2012 Fiscal Year Research-status Report
後発開発途上国ラオスにおけるプロプアツーリズムのための人的資源管理
Project/Area Number |
24611009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
桑原 浩 琉球大学, 観光産業科学部, 准教授 (90468067)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プロプアツーリズム / ラオス / 人的資源管理 / 東南アジア |
Research Abstract |
本研究は、後発開発途上国であるラオスで、多様な少数民族の雇用に成功している民間企業家主導の観光プロジェクトに注目し、それを稀有なグッドプラクティスと仮定したうえで、後発開発途上国の観光雇用に有効な人的資源管理策を探索し提示することを目的としている。 この目的を達成するために、初年度にあたる2012年度においては、プロジェクトの経営責任者と従業員の双方から、面接によって一次データを収集することまでが、主たる研究活動であった。具体的には、経営責任者との面接により、経営者が意図した人的資源管理策(主に【教育・訓練】、【家業(農耕)との共存】、【チームワークとリーダーシップ】、【評価と報酬】の4分野)に関する仮表を作成した。この仮表には、先進国のホスピタリティ企業の人的資源管理策から想像困難な具体策が含まれている。たとえば、【教育・訓練】の分野で、「新人には最初に、手、顔、体の洗い方を指導する。」といった策、また【評価と報酬】においては、「衣食住すべてを提供したうえで金銭の給与を提供する。」といった策である。 従業員への調査では、【教育・訓練】、【家業(農耕)との共存】、【チームワークとリーダーシップ】、【評価と報酬】の4分野に加えて、彼らの労働に対する価値観を推測するために、業務の好意点と困難点についても質問した。データ分析は、2013年度の研究作業であるため、今後順次その結果を明らかにしていく予定である。なお、面接実施前では、ラオスの少数民族に属する従業員が、個人としての意見や態度を外部者に明らかにする習慣が乏しいため、防衛的にステレオタイプな回答に終始することが危惧されたが、実際には、質的にある程度多様な反応が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にあたる2012年度の研究計画において、主に以下の3項目を実施することを予定していた。そこで以下ではこの3項目それぞれについて達成度を述べる。 1.人的資源管理策の仮表の作成と経営者面接調査による仮表の推敲:最初に2008年までの過去の経営者面接から聴取したデータに基づき、主に【教育・訓練】、【家業(農耕)との共存】、【チームワークとリーダーシップ】、【評価と報酬】の4分野に関する仮説的な人的資源管理策を抽出し、最初の仮説表を2012年9月までに完成した。さらに同年11月には、経営責任者との面談により、この仮説表内容を確認し若干の修正を行った。 2.従業員へのグループ面接調査: 2008年における当該プロジェクトの従業員数は約80名であり、研究計画書においては、この約半数に当たる40名を面接調査対象者とし、その半数20名への面接を年度内に行うとしていた。しかし、当該プロジェクトにおける建築関係業務が減少し、全従業員数が現在では約60名まで減少したため、面接対象者数をその約半数の30名に変更した。そして、2013年2月において、この30名への面接を終了した。 研究計画作成当初、ラオスの少数民族に属する彼らには、個人としての意見や態度を外部者の前で明らかにする習慣が乏しく、またそのような場面を恐れる傾向があることを考慮して、3~5名の従業員を一つのグループとする面接を予定していた。しかし、研究代表者(面接者)が、2006年以来、当該地を再三訪ねた結果として、従業員による面接者への警戒心は強くないと判断し、1~3名の小グループあるいは個人を対象とした面接方法に変更した。 3.関連文献サーベイ:プロプアツーリズム、ホスピタリティと人的資源管理、労働価値観を主なテーマとして、国内外の文献を収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、当該プロジェクトの全従業員数が現在では約60名まで減少したため、面接対象者数を30名に変更し、初年度でこの30名への面接を終了した。したがって、当初の研究計画を変更し、2013年度は通常の従業員への面接調査を行わない。一方、当初の研究計画には含めていなかったが、経営責任者の意図を一般従業員へ直接伝達する中間管理職的な役割を担ってきた者2名への面接調査を新たに追加する。この面接調査によるデータを追加することで、今後、経営責任者の人的資源管理策と一般従業員の反応を照合する際に、より妥当性の高い解釈が期待できる。 したがって、2013年度において、実施する予定の主な研究活動は、まず経営責任者の人的資源管理策を従業員へ直接伝達する役割を担う者2名への面接調査であり、次いで従業員への面接調査データを内容分析することである。そして、その結果に基づき、後発開発途上国における観光人的資源管理の方策(仮説)をまとめる。そしてさらには、その研究成果の一部を国内学会で報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、為替が研究計画書作成時の想定より円高に変動したため、旅費の実費が当初の想定より若干安くなり、差額が発生した。次年度は、今年度に比べて為替が相当に円安傾向にあるため、旅費が当初の計画額より増加すると予想される。そこで、今年度の交付金残額分は次年度の旅費に充当する予定である。
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