2013 Fiscal Year Research-status Report
オーストリアにおける「モーツァルト・ツーリズム」とその応用性に関する文化史的研究
Project/Area Number |
24611006
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小宮 正安 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (80396548)
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Keywords | 観光学 / モーツァルト / オーストリア / 中欧 / ウィーン / フェスティヴァル / 文化史 / 音楽史 |
Research Abstract |
19世紀半ば以降、中央ヨーロッパの大国であったオーストリア帝国において「音楽国家オーストリア」キャンペーンが盛んになり、特にその中心的存在と目されたのが、ザルツブルクに生まれウィーンで没したモーツァルトであった。 ただしモーツァルトが1756年に生を受けた頃、ザルツブルクはオーストリアの一都市ではなく、ザルツブルク大司教領に属しており、それが19世紀初頭における政治的変動の中で、オーストリアに編入されたという過去を持っていた。さらにザルツブルクにおいてはモーツァルトに対し、政治的動乱や、時の主君であったザルツブルク大司教と衝突したという経緯から、必ずしも好意的な評価が寄せられていたわけではなかった。 ところがウィーンの音楽愛好家を中心に、モーツァルトの誕生の地ザルツブルクを一種の聖地と見なす動きが19世紀半ばに始まり、そうした過程の中でザルツブルク自体もモーツァルトを「再発見」し、フェスティヴァル等を通じてこの町を観光都市として再興してゆく過程において、「モーツァルトの町ザルツブルク」というイメージを内外に広く知らしめていった。ウィーンにおいても、上述した音楽国家・音楽都市キャンペーンの中で、学術・芸術的ベースはもちろんのこと、時にはそれらをも凌ぐような勢いで観光ベースによるモーツァルト・ブーム、モーツァルト・ツーリズムが起き、それは現在に至るまで続いている。 本研究では平成24年度の研究成果を受け、オーストリアにおける「モーツァルト・ツーリズム」の代表的な都市であるウィーンとザルツブルクを具体的な事例の中心に据えながら、観光政策を通じて浮かび上がるモーツァルト・イメージの変遷、またそのようなイメージに基づいて作られる各都市それぞれのイメージが「音楽国家オーストリア」にかなる形で反映されていったのかという問題について、とりわけ文化史的なアプローチを通じて詳細な分析をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究成果を受け、オーストリアにおける「モーツァルト・ツーリズム」の代表的な都市であるウィーンとザルツブルクを具体的な事例の中心に据えながら、観光政策を通じて浮かび上がるモーツァルト・イメージの変遷、まらそのようなイメージに基づいて作られる各都市それぞれのイメージが「音楽国家オーストリア」にかなる形で反映されていったのか、という問題についての詳細な分析をおこなった。とりわけ、1)民間レベル(観光産業・観光業等)における「モーツァルト・ツーリズム」の受容と発展の歴史、2)オーストリアの音楽界にとっての「モーツァルト・ツーリズム」の位置づけとモーツァルトの作品のレパートリー受容に関する相関関係、という2つのトピックを設定し、それらを明らかにしていった。その結果、1)に関しては1842年ザルツブルクにおいておこなわれたモーツァルト像除幕式から始まるモーツァルト・フェスティヴァルが端緒となり、それが1920年以降のザルツブルクフェスティヴァルにおける観光産業・観光業の活性化へとつながっていったこと、2)に関してはレパートリー受容そのものについては19世紀以降ほとんど変化していないが、特定の作品がモーツァルト・イメージを表象する存在としてモーツァルト・ツーリズムと結びついていった過程が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度のトピックを受け、芸術・文化振興の観点からとらえた日墺のツーリズムの比較分析を通じ、モーツァルト・イメージ、オーストリア・イメージの形成から演繹される欧陽性に基づいたこれからの我が国のツーリズムに対する方法論の検討と提言が研究の主たる柱となる。 またこれらの調査・研究を藤堂氏、包括することを目指す。研究にあたっては引き続き、ウィーン楽友協会アーカイヴをはじめとする機関で資料収集をおこないながら、それらの資料に対して詳細な検討や分析をこなってゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、複合型レーザープリンタ EPSON M56AZH(1台×@200)を購入予定であったが、性能がより向上した割高な新たなモデルが出たため、平成26年に繰り越すことによってその購入を目指す。また現地での調査が当初の予想以上に長引いているため、一部を旅費に繰り越すこととした。 平成25年度は、複合型レーザープリンタ EPSON M56AZH(1台×@200)を購入予定であったが、性能がより向上した割高な新たなモデルが出たため、平成26年に繰り越すことによってその購入をおこない、収集した資料の迅速なデジタル化をおこなう予定である。 また現地での調査続行のため、旅費にも充てることとする。
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