2012 Fiscal Year Research-status Report
低マグネシウム血症に伴う心血管機能不全はマグネシウム補充療法によって改善するか?
Project/Area Number |
24614015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
渡邉 マキノ 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00255655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家崎 貴文 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10348956)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 低マグネシウム血症 / 虚血再灌流障害 / 心筋保護 |
Research Abstract |
マグネシウム(Mg)は生体機能に複雑に関与しているが、近年の食習慣の変化は、低Mg血症発症のリスクを増加させ、心血管病やメタボリックシンドロームの発症・進展に関与していると考えられている。我々は過去に、慢性的Mg欠乏マウスにおいて重篤な低Mg血症を発症し、心臓の低酸素に対する耐性が低下していることを報告した。本研究では慢性的Mg欠乏による心血管機能の低下がMg補充によって改善するかを、慢性的Mg欠乏ラットを作製し、組織・細胞・細胞内小器官の各レベルで検討することを目標とする。 雄性SDラットにMg欠乏食を4~8週間与えたところ(Mg欠乏群)、マウスと同様に重篤な低Mg血症は引き起こされたが、心臓の低酸素耐性は対照群と差が認められなかった。また摘出大動脈標本を用いた内皮依存性弛緩反応も対照群とMg欠乏群で著明な差は認められなかった。さらに慢性的Mg欠乏マウスで認められた血糖値の上昇も、Mg欠乏群では認められなかった。従って、当該年度に予定していた低Mg血症モデルに対する高濃度Mgの心筋保護効果の検討とMg補充療法の効果の検討については遂行できなかった。 正常ラットの心室筋を単離し、Mg流入経路を検討した。好気的条件下では細胞内遊離Mg濃度は、細胞外Mg濃度を血漿中Mgの10倍(12 mM;高Mg)としても影響をほとんど受けなかったが、低酸素下で細胞外Mg濃度を高Mgとしたところ著明に上昇し、その上昇はTRPM7チャネルを介することが判明した。 一方、次年度以降に検討する予定であったミトコンドリア透過性遷移孔(mPTP)の予備実験を開始した。ラット心筋ミトコンドリアの単離条件、およびmPTP検出条件が確定しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以前に行った慢性的Mg欠乏マウスの飼育条件を参考にし、慢性的Mg欠乏ラットの作製を試みた。ラットではマウスの時と同様に重篤な低Mg血症になったものの、慢性的Mg欠乏マウスで観察された高血糖にはならなかった。また心機能についても、慢性的Mg欠乏マウスで観察された低酸素耐性の低下がラットでは観察されなかったため、低Mg血症モデルに対する高濃度Mgの心筋保護効果の検討とMg補充療法の効果の検討については遂行できなかった。 一方で平成25年から予定していたmPTP開孔実験の予備実験を開始した。ミトコンドリアの単離条件やmPTPの検出条件がほぼ確定した。
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Strategy for Future Research Activity |
慢性的Mg欠乏ラットのモデル作製については、飼料のベース(基礎飼料)を変更する。再度モデルラットを作製し、心臓の低酸素耐性および摘出大動脈標本における内皮依存性弛緩反応の差異を確認する。新規飼料による慢性的Mg欠乏ラットにおいて、マウスの時と同様の心臓の低酸素耐性や血糖値の変化が認められた場合は、交付申請書に記載した高濃度Mgの心筋保護効果の検討とMg補充療法の検討を行う。また反応の違いは他の要因によるものであると考えられるので、飼料中に含まれるミネラル分を中心に慢性的Mg欠乏の心機能に影響を及ぼす他の要因も検討する。万一、新規飼料でも慢性的Mg欠乏マウスと同様の心血管機能の低下が確認できない場合は、ラットによる実験を断念し、対象動物をマウスに変更し、計画していた実験を遂行する予定である。 mPTP開孔実験に関しては、予定より早く着手できたため、今年度に得られた結果を基に予定していた実験を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
目的としていた慢性的Mg欠乏ラットの心血管機能の低下が観察できず、その後に予定していたMg補充療法の検討が遂行できなかったため、予定より使用する実験動物の数が少なり、当該研究費が生じた。当該研究費は、新規飼料の作製およびミネラル分析の費用と実験動物代として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)