2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト胚性幹細胞を用いた領域特異的な心筋分化誘導法の開発
Project/Area Number |
24615003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山内 香織 京都大学, 再生医科学研究所, 研究員 (50503653)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心筋細胞 / 分化誘導 / ヒト胚性幹細胞 |
Research Abstract |
ヒト胚性幹(ES)細胞を用いた正常発生に沿った心筋分化誘導モデルをもとに、心筋前駆細胞の単離同定を試みた。GSK3インヒビターとNoggin添加によって誘導した5日目の細胞集団について、242種の細胞表面マーカーをスクリーニングし、7つの候補マーカーを同定した。その中でCD140bおよびCD141の組み合わせで得られる3つの細胞集団の中で、特にCD140bhigh,CD141pos集団で心筋細胞が濃縮されることを明らかにした。CD49fおよびCD184の組み合わせで得られる2つ細胞集団においては、CD49fhigh,CD184neg集団からのみ心筋細胞が誘導されることを突き止めた。これらの結果から、分化誘導5日目の細胞集団中に心筋前駆細胞が含まれることを明らかにした。 次に、この心筋前駆細胞の多分化能性を検討するために、CAGプロモーターによってGFPを発現するヒトES細胞を用いて、CD49fhigh, CD184neg集団についてFACSを用いてシングルセルソーティングを行い、GFPを発現しない細胞集団の中で心筋分化を試みた。その結果、1GFP陽性細胞からの心筋分化誘導率は平均10%であり、そのうち心筋細胞だけが分化誘導されたケースは1.2%であった。このことは、CD49fhigh, CD184neg集団中に含まれる心筋前駆細胞は多分化能性を有していること強く示唆している。 また、心室筋を単離するためにMlc2v-mCherryヒトES細胞株を作成した。現在この細胞株を用いた分化誘導を行い、心室筋の分化誘導過程を追跡可能か検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、心筋細胞の追跡をより簡便にするために、心筋マーカーの1つであるMHC遺伝子のプロモーター下にGFPをつないだベクターを発現させたヒトES細胞を用いる予定であった。しかしながらこの遺伝子は、心筋発生過程では比較的遅い時期に発現が始まるため前駆細胞の追跡には使用しづらい。最近、オーストラリアのグループからNkx2-5-GFPヒトES細胞を作成したとの報告があり、申請者はこの細胞株を用いて実験を進めることにした。Nkx2-5は心筋発生の初期に発現が誘導される遺伝子であり、心筋前駆細胞の単離同定に必要不可欠な遺伝子である。実際に入手したNkx2-5―GFPヒトES株は、申請者の分化誘導で非常によい分化誘導効率を示し、またGFPの発現も内在性のNkx2-5遺伝子の発現と連動して発現していることから、この細胞株の使用により精度の高い結果が得られることを期待している。また、Nkx2-5-GFP;Mlc2v-mCherry株を作成中であり、この株を用いて前駆細胞の単離同定を試みる予定である。したがって、昨年度中に行う予定であった心筋前駆細胞のDNAアレイ解析による解析は、上記の細胞株を用いて本年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
先に述べたように引き続きNkx2-5-GFP;Mlc2v-mCherryクローンのスクリーニングを行い、心筋前駆細胞集団の単離同定を試みる。本年度前半には遺伝子発現解析を行い、心筋分化に必要な新規遺伝子の探索に取り組む。またマウスにおいて、ペースメーカー細胞の選択的分化誘導に効果的とされる新しい方法論が報告されており、ヒトES細胞への応用を試みる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度については、研究計画書に記載通りの研究費の使用を計画している。
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