2012 Fiscal Year Research-status Report
観光みやげにおける生産地と販売地の乖離に関する基礎的研究
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24611024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 涼太郎 相模女子大学, 学芸学部, 准教授 (70512896)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 観光みやげ / スーベニア / ギフト / 手工芸品みやげ / 食品みやげ / 佐渡 / ベトナム / マトリョーシカ |
Research Abstract |
観光みやげは、特産物の商品化によって経済効果が期待されるだけでなく、地域文化を表象するメディアとしても重要な役割を担っている。にもかかわらず、現実の観光地では地域外で生産された商品が、その地域のみやげ品として販売されている。本研究では、観光みやげがその生産地から乖離した場所で販売されることの背景を明らかにするために、みやげ品関連産業の経済的・経営的要因に加え、文化人類学や民俗学における贈答慣行に関する理論を参照しながら考察を行った。 平成24年度の研究計画では、日本の観光地におけるみやげ品が、その生産地から乖離した場所で販売される背景を明らかにするために、①日本国内におけるみやげ品流通/販売現場の実態調査、②国内外におけるみやげ品生産者の実態調査を行ったうえで、③既存の諸研究の理論的再検討を行った。具体的には、①に関連しては、観光みやげの全国的な流通過程を把握するために、全国観光みやげ品連盟、JTBスタンプ連盟などの関連団体へのヒアリング、東京駅・羽田空港・関西空港や京都奈良、新潟県佐渡島など観光地におけるみやげ品販売現場の調査を行った。②に関連しては、国内では新潟県佐渡市の食品みやげ生産業者、神奈川県箱根と長野県松本の手工芸品生産者を対象とした調査を行ったほか、ベトナム・ハノイ市並びに周辺地域において観光みやげの販売と生産現場の調査を行っている。③に関連しては、上述の調査データを踏まえつつ既存文献サーベイをおこなっている。 これらの作業から明らかになったのは、手工芸品と食品のみやげでは流通システムや観光客が求めるみやげ品の「本物らしさ」が異なっているということである。なお、研究成果の一部は、学会や研究会などで発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は国内外各地で観光みやげの生産/販売地の調査を行った(国内生産地としては、新潟県佐渡島、神奈川県箱根、長野県松本市、販売地としては東京駅・羽田空港・関西空港や京都奈良など、国外ではベトナムハノイ近郊)。また全国観光みやげ品連盟など土産品流通にかかわる関連団体の調査も行った。調査地や調査回数という点では、当初の予定通りないし想定以上に順調な側面もある。 ただし、調査地1か所あたりの調査期間が十分ではなく、また調査の途中で新たな調査地の設定が必要となるなどしたため調査データの整理と分析がすべて完了していない。結果として平成24年度の研究計画のうち「③既存の諸研究の理論的再検討」が十分に行われていない状況にあり、それによって研究成果の発表も限られている。次年度は、調査と同時並行してデータの整理分析を行い、研究目的の十分な達成を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる平成25年度は、24年度に不十分であった文献サーベイをもとにした理論的再検討の作業を進めつつ、これまでの調査結果を踏まえ、具体的な生産地/販売地に関する集中的な調査を行う予定である。具体的には、24年度の調査データと文献サーベイの作業を相互に参照しながら、みやげ品流通システムの全体像を把握し、研究の論点を定める。またそれらの成果を踏まえながら本調査を行う。具体的には、本年度内に、国内では新潟県佐渡島における集中的調査と神奈川県箱根での短期調査、国外ではベトナム・ハノイ市近郊とタイ・バンコク市、ロシア・モスクワ市近郊におけるみやげ品の生産・販売現場の調査を行う。 なお、タイ・バンコクは、ベトナムで販売されるみやげ品の一部がタイにおいて生産・販売されていることが明らかになったため両者の比較が必要になったことにより、またロシア・モスクワ市周辺は神奈川県箱根をルーツとする民芸品マトリョーシカの生産地であり、現在ベトナムではロシア産や中国産のマトリョーシカが一部みやげ品として販売されているため、調査の進行の中で新たに追加することにした調査地である。 これらの作業を通じて明らかになった研究成果は、部分的にまとまり次第学会や研究会において発表し、他の研究者からの助言を得ながら研究の深化を目指したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費使用は、①国内調査旅費(新潟県佐渡島、神奈川県箱根、ほか国内学会発表)、②国外調査旅費(ベトナム・ハノイ市、ロシア・モスクワ市周辺、タイ・バンコク市周辺)、③国外調査にかかわる通訳謝礼、並びに調査データ整理に伴う人件費、④国内外調査時に入手する観光みやげサンプル費用、⑤関連文献購入費用、⑥その他複写費用、文具費用など消耗品を予定している。追加で必要となった調査費用があるものの、昨年度未使用分と合わせ調査計画の確実な遂行が可能なように調整する。 平成26年度は、上記をふまえつつ、平成25年度までの作業の中で補足調査が必要となった調査地を中心に旅費を使用しながら、データ収集から分析へと調査の軸足を移行させる。したがって、データの整理分析や学会などでの研究発表のための費用に多くを割り振る予定である。
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