2012 Fiscal Year Research-status Report
教育実践のアクチュアリティとケア的意味生成に関するフィールド心理学的研究
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24616006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
本山 方子 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (30335468)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教育実践 / アクチュアリティ / ケア / フィールド心理学 / 意味生成 |
Research Abstract |
本研究では、学校教育の実践におけるアクチュアリティに着目し、実践のケア的意味の生成過程を明らかにする。①教師の行為には、専門的知識や教育経験、自己のあり方がいかに反映され、「ケア」的意味が生成されるのか、②ケア的意味への着目は教育実践の解釈可能性を開くことになるか、という問題をフィールド心理学の手法で追究する。 1.教育実践のフィールド研究 ①幼稚園における対人葛藤への対処に着目し、3歳児クラスのフィールド調査を実施した。また、4歳児の対人葛藤場面を分析し、非当事者の幼児が介入する意味を検討した。他児が直面した対人葛藤について、4歳児は要解決事案として認識するものの、介入は公平性をもつとは限らず、解決に至らないこともあった。仲裁は葛藤を解決に導く、公平で効果的な介入であるが、遂行は社会的スキルをもつ一部の幼児にとどまった。 ②小学校において、高学年同士の交流活動のフィールド調査を実施した。また、幼稚園5歳児、1年生、2年生の3学年による幼小交流活動の相互作用を分析した。児童と園児は、純粋な相互援助のみの関係にはない。それぞれが、チームとしての課題の遂行と、チームの関係性維持と、自らの参加欲求の充足の、同時成立を図り、巧みに交渉を行っていた。 ③公立高校の英語科の授業を対象にアクションリサーチを行った。実践記録の採取や授業カンファレンスを行った。生徒には、学習スタイルや授業参加ふり返りの質問紙調査を実施した。 2.教育実践の意味生成に関するフィールド心理学的研究:フィールド心理学における「構成概念は不可視性や非実在性を前提としながら、行為者の観念の実在性や素朴な直観から逃れられない」という問題、すなわち「構成概念の措定のゆらぎ」あるいは「観察可能な現象の絶対視」の二律背反的な原理を検討した。また、教育困難校の教師の実践知や情動について、アクチュアリティの生成の側面から検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.教育実践のフィールド調査:計画していた3件のフィールド調査が順調に実施された。加えて、幼稚園4歳児の対人葛藤場面における非当事者の介入と協同的解決の検討や、幼小交流活動の相互作用分析を緻密に進めることができ、子ども間のケアに関して成果を発表することができた。 2.教育実践の意味づけに関する調査:上記1の調査協力校園において、教師にビデオ映像を見てもらい、実践時の印象との違いも含めてインタビューを行う予定であったが、ビデオ映像の視聴が省かれ、インタビューのみにとどまった。 3.フィールド心理学としての交差的分析の試行:交差的分析の準備として、分析で使用する基礎資料を作成する予定であったが、至らなかった。 4.教育実践の意味生成に関するフィールド心理学的研究:平成24年度は、当初、調査に比重を高く置いていたが、予定より早く、ケア論やアクチュアリティ論、フィールド心理学の原理的考察に着手することができた。 以上、フィールド調査は計画通り順調に進展したが、教師インタビューは計画を縮小し、交差的分析の資料準備については遅れている。一方で、フィールド調査の分析では予定以上の成果が得られ、また、フィールド心理学の原理的考察等については先取りして進められた。総じて、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.教育実践のフィールド調査 ①奈良女子大学附属幼稚園におけるフィールド調査:平成24年度から継続して幼稚園にてフィールド調査を実施する。子どもの対人葛藤場面に対する、非当事者の幼児の介入と協同的解決に関する研究を進める。発達的変化をみるために本年度からの追跡調査とし、平成25年度は4歳児クラスを対象とする。 ②奈良女子大学附属小学校におけるフィールド調査:【調査1】子ども間のケア的関係形成については、計画を変更して、高学年による異学年交流活動ではなく、平成24年度に研究成果をあげた幼小交流活動を対象にフィールド調査を行う。2年生のクラスを観察拠点として、ケアされる側からケアする側の立場に立つ2年生の発達的変容についても調査、検討を行う。【調査2】総合的学習の活動を対象に、子どもの発話や行動、教師の介入や働きかけ等について観察調査を行う。調査は週1回の頻度で観察を行い、毎回、授業直後に教師行為の省察に関してインタビューを実施する。また、学期末、年度末に、期間を省察する教師インタビューを実施する。下記2の教育実践の意味づけに関する調査の基礎資料とするため、数年前に調査協力者であった教師の学級を対象とする。 ③高等学校における英語科授業実践の調査:兵庫県公立高校の英語科の授業を対象に、平成24年度に引き続きアクションリサーチを行う。 2.教育実践の意味づけに関する調査:【調査2】については、同じ教師の数年前の実践についてビデオ・カンファレンスを行い、省察資料を得る。再省察の調査においては、自己の成長や教育経験を含めてインタビューを行う。 3.フィールド心理学としての交差的分析の試行:平成24年度で遅延した準備を進めるとともに、小学校における【調査2】について、交差的分析用の資料作成を進め、一部、分析を試行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(10 results)