2012 Fiscal Year Research-status Report
認知症高齢者介護支援技術の開発・導入における技術的・制度的課題の抽出
Project/Area Number |
24616004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
杉原 太郎 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 助教 (50401948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤波 努 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 准教授 (70303344)
森山 治 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (40322870)
森山 千賀子 白梅学園大学, 子ども学部, 准教授 (50341897)
曽我 千春 金沢星稜大学, 経済学部, 准教授 (20413239)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | assistive technology / 技術開発 / 技術導入 / 介護制度論 / 認知症介護 |
Research Abstract |
本年度は当初の計画通り,2012年7月7日と2012年8月26日に「社会福祉と情報処理」研究会の市民講座を開催した.この市民講座では,assistive technologies を介護現場に導入する際の視座である,(1)ATの特性に由来する課題,(2) 介護自体の文脈依存性の高さ,(3) 介護保険など制度面の3点のうち,特に(2)および(3)について検討した.介護制度論の専門家であり実務担当者でもある研究者1名と韓国の介護制度論研究者2名を招いた.この一連の市民講座で扱われた内容は,国の資金(社会保障費)不足,またそれを埋め合わせるために採られることになった政策,地域におけるつながりのあり方など非常に幅広いものであった.これらの市民講座は,報告書として出版する予定である. 市民講座で出された議題については,研究チーム内でも議論を重ねた.その結果,現行の制度は,定められた枠以内で提供できるサービスをいかにきちんと果たしたかによって報酬が受け取れる.手続きをしっかりと守ることは重要ではあるが,そればかりが強調されると現場での創意工夫は生まれにくいことや,情報技術や機械技術が持ち込まれたとしても省力化の目的のみに用いられる可能性が高くなることが課題として挙げられた.機械やソフトウェアが代行できる作業はそれらに任せて,人にできること(例えば、コミュニケーションを中心とした観察能力)を強化しようとしたとしても,それに対する対価が得られる仕組みはないことや,観察能力強化や知識共有といった介護の知的労働を支援する技術を導入しようとしたとしても,それらに対する支援は現状期待しにくいことなどが技術導入上の課題とされた. これらの結果の一部をまとめ,国内外の学会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
介護の中でも特に対処が難しい認知症に焦点を当て,その介護者を支援する情報技術(assistive technology)の開発・導入において現場調査を元に好影響および悪影響の両面から整理することを目的した研究である.申請時の計画では,調査を行った後に議論をするとしたが,順序を入れ替え (2) 介護自体の文脈依存性の高さ,および(3) 介護保険など制度面の課題を検討することにした.チーム外から招いた専門家3名との意見交換の結果から,主に技術導入時に生じる可能性が高い問題について理解が深まった.現場の人々から聞き取るだけではわからない点について,専門家のメタな視点による指摘を得られたことは大きな進展であった. また,チーム内での情報交換により,調査対象をグループホームからより大きな法人とすることでこれまでには見えにくかった課題が発見できるのではないかと結論づけられ,東京地区にあるA医療法人にコンタクトを取り,調査が実施できる見込みを得た.本年度発見された課題について,A医療法人における調査を通じて検討を重ねていく予定である. 本助成金獲得までに得ていたデータと議論により得た知見をまとめて,国内外の学会で発表も行った(招待講演1回,学術雑誌論文1本,book chapter 1本,査読のある国際会議3 回,国内会議2回).さらに,現在学術雑誌に1本投稿中である.目的を達成するための道筋はつけられており,かつ学術的な成果も発表しており,市民講座で成果のアウトリーチも実施している.以上の点から,本研究の初年度の成果は,おおむね順調とした.
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Strategy for Future Research Activity |
まず研究を開始するに当たっては大学に設置された委員会により倫理審査を受ける.25年度の調査は医療法人が保有する介護施設から取り掛かる.調査初期段階では,介護者の意識や意欲について深く掘り下げることが重要であるため,半構造化インタビューを採用する.この時,併せて入居者の行動変容についても問うておき,追跡調査の際に比較できるようにする.さらに,システムが利用されている現場に参与し,介護の様子を記録する(参与観察).併せて,ビデオによりシステム利用の様子を録画する(ビデオ観察). インタビューも,介護者を対象とする.システム利用時の印象や行動変化,意欲の変化を中心に聞き取る.得られたデータは,質的データ分析用ソフトウェアを利用し,Modified Grounded Theory Approach(M-GTA)の方法論に沿って分析する.さらに,可能であれば,財務諸表や勤務表,介護記録等も閲覧させていただき,分析対象とする. 得られた分析結果については,メンバー間で共有し,介護保険など社会制度からみた適切性,介護方法としての適切性,情報技術の限界の各観点から開発・導入に検討すべき事項を議論をする.その際,まず発散的に思考をし,その後KJ 法およびM-GTAを用いて収束思考を行うことで,可能な限り検討項目が漏れないように努める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度の研究費は,主に設備(調査用のパーソナルコンピュータ)と旅費で用いることにする.研究代表者が研究機関を異動したことにより,申請時には検討していなかった予算が必要になった.異動先で研究が実施できるようパーソナルコンピュータが必須である.また,岡山から東京地区,さらに石川から東京地区に異動する旅費が必要であるため,研究費を旅費に充てることにする.旅費の一部は,学会発表のためにも使用する. また,制度論的検討,あるいは最新の技術動向調査を行うためには文献が必要となるため,研究費は文献・資料購入費用としても使用する.これは,全研究者に共通な費用である.この額は前年度実績と同等と見積もっている.昨年度と同様に市民講座を開催するための会場費および講師謝金も必要である.こちらも,額は前年度実績と同等と見積もっている. 研究分担者により生じた未使用額は,調査のキャンセルによるものである.次年度は予定されていた調査を実行する予定であるので,そのための研究費として利用する.
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[Presentation] Enhancing Layers of Care House with Assistive Technology for Distributed Caregiving2013
Author(s)
Sugihara, T., Fujinami, T., Jones, R., Kadowaki, K. and Ando, M.
Organizer
AAAI 2013 Spring Symposia
Place of Presentation
Palo Alto, CA, USA
Year and Date
20130324-20130327
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