2013 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティクス解析によるビオチンの摂食抑制機構の解明と糖尿病改善への応用
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24614009
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
曽根 英行 新潟県立大学, 人間生活学部, 准教授 (90398511)
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Keywords | ビオチン / 摂食抑制 / ACC-β / マロニルCoA |
Research Abstract |
平成25年度は、摂食抑制作用におけるビオチンの作用部位としての末梢での可能性の再検討と視床下部におけるACC-βの遺伝子発現調節におけるエピジェネティクス制御機構について検討した。末梢での検討では、摂食調節ホルモンであるグレリン、コレシストキニン、レプチン、インスリンの血漿濃度には、ビオチンによる摂影響は観察されなかった。これらの遺伝子発現量についてもビオチンによる変動は認められなかった。視床下部におけるエピジェネティクス制御機構についての検討では、まずはじめにヒストン間を結合するリンカーDNAに特異的に作用するMicrococcal Nuclease(MCN)によりヒストン4~5個のクロマチン断片を回収するための切断条件を決定した。その結果、MCN濃度6.4×10-6U/μgDNA、消化時間15分間(37℃)が最適条件と決定した。この条件をもとに視床下部を消化し、アビジンビーズによるクロマチン免疫沈降(ChIP)法により、ビオチニル化ヒストンを含むクロマチン断片を分離し、DNAを回収した。その後、回収したDNAよりビオチニル化されたACC-β及び対照遺伝子であるGAPDHのプロモーター領域のDNA量をRT-PCR法を用いて測定した。その結果、GAPDHではビオチン負荷の有無にかかわらず検出限界以下を示し、GAPDHプロモーター領域ではヒストンはビオチニル化を受けないことが示された。一方、ACC-βでは、ビオチン負荷によって約5倍の増加を示し、ACC-βプロモーター領域におけるヒストンビオチニル化の増加が明らかにされた。以上の結果から、ビオチンは視床下部においてACC-βプロモーターをコードするDNA領域におけるヒストンのビオチニル化とそれに伴うACC-βの遺伝子発現量の増加によってマロニルCoA合成を亢進し、摂食を抑制すると示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の計画では、ビオチンによる視床下部でのマロニルCoA調節機構についての検討を予定していた。具体的には、視床下部でのマロニルCoA量をLC/MSを用いて定量すること、ACCとマロニルCoAデカルボキシラーゼ(MCD)の遺伝子発現をリアルタイムPCRで測定することを計画していた。さらに、ACC、MCD、AMPKの発現部位と活性状態(リン酸化型)を組織蛍光免疫染色にて観察し、ビオチンによるマロニルCoA代謝調節を検討する予定であった。しかし、マロニルCoAのLC/MSによる定量では、機器提供先の研究機関での使用が不可能となり平成26年度へ延期せざる得なくなった。しかし、MCDの遺伝子発現量についてはRT-PCRビオチンによる変化を受けないことを確認した。さらに、平成26年に予定していたビオチンの遺伝子発現様式に注目し、ヒストンのビオチニル化に焦点を絞り、CpIP法によりヒストンビオチニル化の標的遺伝子についての検討を推進した。そのため、組織染色については検討することができず、マロニルCoA量の測定と同様に次年度へ持ち越すこととなった。これらの結果から、平成25年度は次年度に繰り越した検討項目があるものの前倒しで実施し、着実に成果を上げた項目もあり、これらの点からおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、ビオチン摂取によるACC-β領域におけるヒストンビオチニル化の増加を明らかにした。しかし、これらの検討では視床下部でのビオチニル化ヒストン領域に在るDNAの回収量に不足を生じ、測定結果の信頼性に若干の疑義が残る。そこで平成26年度では、まずはじめにビオチニル化ヒストン回収条件を再構築し、平成25年度の結果を再検討する。つまり、新たに見出す回収条件で、マロニルCoA代謝関連酵素(ACC-α,β、MCD、AMPK)領域でのヒストンのビオチニル化頻度を明らかにする。さらに、これらの遺伝子発現量についても再検討する。加えて、平成25年度に実施できなかったこれら酵素の視床下部における発現部位と活性状態(リン酸化型)についても組織蛍光免疫染色にて観察する。さらに、糖尿病・肥満モデルマウスによる検証として、肥満・糖尿病モデル動物であるob/obマウスと高脂肪食負荷マウスにビオチンを投与し、摂食抑制と標的遺伝子の発現調節を確認し、ビオチンによる肥満・糖尿病の予防・改善について検証する。
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