2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24614020
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
深澤 昌史 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (20238439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊原 隆三 長崎国際大学, 薬学部, 教授 (30127229)
野嶽 勇一 長崎国際大学, 薬学部, 講師 (30332282)
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Keywords | 脂質代謝 / 転写因子 / 乳酸菌生産物質 |
Research Abstract |
昨年度は、高スクロース含有資料により肥満モデルマウスを確立し、豆乳の乳酸菌代謝生産物質であるPS-B1摂取により内臓脂肪の増加が抑えられることを示した。今年度は同モデルマウスを用いて、脂肪重量以外のパラメーターの比較、および転写因子ChREBP等とこれらにより発現がコントロールされる各種遺伝子群の定量的解析により、PS-B1によるメタボリックシンドローム解消効果と、肝転写因子活性調節との関連を明らかにすることを試みた。 飼育終了時に分離した血清を用いて生化学的検査を行ったところ、血中総コレステロール量およびインスリン量は高スクロース飼料対照群で高値を示し、PS-B1摂取量依存的な軽減がみられた。 さらに肝臓より抽出した総RNAを鋳型としてcDNAを作成し、Real-time PCRを行った。β-アクチンを内部標準として、ΔΔCT法により各群のmRNA発現量を相対的に比較した結果、高スクロース飼料対照群では通常飼料群に比して、糖・脂質合成関連酵素のうち FASN、ACC1、ACC2およびL-PKの発現がmRNAレベルで1.8~4倍程度亢進していたが、PS-B1摂取により発現が抑制された。また、脂肪酸合成に関わるSREBP-1c 、コレステロール合成の律速酵素であるHMGRの発現に関しても、同様に高スクロースによる亢進とPS-B1による抑制がみられた。一方、FASN、ACC、L-PKの主要な転写因子であるChREBPは、高グルコース摂取による発現の亢進はみられず、PS-B1摂取によるわずかな発現抑制がみられたのみであった。 以上の研究結果により、PS-B1は高スクロース摂取肥満モデルマウスの脂肪蓄積と高コレステロール、高インスリン血症に対して改善効果を示し、脂質合成系遺伝子発現を抑制するが、その機序は少なくともChREBPの転写量抑制にはよらないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の研究成果において、乳酸菌生産物質が転写因子ChREBPを介した解糖・脂質合成を抑制する可能性が示唆されたため、今年度は機能性食品の実用化を最優先課題として、肥満モデルマウスを用いたin vivoの研究を主に行った。その結果はこれまでの初代培養肝細胞を用いた結果と矛盾しないものであり、主にChREBPによって転写がコントロールされる遺伝子群(FASN、ACC、L-PKなど)の発現抑制がみられたが、ChREBPの活性にどのように影響を与えているかが未解明である。また、グルコースの濃度に応じたChREBPの活性化メカニズムを明らかにしようとする分子生物学的分野での研究が遅れており、作成した各種組み換え体の評価をようやく行い始めた段階である。さらに、ドミナントネガティブChREBPトランスジェニックマウス作成計画においても、導入用ベクターの完成が遅れている。以上のことから、総合的には当初の目標に対して達成度が低いと言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスモデルにおいて高スクロース摂取による肥満をPS-B1が抑制する機序として、ChREBPの転写活性の抑制が含まれることが示唆されている。従って、培養細胞によるChREBPの活性化を高感度でモニターできるレポーターアッセイ系の確立が最優先となる。その他には、 1)ChREBPのN末端領域に結合する因子のTwo-hybridスクリーニングの継続。2)ドミナントネガティブChREBPトランスジェニックマウスの作成の継続。 という当初研究計画の目標達成に加え、 3)別の研究テーマで明らかになったPS-B1によるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)の軽減作用をふまえ、NASHとChREBPの関連の探求。4)ChREBP依存的に発現する遺伝子群において、培養細胞およびモデルマウスでのエピジェネティック制御とPS-B1摂取による影響の解析。 等の検討を行い、肥満モデルにおける代謝性疾患の乳酸菌生産物質による改善効果を多面的に明らかにしたい。また、これまでに蓄積した成果を論文として発表することが喫緊の課題である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
トランスジェニックマウス作成外部委託経費として70万円を計上していたが、ベクター作成の遅れに伴い、次年度へ繰り越すこととした。消費税等値上げにより見積額も70万円を超えることが予想されるため、当初計画より多い金額を計上している。 今年度までの計画と当初計画を比較して、比較的経費の安価な動物実験を前倒しで行い、分子生物学的実験は当初よりも遅れて最終年度での使用額が増える事が予想される。さらに、トランスジェニックマウスの外部委託費用を次年度計画に繰り越したことで、最終的には当初計画通りの予算執行が行われる見通しである。
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