2013 Fiscal Year Research-status Report
震災復興のための国立公園における環境ガバナンス変容に関する研究
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24611002
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山本 信次 岩手大学, 農学部, 准教授 (80292176)
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Keywords | 資源管理 / 環境ガバナンス / 震災復興 / 地域性自然公園 / 持続可能な資源利用 / 里山的生態系 |
Research Abstract |
国の名勝であり青森県立自然公園に指定されていた種差海岸は2014年、三陸復興国立公園として正式に編入された。編入による影響が経済的・環境的に地域にどのように影響を与えるかを検討する上で、本年は震災以降の種差海岸を取り巻くステークホルダーの動向を追跡し、さらに将来の集客利用を踏まえてどのように現地において対応がなされているかを中心に調査を行った。 第一に現地においては青森県から福島県に至るロングトレイルとしての「みちのく潮風トレイル」あるいはその他の公園施設の設置に先立ち合意形成のために会議や踏査がなされるなど多様なステークホルダーの参加による意思決定が試みられている。もちろん、完全なる全員一致は望むべくは無いものの、議論を経て意思決定がなされており、その過程そのものを対象に調査を行った。決定までの時間の短さ、利用促進に傾きがちではないかなどの疑問点も呈されており、迅速な震災対応の必要性とはいえ、注意すべき点も明らかとなった。 第二に二次的自然景観としての種差海岸維持にかかわる取り組みに関わり、馬の放牧再開を志す地域の取り組みやクロマツ林等の伐採・利用に関わる資源利用と震災の関係に関する調査を実施した。これらについて国立公園としては種差海岸より南部になるが岩手県内の沿岸森林管理にかかわる調査結果を論文・共著書として発表した。 第三に海外における自然公園利用にかかわる先進事例調査としてヨーロッパの地域性自然公園において公園指定や資源利用が地域生活に及ぼす影響について調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種差海岸の国立公園編入についての地元自治体・観光関係者・環境保全系NPOなどこれまで種差海岸の二次的自然環境保全にかかわってきたステークホルダーの意向や動向などについて把握することができた。基本的に公園編入に対しては好意的であり、自然環境保全と公園指定を期に拡大が予想される観光利用との共存をいかに実現するという問題意識が共有されている点なども確認された。 また観光関係者は歴史的な海岸利用である馬の放牧再開を観光資源として位置づけるべく新たな取り組みを開始している。さらに地域において公園施設としてのビジターセンターの在り方を検討する中で、公園管理と自然資源管理を一体化できるよう地域のステークホルダー間での話し合いがもたれるなど研究開始当初の問題意識を地域の関係者がアダプティブに解決していこうとしている状況などを把握できたことも一定の成果である。 また公園に存する資源としてのクロマツなど木材利用等について現地のみならず三陸地域全体として抑えることができたことも成果の一部といえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は公園管理にかかわるステークホルダーの震災以後の動向を抑えることが基本となった。この点はおおむね達成できたものの、ロングトレイル敷設やビジターセンター、駐車場設置等にかかわってやや利用条件の改善が優先されているのではないかとの懸念を示すステークホルダーも存在した。それは震災復興を急ぐべく、公園指定もまた急がれたことにともなって生じた問題の一つであろうと位置付けられる。今年度の調査では、こうした公園施設設置が現実化していく中で上記懸念の当否や問題が生じているのであればその解決方向について検討したい。 またかつての土地利用の復元や地元関係者・増加が期待される観光利用者を公園管理に巻き込む仕掛け作りなども現地において構想されており、こうした新しい展開に関しても追跡を続け、国立公園指定後の種差海岸における環境ガバナンスの刷新を含めた全体像を把握し、評価を行うこととしたい。 あわせて自然資源利用や観光利用にかかわる海外における最新動向調査を実施し、評価の基軸とするものである。
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