2014 Fiscal Year Annual Research Report
ホスゲン・塩素ガス等の塩素系化学兵器曝露のバイオマーカー探索に関する研究
Project/Area Number |
24612004
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
柘 浩一郎 科学警察研究所, 法科学第三部, 主任研究官 (90356204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 毅 科学警察研究所, 法科学第三部, 室長 (70356195)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 塩素ガス / プロテオーム / ターゲットタンパク質 / 毒性 / アダクト / 法中毒 |
Outline of Annual Research Achievements |
塩素ガスは曝露後生体内で次亜塩素酸を生じて細胞や機能性タンパク質にダメージを与えることで毒性を発現すると考えられているが、その際、タンパク質等の生体高分子に付加するなどすることが考えられる。本研究では、塩素と生体内タンパク質とのアダクトに着目し、これを検出することで曝露証明を行うことを目指した。 生体高分子としてモデルタンパク質を用い、各種曝露法を検討した。その結果次亜塩素酸塩の添加による方法を選択した。次亜塩素酸ナトリウム処理の後、SDS-PAGEにて残存タンパク質の量を低了したところ、添加濃度に依存して元のタンパク質のバンドが減少することがわかった。この結果から、添加する次亜塩素酸ナトリウムの濃度を終濃度0.01%と決定し、これを塩素曝露の条件とした。 BSA 5mg/mL、次亜塩素酸ナトリウムを50mMリン酸緩衝液に添加した。37℃で1時間インキュベート後、限外濾過フィルタで低分子画分の除去、バッファー交換を行った後、トリプシンまたはキモトリプシンによる消化を行い、LTQ-Orbitrapを用いた全ペプチド断片の定量を行った。塩素未曝露のタンパク質についても同様の分析を実施し、塩素処理によってピーク面積が大幅に減少するペプチド断片を得た。トリプシン処理ではNECFLSHK(55.4%減少)、IETMR(51.0%減少)等のペプチド断片が、キモトリプシン処理ではVEVTKL(65.2%減少)、EIARRHPY(48.6%減少)等の断片が塩素結合の可能性のある断片としてリストアップされた。これらの断片に塩素が付加した質量をターゲットとしてLC-MS/MS分析をおこない、塩素曝露断片の探索を実施したが、塩素付加と考えられるピークの同定には至らなかった。このことから、塩素(次亜塩素酸塩)とペプチドの反応(酸化切断or塩素化の反応の優劣)について知見を得る必要があると考えられた。
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