2012 Fiscal Year Research-status Report
広域観光地ネットワークが「持続可能な地域形成」に及ぼすインパクトの多面的考察
Project/Area Number |
24611003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
高澤 由美 山形大学, 理工学研究科, 研究員 (20509054)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アルプス地域 / 国境を越えるネットワーク / 広域連携 / 観光地 |
Research Abstract |
欧州における広域政策のダイナミズムを経年的に整理するとともに、広域観光地ネットワークが創出されてきた背景の分析を進めた。また事例対象としているネットワークAlpine Pearls(以下AP)の年次総会、及びツーリズムモビリティシンポジウムへの参加、ネットワーク会員自治体であるHinterstoder, Bad reichehallでの現地調査を実施した。さらに当該地域にてディスティネーションマーケティングについて研究している研究者との意見交換を行っている。これらの調査研究から得られた知見は以下の通りである。 ①欧州には多様な広域観光地ネットワークが存在している。アルプス地域にも多様なテーマや目的をもつネットワークがあり相互に情報共有することでより重層的な取り組みにつなげていることがわかった。そのなかでAPの活動は営利事業というよりもポリティカルな色彩が強い。 ②しかしながら近年APでは特にマーケティングに力を入れ、どれだけマスコミ等に取り上げられたかということをネットワーク活動の主たる成果としている。しかし具体的な指標はない。 ③APでは会員を増やすことに腐心しているが、加盟することによるメリットが弱いため、今後の課題としてとらえられている。 ④しかしインタビュー調査によると加盟自治体は小規模であればあるほどAPに加盟することによるメリットを感じており、今後のネットワーク活動の方向性を示唆している。 ⑤APの2013年年次総会の開催地Hinterstoderは小規模な自治体でありながら、国際会議を開催することのできる設備を整え、会議やスポーツ大会等の誘致を可能にし、地域経済の活性化や地域住民の意識啓発にも注力していることがわかった。積極的に会議等の誘致活動などを行っている背景には広域観光地ネットワークの活動を通じて得たノウハウを活かしていることが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って概ね順調に進展している。 ただし、当初は平成24年度中にAP加盟自治体を対象とするアンケート調査の準備を想定していたが、まだ検討段階にある。現地調査では、APの成果の指標が明確ではなく「持続可能な都市形成」にどれだけ影響があるのか、仮説の再検証の必要性を感じているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
前半は当初の計画に沿って、引き続き欧州における広域観光地ネットワークの動向をトレースしながら、現地における調査実施にむけた準備を行う。具体的には、前年度の研究課題として残ったネットワーク活動の成果指標等の検討、ネットワーク加盟によるインパクトを把握するためにより適した調査方法の検討、調査内容の検討である。 後半は、研究テーマの近い研究者や実務者との意見交換を行うとともに、現地の協力を得て調査を実施する。 またアルプス地域の多様なネットワークの動向について再整理を行い、わが国における観光地の広域連携の可能性についても言及したい。その際、アルプス地域で広域ネットワークのマネジメントを担当している実務者を招聘し、わが国における広域連携地域の視察を行い、地域の意識啓発を兼ねて、意見交換等を実施することも想定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に消耗品の購入、アンケート調査に係る印刷・通信費、及び現地調査への旅費が大部分を占める。
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