2012 Fiscal Year Research-status Report
文化遺産保護に資するコンテンツツーリズムのあり方に関する研究
Project/Area Number |
24611001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山村 高淑 北海道大学, 観光学高等研究センター, 准教授 (60351376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | コンテンツツーリズム / コンテンツ・ツーリズム / ポピュラーカルチャー / 文化遺産 / 地域資源 / アニメ |
Research Abstract |
本年度は、文献調査ならびに国内事例調査を行った。 文献調査については、ポピュラーカルチャーを活用した文化外交に関する議論や、ICOMOS における議論を中心に、「文化遺産価値へのアクセス手法」に関する内外の議論を網羅的に整理し、理論的枠組みの構築を行った。特に、本研究におけるひとつの重要な概念となるemotive access(感性的アクセス)の意味するところについて具体的定義を行った。 一方、コンテンツツーリズム開発事例については、今年度は特にアニメーション作品を中心としたポップカルチャーコンテンツを通して、地域の文化遺産価値への感性的アクセスを高めている国内の複数事例を取り上げ、実地調査を行った。具体的には、北海道洞爺湖町、埼玉県久喜市鷲宮地区、千葉県鴨川市、長野県小諸市、長野県大町市、長野県上田市、石川県金沢市湯涌温泉、宮城県白石市の事例を取り上げ、こうしたポップカルチャーコンテンツが、地域の文化遺産価値への感性的アクセスを高めるメカニズムについて分析を行った。 その結果、アニメ作品をきっかけとしつつも、来訪者の地域資源に対する感性的なアクセス度を高めていくためには、地域住民との現地での交流が極めて重要な役割を果たしており、とりわけ地域主催の祭りやイベントがそうした交流の場として大きな意味をもつことが明らかとなった。また、こうした交流を継続的に促進していくためには、地域社会とコンテンツ製作者との協力体制の構築、来訪者が地域の活動へ参加し創造性を発揮できる仕組みの構築、の二点が重要であることも指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画していた海外事例調査ならびに一部国内事例調査が、平成24年度は業務多忙により実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
国内事例に加え、海外におけるコンテンツツーリズム開発事例を積極的に取り上げ、文化遺産価値への感情的アクセスをどのように高めているのか、いないのかについて検証を行う。その際、コンテンツを、映画、テレビドラマ、小説、マンガ、ゲーム、その他の6 種類に分けて考えることで、コンテンツの種別と観光開発のあり方についても検討を行う。特に、アニメ・マンガ・ゲームといった新たなタイプのメディアコンテンツについては、ICT(情報通信技術)の活用による遺産価値へのアクセス向上の可能性を抽出する。 また国内におけるコンテンツツーリズム開発事例については、特に先駆的であると思われる事例を5件程度取り上げ、各事例について、コンテンツツーリズム成立のプロセスを明らかにする。その際、これまで明らかにしてきた「文化遺産価値への感性的アク セス」に関する理論的枠組みに基づき、観光開発の目標・戦略・政策・計画・実施プロセスにおける、地域社会、コンテンツ製作者、旅行者の三者の関わり方を中心に分析を進める。また国・行政による支援のあり方、文化外交政策・文化遺産保護政策の関わり方についても検討を行う。 さらに、各事例において、こうした観光開発が地域に及ぼす空間的・社会的・文化的インパクトを、現地関係者への詳細な聞き取り調査を通して、正・負両面から具体的に明らかにする。その際、オリジナルコンテンツが、地域の文化遺産・伝統文化・習慣・現在の文化的表現とどのような形でリンクし、資源化しているのか、特にコンテンツと地域間での「物語性」の共有のあり方に着目して比較分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度8月ならびに3月実施予定の海外事例調査のための出張費、ならびに5月、7月、9月、12月実施予定の国内事例調査のための出張費として繰り越している。
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