2013 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質合成に利用されないアミノ酸の骨格筋タンパク質合成と分解の調節
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24614002
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
長澤 孝志 岩手大学, 農学部, 教授 (80189117)
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Keywords | シトルリン / クレアチン / C2C12細胞 / 廃用性筋萎縮 |
Research Abstract |
C2C12筋芽細胞をコンフリエントになるまで培養し筋管細胞に分化させ、培地中に放出された3-メチルヒスチジン(MeHis)量から細胞のタンパク質分解を評価する系を構築した。10mMのシトルリンを添加した培地おいて細胞からのMeHis放出速度、オートファジー活性、細胞内のアミノ酸濃度を測定した。しかし、リジンやロイシンではこの方法でMeHisを測定できたが、シトルリン添加ではHPLCによる測定が妨害物質によりできなかった。イオン交換樹脂による精製などを試みたが、測定することはできなかった。この点については別の方法による培養、測定を26年度に実施する。オートファジー活性はシトルリン添加で有意に減少し、分解の抑制が示された。このとき、細胞中のアルギニン濃度はほとんど増加せず、タンパク質分解抑制作用がシトルリンによるものであることが示唆された。 廃用性筋萎縮におけるシトルリンの作用を明らかにするために、まず尾部懸垂時における骨格筋萎縮の経時変化を検討した。ラットの尾部を体が30度の角度になるように7日間懸垂した。その結果、骨格筋タンパク質の分解速度や分解酵素系活性は懸垂開始2から3日に顕著に増加し,その後懸垂前のレベルに戻ることが明らかになった。このとき、給与しているタンパク質量やシトルリンの投与は、懸垂による分解亢進を抑制することはできなかった。今後、懸垂解除後におけるシトルリンなどの飼料への添加効果を検討する。 クレアチンを0.5%含む10%カゼイン食は、ラットの骨格筋タンパク質の翻訳因子である4E-BP1とS6K1のタンパク質発現から評価した合成、MeHis放出速度から評価した分解には影響を及ぼさなかった。C2C12筋管細胞にクレアチンを5mMになるように添加した系では、細胞からのMeHis放出速度を低下させたが、その割合はロイシンやリジンに比べ小さく、これらのアミノ酸のような顕著な分解抑制作用は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C2C12筋管細胞における評価法はリジンを中心に確立することができた点が本年度の大きな成果である。しかしシトルリン添加培地では、他のアミノ酸では問題がなかったのにも関わらず,HPLCにおけるMeHisの保持時間に妨害するピークが検出され、分解速度を測定できず、予定通りの検討はできなかった。一方、分解系の評価はおおむね予定通り実施でき、成果を挙げることができた。 廃用性筋萎縮モデルである尾部懸垂モデルにおいて、懸垂時の骨格筋タンパク質の分解、合成の経時的な変化をみたところ、予想以上に早い時期に分解亢進が認められた。しかし低栄養で認められたタンパク質やシトルリンによる分解抑制は認められず、萎縮も軽減できなかった。シトルリンの効果という点では懸垂解除後の作用を検討する必要が生じたので、26年度に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、タンパク質合成に利用されないアミノ酸のうち骨格筋タンパク質の合成促進、分解抑制作用があるものを明らかにし、その共通する構造や作用機構を明らかにする。また動物を用いた実際的な効果を明確にするために、培養細胞およびラットを用いた以下の実験を実施する。 シトルリン添加培地におけるMeHisの放出速度測定を確立する。25年度の検討で、シトルリンと培地の間で何らかの反応が起こり、HPLCにおいてMeHisと重なるピークが出ることが明らかになったので、培養法法を変更して対応する。さらに、シトルリンの作用機構をシグナル伝達系の観点から、主にウエスタンブロットにより解析すると同時に、どの分解系が作用するか、遺伝子発現を含め詳細に検討する。また、NOの関与についてもNO生成試薬やNO合成酵素阻害剤を用いた検討を実施する。シトルリンのアナログであるオルニチンは、リジンのアナログでもあり、これらの関係を明確にするためにリジンの代謝産物であるサッカロピンなどの作用についても解析を進める。 尾部懸垂におけるアミノ酸の作用は25年度の検討から懸垂時よりも懸垂解除後に期待できることが示唆されたことから、7日間の懸垂後の骨格筋肥大効果をシトルリンや上記で明らかになったタンパク質合成に利用されないアミノ酸を用いて検討を実施する。筋重量の測定の他、分解と合成のマーカーとしてMeHis放出速度と4E-BP1のリン酸化を測定する。また、アミノ酸による影響される分解系としてオートファジーとユビキチン-プロテアソーム系関与を、オートファジー因子の発現、ユビキチン化酵素の遺伝子発現などから示す。
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