2015 Fiscal Year Annual Research Report
介護職における倫理教育の現状と倫理的問題の認識および対処との関連要因
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24610008
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
角田 ますみ 杏林大学, 保健学部, 准教授 (40381412)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生命倫理 / 倫理教育 / 介護倫理 / 高齢者ケア / 介護 / 社会福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、全国の介護福祉士養成課程を含む大学における倫理関連の科目の設置状況を把握するためシラバスを収集し、各大学による倫理科目内の位置づけを調査した。その結果、対象校のほぼすべてに「生命倫理」、「介護倫理」、「倫理」など科目名に倫理を含む倫理関連科目が配置されていたが、選択科目が大半であり必ずしも学生が履修するとは限らないこと、低学年配置であることや講義内容が基礎的知識の教授にとどまっていることなどから、現場における具体的な倫理問題への対処までは習得することが難しい現状が明らかになった。しかし、多くの大学で、介護系専門科目(介護概論や介護方法論、実習など)のなかで倫理的内容を扱う傾向にあり、倫理関連科目との二本立てにより基礎と応用そして実践としての教育的相乗効果が期待された。 次に、介護福祉士の倫理教育背景と現場での倫理的問題に対する認識や対処について全国の介護老人保健施設に勤務する介護福祉士500名に質問紙調査を行った。その結果、対象者の半数は養成課程で倫理科目を受講した経験があった。現場で遭遇する倫理的問題の認識については、主に日常生活動作に関連する場面が多く、高齢者の尊厳が守られていないと感じるのは「排泄」「清潔ケア」「食事」などの生理的欲求を満たす重要な援助場面であった。その他に「職員の態度」が挙げられ、言葉遣いや対応、接遇の場面で倫理的に問題だと認識している者が多かった。しかし業務が多忙であり、問題を相談する職員の存在やカンファレンスなどの機会がなく、問題を共有する場面が少ないことがわかった。さらに介護施設では倫理教育研修が体系的に行われておらず、倫理的問題を認識したとしても、それを具体的な方法で対処するべきかわからない現状にあることが明確になり、養成課程の倫理教育にだけ頼ることなく、現場に即した倫理教育研修プログラムの開発が重要であることが示唆された。
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