに関するもので,古写真にもとづいておこなった専門家と市民の対話を記録し,それを街歩き鑑賞に適した様式に変換するための手法を研究したものである.実際に函館市西部地区をテストケースとして,函館市が有する古写真データベースをもとに,地域史の研究者(学芸員,考古・歴史分野)の語りの映像と音声を記録し,カードツールに編集している. 2は,自然史系博物館において生物標本を対象に多様な視点からの観賞を促すようにデザインした回転円柱を模した画像ツールである.このツールはターンテーブル上で一定角度ずつ回転させながら撮影した標本画像群を,コンピュータ上で疑似的に回転させながら鑑賞するもので,移動操作と注目を繰り返しながら,着目点を発見するツールであり,複数人で共通の標本についての移動操作と観賞を繰り返すことで,観賞を促進することが期待される. 3は,近年解像度の飛躍的向上が進む高精細写真を利用して,美術品や標本を鑑賞,観察するための手法に関するもので,(A)大型高精細印刷物への動画埋め込みに関するもの,(B)大型高精細画像ビューワをインタフェースとする資料のリアル‐デジタルインタラクションツールの共同観賞への利用を進めている.とくに(B)は,共同観賞の視点を複数人で共有するツールとして活用できると考えている. 以上のように25年度では,24年度の成果である共同観賞の記録を具体的な鑑賞ツールに応用することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度,共同観賞記録については,巡回型およびセミナー型の2件の共同観賞について様式化した観賞記録方式を様式化して実験を行ったが,今年度はそれらの観賞記録方式を,より様々な現場で利用できるようにいくつかの代表的な観賞形態に適したツールを開発した.とくに研究計画書に書いたタブレット端末による鑑賞の記録に関して,概要の(2)および,(3)の(A)(B)のような具体化が進んだため,予定通り,タイムスタンプや注目点などの記録ができるようになったと考えている. 観賞実験についての考察は概要の(2)において進めている.この実験においては,函館博物館の協力を得て,おおよそ130年前の魚類標本の画像を用いた観賞実験を進めている.なお高精大型高精細画像ビューワを用いた実験と分析は26年度に同じく函館博物館の協力を得て行う予定である.このほかにも,小型携帯照明を用いた,観賞ワークショップを実施し,そのときの観賞記録とその分析も行い,学会において報告を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,前年度の成果に基づき共同観賞記録のためのツールの応用開発が順調に進み,それを利用した観賞記録実験も函館博物館において3件行うことができた.また,1件の応用実験も行うことができた.ツールの開発については24年度の遅れを取り戻すことができたと考えている.26年度については,研究計画通り25年度に引き続き,共同観賞ツールの試作レベルでの完成させる予定であり,それを用いた観賞実験とその分析,さらには観賞記録を用いた追体験についても予定通り実施できる見込みである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
報告書で述べたように,平成25年度において,3種類の観賞記録ツールが具体的に試作できている.しかし,当初予定では,それらの成果をもとに年度末にかけて鑑賞ツールを複数台作成し,平成26年度の実験に供する予定であったが,さきごろの消費税増税等にともない,一部機器等の納期に遅延が生じる予想であったため発注の遅れが生じた. 平成26年度になり,すでに発注準備は完了しているために,年度を超えてしまったもののわずかの遅れで執行することができ,研究計画の実施にはほとんど問題はない.
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