2012 Fiscal Year Research-status Report
映像メディア誘発型の国際観光における観光者の特性と観光市場への影響に関する研究
Project/Area Number |
24611020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Seitoku University |
Principal Investigator |
臺 純子 東京成徳大学, 人文学部, 准教授 (40440193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
韓 志昊 立教大学, 観光学部, 准教授 (40409545)
崔 錦珍 九州国際大学, 国際関係学部, 准教授 (50551959)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 映像メディア誘発型 / 国際観光 / 観光者特性 / 観光市場への影響 / ロケ地めぐりツアー / 秋田、韓国 |
Research Abstract |
本研究は、映像メディアに誘発される国際観光における観光者特性と国際観光市場に与える影響を明らかにすることを目的としている。平成24年度には、おもに観光者の特性調査を行う予定にしていた。その予備調査として、事例とした韓国ドラマ『アイリス』によって日本および韓国からロケ地めぐり観光者が訪れた秋田の関係諸機関および、韓国人観光客を送り出した韓国の旅行会社、ドラマロケ地のコーディネートを行った韓国の会社などで、聞き取り調査を行った。その結果、韓国人客は、ドラマによって「秋田」を知り、初来日しており、カップルや家族連れなどが多いのに対し、日本人客は、ドラマの主演俳優の女性ファンが中心であるなど、客層が大きく異なることが明らかになった。 また日本人客は、撮影中から秋田を訪れており、彼女たちの情報交換の場ともなったロケ施設で紹介されたキーパーソンを中心に、聞き取り調査を行い、予備調査項目を確定した。年度後半から実施した予備調査の結果は、現在、整理分析を行っており、この結果から、本調査の項目を確定する計画である。当初は、WEB上に公開されているブログなどから、ロケ地めぐりを行った観光者をリスト化し、質問紙調査を行う予定であったが、文献研究などを踏まえ、調査方法を検討した結果、女性ファンへの聞き取り、予備調査、本調査という手順を踏むことになった。 また秋田県での諸機関・施設ならびに韓国での聞き取り調査は、平成25年度に計画している映像メディア誘発型の国際観光者が観光市場に与える影響を分析するための予備調査としても位置づけられる。諸機関・施設では、撮影陣のために、かなりの物資、費用と時間を提供しており、それに見合う集客効果、特に韓国からの集客効果があったのかについては、さらなる検討が必要であることが分かった。この点については、平成24年12月の日本観光研究学会全国大会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の対象事例とした韓国ドラマ『アイリス』のロケ地となった秋田では、何が起きたのかを整理するために、まず秋田および韓国でロケに協力した諸機関や施設、ロケ地めぐりツアーを企画した旅行会社、ロケ地めぐり観光者を受け入れた施設などに対する聞き取り調査を行った。研究実績の概要でも記述したように、韓国からの観光客は、おもにカップルや家族連れなどであり、また秋田が初来日であった割合が高いことが分かった。一方、日本人客は、ドラマの主演俳優の女性ファンが中心で、撮影中からすでに秋田を訪れ、撮影を見守っていたことが分かった。さらにドラマ放送後には、主演俳優のファンばかりでなく、単にドラマがきっかけで秋田のロケ地を訪れた人たちもおり、日本人客は、2つのタイプに細分化されることが分かった。 そこで、まず、撮影中に秋田を訪れた主演俳優のファンを対象に聞き取りを行うこととし、ファンたちが情報交換の場としていた施設の担当者からキーパーソンを紹介してもらい、聞き取り調査を行ったところ、秋田だけでなく、韓国ソウルなどのロケ地にも出かけていたことが分かった。さらにキーパーソンを通じて主演俳優のファンを対象に、ロケ地めぐりの魅力などについての予備調査を実施した。年度末までに約40通の調査票を回収しており、現在は、結果の整理・分析を行っている。この結果をもとに本調査の項目を確定する予定である。当初予定していたWEB上に公開されているブログなどを対象にした調査を実施することはできなかったが、対象ブログのリスト化はすでに進めており、本調査の項目を確定次第、順次、調査依頼を行うことができる。 また、韓国から秋田を訪れた観光者について、韓国の旅行会社などからは顧客情報を入手することができなかったので、研究メンバーの人的ネットワークをつかって、調査対象者をピックアップできるよう準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、映像メディアに誘発される国際観光における観光者特性を分析・考察するため、主演俳優のファンでロケ地めぐりを行った日本人客を中心に、聞き取り調査および質問紙調査など予備調査を行った。同時に、映像メディア誘発型の国際観光者が観光市場に与える影響については、秋田および韓国における諸機関への聞き取り調査により、全体の枠組みを把握することにつとめた。 今後は、観光者特性の分析・考察に必要な本調査や聞き取り調査を行いながら、並行して観光市場に与える影響を調査する必要がある。特に事例としたドラマに誘発された韓国人観光者と日本人観光者の相違、さらに日本人観光者の中でも、主演俳優のファンでロケ地めぐりをした観光者と、単にドラマを見てロケ地めぐりをした観光者の相違など、詳細な分析を行う必要がある。しかしながら、映像メディアに誘発される観光者の特性を調査分析した先行研究は、現在でも、ほとんど見当たらないため、質問紙調査や聞き取り調査に用いる尺度設計や、母集団の取り方など、調査計画について、心理・性格調査や社会学調査などの先行研究を行いながら、さらなる検討を加える必要がある。 それらを踏まえて、平成25年度は、観光者については、本調査対象者の選定と調査の実施、観光市場への影響については、平成24年度に聞き取りできなかった秋田および韓国の諸機関・施設への聞き取り調査、および観光者数・入場者数などの最新のデータ入手などを継続して行うことによって研究を推進していく。 さらに平成25年度には、国内の観光系学術誌への投稿のほか、海外学会での発表を年間スケジュールに組み込んでおり、研究成果の発信についても本格化させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用計画は、大きく分けて、旅費と、観光者特性についての本調査実施に必要な費用である。 旅費では、おもに秋田および韓国におけるロケ地めぐりに関わる諸機関・施設への聞き取り調査のための旅費、海外学会での発表にかかる旅費、観光者特性に関する個別の聞き取り調査のための旅費を想定している。 平成24年度には、日本では秋田県観光課、秋田内陸縦貫鉄道、アイリスミュージアムのほか、秋田市内と田沢湖地区でロケに協力した宿泊、飲食などの諸施設、さらに韓国観光公社および韓国からのロケ地めぐりツアーを企画した旅行会社での聞き取りを実施した。また韓国では、秋田がロケ地として採用されるようコーディネートした企画会社、秋田ロケ地めぐりに韓国人客を送客した旅行会社などで聞き取りを行った。しかし秋田市・田沢湖周辺以外にもロケ地となった地域・施設があるほか、韓国からのロケ地めぐりツアー実施にあたっては、ソウル=秋田間のフライトを運航する大韓航空が大きな役割を果たしていたため、大韓航空秋田支店などでの追加調査が必要である。また韓国ソウルでは、現在はすでに行われていないが、日本人客向けに『アイリス』のロケ地めぐりツアーを実施していた旅行会社があり、それらの会社での聞き取り調査も不可欠と考える。 観光者特性についての本調査を実施するための費用としては、質問紙調査の郵送費などのほか、個別の聞き取り調査を実施する際に謝金が必要な場合があることを想定している。 このほか、割合としては大きくはないが、さらなる先行研究のための文献購入や論文複写費用、成果発信に関わる費用として論文投稿費、海外学会発表のための登録費などが必要となる。
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Research Products
(1 results)