2013 Fiscal Year Research-status Report
人間関係のケア学としての紛争解決学の日本における確立のための基盤研究
Project/Area Number |
24616007
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
石原 明子 熊本大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (50535739)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥本 京子 大阪女学院大学, 国際・英語学部, 教授 (70321073)
松井 ケティ 清泉女子大学, 文学部, 教授 (80238930)
|
Keywords | 紛争解決 / 修復的正義 / 原発災害 / 平和構築 / 水俣 |
Research Abstract |
本研究は、研究1,2,3からなる。研究1「紛争解決学のマッピングとショーケース作成」については、紛争解決学の各手法(コンフリクト・トランスフォーメーション、トランセンド法、修復的正義、コンセンサスビルディング、平和教育など)に精通した研究者が一度に会する形で研究会を行い、様々な手法について一覧できる出版物としてまとめていくことを確認した。 研究2「日本文化適合的紛争解決モデルの検討―アジアとの比較検討から」については、来年度以降のアジア各国での文化的・制度的適合については、特に中国での来年度の調査に向けての準備を行ったほか、タイの研究者との議論を通じて、特にプロセス指向紛争解決やCurleモデルによる紛争解決の日・タイ比較の検討を行った。 研究3「臨床フィールド研究ー原発災害後の家庭や地域における人間関係の崩壊に関する紛争解決学の視点からの分析とアクションリサーチ研究」については、(1)原発災害被災地において対話実践をされている方々との共同研究会を開き、方法論や成功と課題に関する論点整理を行い、(2)福島県いわき市をフィールドにした紛争解決学講座の実施によるアクションリサーチ、(3)原発災害被災地のコミュニティリーダーに向けた紛争変容・平和構築学の知見からの水俣スタディ・交流ツアープログラムの実施によるアクションリサーチを行った。原発災害被災地への紛争解決支援に関しては、内戦地でのコミュニティの和解モデルの適用を考えていたため、ナイジェリアのジョス地域にフィールド調査を行い、参考とした。 本来、研究2は、研究3と独立した研究として行うはずであったが、研究3において、日本社会におけるコンフリクトのありようとその解決支援のフィールド研究を行うことで、結果的に研究2の日本文化適合的紛争解決モデルを考えざるを得なくなり、研究3の結果が研究2に回答を与える形となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、研究3に時間が多くとられ、研究1,2特に研究2は遅れ気味となってしまった。 研究1については、研究費を効率的に活用するために、連続研究会方式で行うよりも、研究者が一度に会して議論を行う形式で行うこととしたが、各分野の第一線の研究者を集めようとしたために、全員が多忙で日程がなかなか合わず、予定よりも少ない回数の研究会しかすることができなかった。 研究2については、主に研究3に時間が費やされ、遅れ気味になったほか、研究2のフィールドとして想定していた北東アジアからの紛争解決の研究者や実践家が一堂に会するNARPIの開催時期が、研究3の参考とするためのナイジェリアのジョス地域へのフィールド調査と重なってしまい、参加できなかったことがある。 研究3については、本年度から本格的にフィールド調査やアクションリサーチを開始することが出来たが、結果的に、この研究3では、研究2の日本文化適合的紛争解決モデルの検討ということを考えざるを得ず、研究3の推進が結果的に研究2への一つの回答をもたらすこととなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であるため、遅れている部分の研究の推進と、研究成果の取りまとめが課題となる。 研究1については、紛争解決学の手法や課題別の研究者からの知見を一覧できるように、本としてまとめていく予定である。 研究2については、アジアのいくつかの国の研究者と共同して、西洋型紛争解決モデルを非西洋社会特にアジアに適用するときの課題と可能性についての共同シンポと比較研究を行う。 研究3は、Curleモデルに基づいた紛争変容支援プロジェクト(アクションリサーチ)の結果の分析と、原発災害被災者を対象とした対話支援プロジェクトの比較研究の結果をまとめる。原発被災者の紛争解決支援のためには、対話支援ももちろん重要であるが、それ以外の有効な手法もあることがわかってきた。それについてのアクションリサーチの推進と、結果のとりまとめを行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は研究1,2,3からなるが、平成25年度は、研究1,2の進捗が遅れたために、次年度使用額が生じた。 研究に遅れが生じている研究1,2の遅れを取り戻しつつ、研究全体の執行と、研究最終年度としての研究全体のとりまとめを行っていく予定である。研究1については、研究分担者らを含めた紛争解決学の手法の第一人者を集めての研究会への費用、研究2についてはアジアの研究者との共同研究の費用、研究3については、原発災害被災地との旅費として使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)