2012 Fiscal Year Research-status Report
イラン・イスラーム共和国の報酬を伴う生体腎移植プログラムと分配的正義に関する研究
Project/Area Number |
24610007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
細谷 幸子 東邦大学, 看護学部, 非常勤研究生 (60516152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 佳子 東邦大学, 看護学部, 准教授 (70341245)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 医療倫理 / 臓器移植 / イラン / イスラーム |
Research Abstract |
本研究では、非親族のドナーから報奨金と引き換えに腎提供を受ける生体腎移植プログラムが施行されているイランをフィールドとし、臓器移植をめぐる「分配的正義」の問題を、現地の価値観から理解することを目的とする。24年度に実施した内容は以下の通りである。 細谷:6月にイランにて4週間の現地調査を実施した。調査内容(1)コム・アルムスタファー国際大学にて医療・福祉の倫理に関するイスラーム法学の基礎情報と関連書籍を収集した。(2)イスファハーン医科大学において、医療倫理の専門家にインタビューを実施し、医療資源の分配の倫理に関する情報を得た。(3)テヘラン医科大学・エマーム・ホメイニー病院において、来年度以降の現地調査のための準備をおこなった。(4)テヘラン・シャヒードベヘシュティ医科大学において、生命倫理・医療倫理の専門家と会合をもち、現在イランで議論になっているトッピックスについて情報を得た。 7月にはケンブリッジ大学主催のワークショップに参加し、イスラーム諸国における人道支援活動の倫理に関する議論をおこない、英語論文としてまとめた。 8月から2013年3月には(1)各国の生体腎移植に関する文献を検討し、英・日・イランの生体腎移植プログラムの国際比較として英語論文にまとめた。(2)本研究の理解を深める目的で、インターネットを通し、イラン国内外で議論になっている他の生命倫理に関する情報収集を実施した。これには、生殖補助医療、出生前診断と人工妊娠中絶、性別適合手術、障害者・慢性疾患患者の人権に関する法律等が含まれる。このうち、人工妊娠中絶をめぐる議論を英語論文としてまとめた。 松永:2012年4月から2013年3月まで、日本国内で各国の生殖補助医療に関する文献と資料を収集・読解した。3月に細谷と検討会議をもち、議論を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究はほぼ予定通りに達成することができた。英語論文としてまとめた論考は現在学会誌等に投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、分配的正義の議論に関連する概念の検討を目的とした情報収集と資料・文献の読解とともに、イラン国内の患者団体や病院でも調査を実施し、多角的に分析する。26年度は現地調査をおこなわず、日本国内で資料読解・整理、文献調査、論文執筆をおこなう。25年度の具体的な研究計画は以下の通りである。 細谷:4月は昨年度から引き続き、他国の生命倫理に関する新たな文献を調査する。5月には各種関連機関の資料収集と8月現地調査の準備をおこなう。関連する現地諸機関のウェブサイトの調査と共に、一般論者の意見等についてもインターネット上の情報で確認する。6月~7月には関連するイランの法律、イスラーム経済学の文献や資料にあたり、諸概念の検討をおこなう。8月には、イラン現地調査(28日間)をおこなう。患者団体や病院を訪問し、関係者インタビューと聞き取り調査をおこなう。現地滞在期間中には、臓器移植、生殖補助医療に関係するイスラーム法学者の教令、イスラーム法に依拠するイランの刑法、イスラーム経済学の文献や資料にあたり、専門家の指導を受けながら、関連する諸概念の検討をおこなう。9月~3月には、資料を整理、読解すると同時に、他国の臓器提供制度の議論、 分配的正義に関する文献を収集し、現地調査で得た情報と比較検討する。12月には国際学会(ジョグジャカルタ)に参加することで、これまでの調査で得た知見を発表し、考察を深める。 松永:日本国内で(1)各国の臓器移植と生殖補助医療のサービス経済評価について、(2)生殖補助医療と分 配的正義の議論の接点に関して、関連する文献と資料を読み解き、イランの事例の理解の促進に努める。また、 12月~3月には細谷と数回の会議をもち、来年度の成果発表に向けた議論をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度はイラン現地調査のための渡航費用が予定額よりも少なく、平成25年度に研究費を持越すことができたため、関連文献の購入費と英語論文執筆時の英文校正料金等に充当する予定である。
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Research Products
(3 results)