2014 Fiscal Year Annual Research Report
観光みやげにおける生産地と販売地の乖離に関する基礎的研究
Project/Area Number |
24611024
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
鈴木 涼太郎 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (70512896)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 観光みやげ / 真正性 / ギフト性 / 儀礼的倒錯性 / スーベニア / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
みやげは、観光において不可欠の要素である。観光みやげが地元の産品であれば地域への経済効果が期待され、地域文化を広く発信する媒体ともなりうる。しかし現実の観光地では、地域外で生産された商品が数多く販売されている。そのような観光みやげの生産地と販売地の乖離が生じる要因については、これまで倫理的な批判を越えた理論的考察が十分に行われてこなかった。そこで本研究では、このような乖離状況が生起する背景にある論理について考察を行った。 これまでの2年間では、日本国内の観光みやげ研究、海外のスーベニア研究などを幅広くレビューするとともに、ベトナムやロシア、新潟県佐渡島ほか国内各地におけるフィールド調査を行った。また最終年度では、ベトナムと国内各地で補足的な調査を行うとともに、観光に関連する学会等でその成果を公表してきた。 研究の結果明らかになったのは、観光みやげとなるモノは、「真正性」「ギフト性」「儀礼的倒錯性」という3つの要件のいずれかを満たしており、いずれかを満たしていれば生産地と販売地の一致は必ずしも重要視されないということである。既存の研究は、観光みやげの文化的真正性に焦点を過度に集中させるが故に、真正性を構成する一要件である生産地と販売地の一致を重要視してきた。しかし観光みやげという現象自体を俯瞰した場合、「ご当地キティ」や「地域限定菓子」に象徴されるように、たとえ地域外の工場で大量生産された製品であったとしても、観光客の求める限定的な真正性を有し、持ち運びやすいギフト性や話のネタになる倒錯性を有していれば、観光みやげとして購入される。すなわち、生産地と販売地の乖離は、観光客や観光事業者の倫理の問題ではなく、観光みやげという文化が有する構造的な要因によるものなのである。そして、このような視点は、観光におけるモノの移動と文化の関係を検討するための基礎作業と位置付けられよう。
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Research Products
(6 results)