2013 Fiscal Year Research-status Report
文化遺産保護に資するコンテンツツーリズムのあり方に関する研究
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24611001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山村 高淑 北海道大学, 観光学高等研究センター, 教授 (60351376)
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Keywords | コンテンツツーリズム / 文化遺産 / アニメコンテンツ / アクセス / ポップカルチャー |
Research Abstract |
前年度に引き続き、平成25年度は、アニメコンテンツを活用した国内のツーリズム開発事例、とりわけ定期的なイベント開催事例を取り上げ、文化遺産価値への感情的アクセスをどのように高めているのか、あるいはいないのかについて検証を行った。具体的には、埼玉県や鳥取県における全県的事例、埼玉県鷲宮町、同秩父市、石川県金沢市、富山県南砺市、北海道札幌市、同洞爺湖町について実地調査を行った。その際、作品における地域の伝統文化の描かれ方、ならびに作品と地域・伝統文化とのコラボレーションの基本的考え方・理念、コラボレーションの具体的手法・効果等について、関係者へのヒアリングを通して把握を行った。その結果、複数の事例において、アニメコンテンツがきっかけとなり、地域文化の再発見、誇り・アイデンティティの確立・強化が行われていることが明らかとなった。さらに、こうした事例においては、来訪者、アニメコンテンツ制作者、地域住民といったコンテンツツーリズムに関連するアクター間で共有可能なコンテンツとして、伝統文化が機能していること、地域の伝統性・歴史性・正統性にリンクすることでツーリズムならびにアニメコンテンツ関連商品において消費されるイメージの本物性(オーセンティシティ)も担保されていること、等を指摘した。 一方、海外事例としてJapan Expo(フランス)ならびに台北市における日本のポップカルチャーを取り入れたイベントならびに商業店舗を取り上げ、日本のポップカルチャーコンテンツの受容実態を調査した。さらに、関係者、来場者・来店者へのヒアリングを通して、そうしたポップカルチャーの受容が、日本の伝統文化へアクセス、理解につながっているかどうか、課題抽出を行った。この点については、平成25年度調査では明らかに出来なかった部分が多く、継続調査を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初企画していた海外事例調査の一部が、時間確保の問題で、未実行のため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初企画していた欧州の関連事例調査を平成26年度の早い内に実施する。 そのうえで、これまでの研究結果を踏まえ、地域社会・コンテンツ製作者・来訪者が協働することで、文化遺産価値へのアクセスがどのように確保され、向上しているのかを、追加現地調査を通して検証する。そして、これら三者が協働する上での制約要因となっている社会的メカニズムの課題を抽出し、文化遺産保護に資するコンテンツツーリズムを成立させる上で、それぞれの主体に求められる要件について整理を行う。 以上の調査結果を踏まえたうえで、文化遺産保護に資するコンテンツツーリズム成立のための諸要件について、国家、地域行政・地域社会、コンテンツ製作者、旅行者それぞれに求められる機能・役割の面から総合考察を行い、我が国で具体的にこうしたコンテンツツーリズムを創成していくうえでの問題点・課題について整理を行うことで、最終報告書を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた海外調査が業務多忙により実施できなかったため。 平成25年度に予定していた海外調査を、1年遅れで平成26年度に実施する。
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