2013 Fiscal Year Research-status Report
後発開発途上国ラオスにおけるプロプアツーリズムのための人的資源管理
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24611009
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
桑原 浩 琉球大学, 観光産業科学部, 准教授 (90468067)
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Keywords | プロプアツーリズム / ラオス / 東南アジア / 人的資源管理 |
Research Abstract |
本研究は、後発開発途上国であるラオスで、多様な少数民族の雇用に成功している民間企業家主導の観光プロジェクトに注目し、それを稀有なグッドプラクティスと仮定したうえで、後発開発途上国の観光雇用に有効な人的資源管理策を探索し提示することを目的としている。 この目的を達成するために、初年度にあたる2012年度においては、プロジェクトの経営責任者と従業員の双方から、面接によって一次データを収集することまでを実施した。2013年度においては、さらに中間管理職者に相当する人物2名への面接調査、および経営責任者への補足的な面接調査を実施した。 従業員への面接調査結果の一部については、日本観光学会全国大会にて報告した。その要点は次のとおりである。後発開発途上国の従業員が同一民族出身者同士の結びつきを重視するという集団主義的価値観が強いことは、面接回答からもある程度確認された。しかし同時に、異民族従業員との共労働に関しては、共通語によるコミュニケーションが可能な場合、否定的な反応よりもむしろ肯定的な反応が多かった。多民族を混在させて業務を運営するマネジメントが十分に機能するという示唆を得た。さらに、先進国でしばしば実施されている人的資源管理策としてのエンパワーメント(職場における問題解決のための裁量権を予め従業員に与え、各自に自主的解決を図らせる方策)は、試みられたものの、従業員自体がそれに否定的だったという管理者側の回答を得た。本プロジェクトの従業員は、すべてラオス社会の中での少数派民族に属しており、これまで裁量権を行使する機会が極めて少なかったと考えられる。そのため、裁量権を恐れる傾向があり、裁量の余地のない命令型のマネジメントの方がむしろ機能するという仮説が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目にあたる2013年度の研究計画において、主に以下の3項目が実施予定であった。そこで、以下ではこの3項目のそれぞれについて達成度を述べる。 1.従業員面接調査データの内容分析:研究計画当初から想定していた人的資源管理の4分野である【教育・訓練】、【家業(農耕)との共存】、【チームワークとリーダーシップ】、【評価と報酬】をさらに細分化したサブカテゴリーの設定を行った。そして、各従業員の発言をそれらサブカテゴリーへコード化する作業を進めているが、完了するには至っていない。 2.中間管理職者に相当する人物2名への面接:各人1回の面接を実施し、経営者面接調査および従業員面接調査の結果を補うに足る回答を得た。 3.従業員の価値観の特徴と人的資源管理策との関連性を考察し国内学会で発表:日本観光学会第104回全国大会にて、従業員面接調査の結果を中心に研究報告を行った。その主な内容は、研究実績の概要で述べたように、異民族混合型のマネジメントが機能するが、逆にエンパワーメント型のマネジメントは十分に機能しない、といった仮説である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画で予定していた現地調査(従業員および経営者への面接)、およびそれらのデータを補う目的で新たに追加された中間管理職者への面接調査は、すでに終了しており、内容分析を進めている最中である。 今年度はこれら内容分析を完了してその結果に基づき、後発開発途上国における観光雇用のための人的資源管理策(仮説)をまとめることが、最終年度にあたる今年度の基本的な課題である。また、これら仮説をまとめた研究成果については、当初の計画に従って、国内学会およびアジア諸国での国際会議等で、その報告を行う予定である。さらに、研究対象地であるラオス、あるいは類似の社会的背景を有する東南アジア諸国の研究者とも、研究成果についての意見交換を計画している。そして、最終的には、これら研究発表での議論と意見交換を踏まえて、本研究の最終報告書を作成する目論見である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
円安等の理由により今後必要な旅費が当初の計画時より増加することが予想されるため、支出の倹約に努めた。 国際会議での発表、および東南アジア地域の研究者との意見交換を予定しており、それらに要する旅費の一部とする予定である。
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