2012 Fiscal Year Research-status Report
日本の国境地域における観光振興の課題と対策に関する研究
Project/Area Number |
24611021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
加藤 英一 東海大学, 観光学部, 教授 (80580448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金城 盛彦 東海大学, 政治経済学部, 教授 (30317763)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国境観光 |
Research Abstract |
平成24年度は、日本の国境地域における観光振興の研究に関し、①沖縄県・石垣島について、地理的に近い中国、台湾からの観光客の実態把握を行うとともに、②台湾にとっての国境地域となる金門島の観光振興に関する中国との関係について、現地調査を行った。 ①国境の島である沖縄県・石垣島における外国人観光客の実態と受け入れ体制の課題に関し、那覇を2回、石垣市・竹富町を1回訪問し、行政関係者、観光協会、民間会社等からヒヤリング調査を行うとともに、入込客統計データの分析を行った。沖縄県から日本に入国する中国人観光客に対するマルチビザ発給の効果と、一方での中国人観光客のマナー等の問題に対する地域住民・店舗の複雑な心理状況も浮かび上がった。また石垣市においては外国人観光客は台湾からクルーズ船に乗って寄港する人がほとんどであるが、クルーズ船内に宿泊することから必ずしも地元経済に対する支出効果は大きいとは言えない実情である。台湾との間では2013年4月に懸案であった漁業協定が締結され、また新石垣空港が2013年3月に開港したことにより台湾との間で直行便が就航することが予定され、尖閣諸島をめぐり緊張関係が続く日中関係と異なり、台湾との関係においては石垣市の観光振興に期待が持てる状況となった。 ②金門島はかっては中華人民共和国(大陸)と中華民国(台湾)との間で大きな戦闘のあった戦略要地であったが、現在はアモイからフェリーで30分の距離的な近さのため人的交流も盛んになり、多くの中国人観光客が金門島を訪問している。台湾・金門島を1回訪問し、台北においては交流協会、台湾政府観光部署、台湾旅行会社からヒヤリング調査を行うとともに、金門市関係者、金門大学学生からもヒヤリングを行った。金門市は既に中国観光客によって観光経済が成り立っている状況であり、実質的に中国経済に飲み込まれている状況であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
石垣島における外国人観光客からのヒヤリング・アンケート調査に関しては、2012年9月からの尖閣諸島に関わる中国、台湾との関係から実施が困難になったため、先延ばしして平成25年度に実施する予定とした。 他方沖縄県・石垣市の行政や民間関係者からのヒヤリング及び各種統計資料の分析は当初予定通り進捗していると評価できる。 また平成25年度計画で予定していた台湾にとっての国境の島に当たる金門島における中国人観光客の実態調査と台湾政府の方針確認に関しては、平成24年度中に前倒しで第1回目の訪問調査を行った。 なお石垣島、対馬の観光振興と、中国、台湾、韓国との政治関係、外客による観光経済効果の度合いと地域への政治経済的影響力との関係の調査については、領土・領海に係る最近の政治的な動きを踏まえつつ、地元の行政関係者とも連絡を取りながら、調査実施のタイミングについてある程度弾力的な形で進めていくことといたしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、石垣市における外国人観光客に対するアンケート調査を実施するとともに、沖縄県・石垣島における外国人観光客による経済波及効果の分析を行う。併せて今後中国及び台湾からの観光客増加に伴う課題の分析と対応策の検討を行うこととする。 また対馬に関しても、近年急激に韓国人観光客が増加している状況を踏まえ、2年前に実施した調査時からの変化を分析する。特に竹島をめぐる問題に加え、最近の対馬の寺院から韓国人窃盗団により盗まれた仏像を韓国側が返還しないことに対する不信感からアリラン祭り中止の決定等、日韓政治問題と地域住民の不信感が増大しているのが、最近の動きである。 釜山から49.5キロの距離にあり、一方で韓国人観光客に期待したい経済関係と、対馬の置かれた政治的な環境の中で、観光振興及び地域経済への影響と国益とのバランスに関して調査分析を行うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に実施する予定にしていた石垣市における外国人観光客からのアンケート調査が、尖閣問題で実施できず先送りとなったため、資金の一部を繰り越して25年度にアンケート調査を実施することとした。 また代わりに25年度に予定していた台湾に関する第1回目調査を24年度中に実施したために、その部分での研究費の支出を前倒しで行った。 これらの未使用金額と前倒し使用金額との差額繰り越し分に、当初予定の25年度研究費分を加えた研究費で、25年度の研究を行うこととしている。
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