2013 Fiscal Year Research-status Report
地域の景観を観光資源とした持続的なまちづくりに関する研究
Project/Area Number |
24611032
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Research Institution | Kurume Institute of Technology |
Principal Investigator |
大森 洋子 久留米工業大学, 工学部, 教授 (30290828)
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Keywords | ツーリズム開発 / 地域景観 / 無形遺産 / 文化遺産 / 地域社会システム / 伝統家屋 / 景観整備 |
Research Abstract |
この研究では地域の個性的な景観を保全しつつそれを観光資源としてツーリズムに活かした持続可能な地域開発型まちづくりの条件を明らかにするために、A)景観の把握、B)地域の社会システムに関する分析を現地踏査により行い、その成果を用いて、C)景観を保全しながらのツーリズム開発の方針検討を行う。25年度は主にツーリズムの現状と課題について調査・分析を行い、以下の結果を得た。 ①八女市黒木伝建地区と日田市「小鹿田焼きの里」におけるツーリズムの現状と課題:黒木地区最大の祭りである大藤祭時に観光客を対象に、黒木の観光地としての位置づけや景観の認知度、観光客の望む将来像等についてアンケート調査を実施した。その結果、観光客は満足度も高く再訪の意志も高いが、町並みが重伝建地区に選定されていることを知らない人が6割と高く、また行動範囲も保存地区の一部に留まっており町並みの魅力が十分に生かし切れていないことが分かった。同様に、重要文化的景観に選定されている日田市皿山の「小鹿田焼きの里」で唐臼祭り時にアンケート調査を行い、156票回収した。平成19年に実施している同様のアンケート調査の結果と比較しながら分析を行った。その結果、訪問の目的が小鹿田焼きの購入だけではなく景観を楽しむ為と回答している割合が前回より増加していること、及び近くの豆田の町並みもついでに訪れている人が増加していることが分かった。 ②北川内の景観の補足調査と景観認識に関する調査:北川内の景観要素の一つである工作物の調査と景観の認識度を測るための地元小学校でのW.S.を実施した。工作物は石橋や水路など石造物が多く残っていることが分かった。町歩きW.S.では、子供たちは自然物をより認識しており伝統家屋に対する関心が低いことが分かった。今後のまちづくりを進めていく上では、歴史と文化を象徴する伝統的町並みについて次世代への教育が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象地である八女市黒木、同北川内、日田市豆田は24年7月に起きた九州北部豪雨災害の最も甚大な被害を受けた地区である。復旧作業が急がれてはいるが、被害が甚大であった河川護岸の復旧はまだ遅れており、調査が計画通りに進んでいない。24年度の遅れた分を25年度に実施するつもりであったが、災害復旧の最後年である26年度までは地元で受け入れ体制が整わないなどの影響もあり、25年度の調査も26年度にずれこんでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はB)地域の社会システムを分析するために地域運営組織や祭・伝統行事などの調査及び、ツーリズム体制の分析を行う。C)景観を保全しながらのツーリズム開発の方針検討では、先ず先進地の調査を行い、その成功要因を分析し、これまでの調査から得られた知見を基に景観を保全しつつそれを観光資源として活かした持続可能な地域開発型のまちづくりの条件を明らかにする。 ①ツーリズム分析:調査済みの豆田町と八女福島以外の北川内と黒木の観光活動の経緯を文献資料と行政や観光協会、地元商店街へのヒアリングにより把握する。それらと地域の景観整備の状況から景観とツーリズムの関係を分析する。その結果を基に昨年度のアンケート調査の結果からツーリズム開発の課題を分析する。 ②修景手法検証:観光地としてある程度成功している豆田町の建造物のデザイン誘導手法および公共事業の整備方針について補足調査を行う。修景マニュアルの分析と修景された建造物の現地調査を行い、それらが景観の価値をどのように高め観光客の増加に繋がったのか検証を行う。 ③社会システム検証:景観を支えている組織や人々の活動について、昨年度の調査で不足していた祭や伝統行事の運営システムについて調査し、景観との関わりを分析する。 ④ツーリズム開発検証:国内外の景観ツーリズム先進地の現地調査を行いどのようなシステムで景観を保全しながら観光地形成が行われてきたかを把握し、それを参考としながら持続可能な地域景観ツーリズム開発モデルを構築する。国内では観光地として成功している岐阜県白川村及び沖縄県竹富島を、海外では木造伝統家屋の町並みや伝統産業を活かしたまちづくりで成功しているインドネシアのコダグデを先進地事例として調査を行う。そして構築した開発モデルを用いて黒木と北川内で検証を行い課題を抽出し、景観を観光資源として活かした持続可能な地域開発型まちづくりの条件を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費の殆どが調査旅費であるが、24年度の北部九州豪雨による災害の影響で、予定通りに地域での調査が進んでおらず、従って旅費の使用が当初予定より少なくなっている。また、データ処理用の高速のパソコンを25年度に購入予定であったが、未購入になっている。 本年度は、予定より遅れていた現地調査を実行し、そのデータを処理するパソコンを購入予定である。
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