2012 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティクス解析によるビオチンの摂食抑制機構の解明と糖尿病改善への応用
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24614009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
曽根 英行 新潟県立大学, 人間生活学部, 講師 (90398511)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ビオチン / 摂食 |
Research Abstract |
平成24年度は、実験動物としてC57BL/6jマウスを用い、ビオチンによる摂食抑制効果を再検討すると共にビオチンの体内分布と摂食関連ホルモンの血中濃度を測定し、ビオチンの作用部位について検討した。さらに、標的臓器として示唆される白色脂肪及び視床下部における関連タンパク質の遺伝子発現について検討した。摂食量はビオチン摂取3‐4日目から有意に減少した。しかし、摂食関連ペプチドホルモンの血漿中濃度については変化は認められなかった。qRT-PCRの検討においても、白色脂肪でのレプチンの発現量には変化はみられなかった。これらの結果から、ビオチンは白色脂肪を含めた末梢組織には作用部位を持たず、脳中枢系で機能することが示唆された。視床下部における検討では、アセチルCoAカルボキシラーゼ-β(ACC-β)の発現量がビオチンによって有意に増加した。摂食行動は視床下部のマロニルCoAによって抑制されることが知られている。ACCにはACC-αとACC-βの2種のアイソザイムが存在し、共にアセチルCoAからマロニルCoAへの変換を触媒する。特に、視床下部においてACC-βはマロニルCoAを介して脂肪酸代謝を阻害し、摂食を抑制すると考えられている。従って、ビオチンは視床下部においてACC-βの発現量を増加し、マロニルCoA合成を亢進することで摂食を抑制するものと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ビオチンによる摂食抑制効果と作用部位を再検討し、さらに標的臓器における関連タンパク質の遺伝子発現量を測定し、その作用機序の一端を解明することを目的とした。本年度は、C57BL/6jマウスを用い、ビオチンによる摂食抑制を確認することができた。また、摂食関連ペプチドホルモンの血中濃度及び分泌臓器での遺伝子発現量を測定し、作用部位が視床下部にあることを確認することができた。さらに、視床下部においてビオチンがアセチルCoAカルボキシラーゼ-β(ACC-β)の発現量を有意に増加することを明らかした。ACC-βは摂食抑制因子の一つであるマロニルCoAの生成を触媒することから、本遺伝子の発現量の増加がビオチンによる摂食抑制機序の一つと推察される。これらの結果から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では、ビオチンが視床下部でのACC-βの遺伝子発現を亢進することで摂食抑制因子であるマロニルCoA量を増加し、摂食を抑制することが示唆された。そこで、平成25年度以降は、ビオチンによる視床下部でのマロニルCoA産生調節機構とビオチンによる遺伝子発現様式について検討する。マロニルCoA産生調節では、視床下部でのマロニルCoA量をLC/MSを用いて定量する。また、ACCとマロニルCoAデカルボキシラーゼ(MCD)の遺伝子発現をリアルタイムPCRで測定する。さらに、ACC、MCD、AMPKの発現部位と活性状態(リン酸化型)を組織蛍光免疫染色にて観察し、ビオチンによるマロニルCoA代謝調節を検討する。遺伝子発現様式では、ヒストンのビオチニル化に焦点を絞り、視床下部におけるヒストンのビオチニル化の頻度を標識アビジンを用いたウェスタンブロットにより確認する。さらに、CpIP法によりヒストンビオチニル化の標的遺伝子についての検討も進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は研究がおおむね順調に進展したため、予定していた確認等のための追試実験の必要性がなくなり当該研究費が発生した。平成25年度以降は、さらに研究を推進させ、その研究成果を広く公表するために、実験動物(病態モデルマウスを含む)、遺伝子発現解析用試薬、蛍光免疫染色用試薬、蛍光画像解析関連試薬(細胞分散試薬・蛍光指示薬・各種阻害剤)、血清ペプチドホルモン測定キット等の消耗品の購入や学会出張費用等に充当する予定である。
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