2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24615002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大根田 修 筑波大学, 医学医療系, 教授 (30311872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 年晴 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50400677)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 再生医学 / 間葉系幹細胞 / サブタイプ / テーラーメイド細胞治療 |
Research Abstract |
間葉系幹細胞は骨髄・臍帯血・胎盤・脂肪組織・歯髄などさまざまな組織に存在しており、骨・軟骨・脂肪組織に分化する細胞と定義されているが、それだけにとどまらず、血管壁や肝細胞などにも分化する能力を秘めた再生医療に非常に有用な細胞である。しかしながら間葉系幹細胞は数が少ない上に特異的なマーカーが存在しないため、生体組織からの分離は難しい。さらに、間葉系幹細胞にはさまざまなサブタイプが有りヘテロな集団であること、由来する組織により性質が異なることなどが研究を難しくしている。 先の研究では細胞内部のアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を指標として、臍帯血由来間葉系幹細胞に機能的な間葉系幹細胞と機能的ではない間葉系幹細胞の、少なくとも2種類のサブタイプがあることを報告した。また、胎盤由来間葉系幹細胞は別のマーカーであるCD349を用いてサブタイプの分離に成功した。 上記報告を受けて、2つの異なる組織に由来する間葉系幹細胞にたいして実際にマーカーを指標として分離した間葉系幹細胞をマウス血管再生実験に用い解析を行なった。アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性の高い間葉系幹細胞は優れた血管再生能を持つことを臍帯血由来間葉系幹細胞で証明した。この結果について、異なる組織由来の間葉系幹細胞では異なる結果になることが予想される。今後、試料数増加を図り、実験を繰り返し行なうことにより、再現性を確認する。加えて、脂肪組織由来間葉系幹細胞では、ドナーの基礎疾患および投与されていた薬剤により、採取した間葉系幹細胞の性質に差が見られることが明らかとなった。異なる患者由来間葉系幹細胞の性質の差がテーラーメイド細胞治療に直結することから、この性質の違いを引き起こす原因遺伝子について探索を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、以下のことを計画した。 【研究計画】脂肪由来間葉系幹細胞の樹立:患者から脂肪組織の提供を受け、脂肪組織から効率良く間葉系幹細胞を樹立する方法を確立する。加えて、基礎疾患を有する患者由来脂肪組織から間葉系幹細胞を単離・培養を行なう。 【進捗状況】基礎疾患を有する患者からも、効率良く間葉系幹細胞の単離・培養ができた。具体的には、以下の解析を実施した。① 細胞形態、細胞表面マーカー(FACS解析)、細胞増殖能、細胞分化能を行ない、間葉系幹細胞であることを同定した。②分化細胞について、分化系列特異的な遺伝子発現解析を行なった。③機能性間葉系幹細胞の単離・同定をCD349およびアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を指標として単離した。④低酸素応答性について:低酸素応答転写因子HIFの発現解析を行い、加えてHIFの標的遺伝子発現解析を行なった。⑤大腿動脈閉塞マウスを用いた血管再生能の解析を、単離した機能性間葉系幹細胞にたいして行なった。 以上の研究進捗状況から察するに、「おおむね順調に進展している」。現在、基礎疾患を有する患者ごとの脂肪由来間葉系幹細胞を継続して単離・培養しており、基礎疾患ごとの間葉系幹細胞の特性について解析進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、基礎疾患を有する患者ごとの脂肪由来間葉系幹細胞を継続して単離・培養しており、基礎疾患ごとの間葉系幹細胞の特性について解析を行なう。 以下の2点について、主に研究を進める。 1.基礎疾患を有する患者の脂肪由来間葉系幹細胞は、健常者からの脂肪由来間葉系幹細胞と比較して、その増殖能において差が見られることが分かってきた。今後、サンプル数を増やし、同様な傾向が見られるか解析を行なう。加えて、両者の間葉系幹細胞の比較において異なる特性を引き起こす原因遺伝子について探索を行なう。この解析が進展し、原因遺伝子が同定された場合、疾患の症状との因果関係についてさらに詳細な解析を進める新規プロジェクトの立ち上げを考慮する。 2.歯髄組織間葉系幹細胞の単離・培養法を確立し、その発達段階に応じた特性をin vitroとin vivo実験により明らかにする。歯冠完成期、歯根形成期、歯根完成期の3段階に分類し、1)細胞形態、2)細胞表面マーカー、3)細胞増殖能、4)細胞分化能、5)分化細胞における分化系列特異的な遺伝子発現解析、6)低酸素応答性、7)大腿動脈閉塞マウスを用いた血管再生能の解析、8)機能性間葉系幹細胞の単離、を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該の残額は、平成24年度に、異なる基礎疾患を持つ患者からの脂肪由来間葉系幹細胞樹立に専念したためである。 平成25年度に行う、両者の間葉系幹細胞の比較において異なる特性を引き起こす原因遺伝子の探索に費用がかかるため、平成24年度の残額と併せて研究費を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)