2012 Fiscal Year Research-status Report
百寿者ケアに関する日韓融合研究:長寿文化と超高齢期のケア関係
Project/Area Number |
24616009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
金 恵媛 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (60405529)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 百寿者 / 日韓比較 / 健康長寿 / 大衆長寿社会 / ケア関係 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日韓の百寿者及びその予備群の日常世界を多面的に捉え、健康長寿並びに超高齢期ケアのあり方について考究することにある。研究成果の波及的効果として、大衆長寿社会を生きる当事者認識が幅広い世代・領域において共有される社会の実現を目指す。 研究初年度に当たる平成24年度の研究計画は、百寿者を取り巻く社会状況及び調査研究のレビュー、インタビュー調査の準備及び実査の開始である。取組み結果は以下の通りである。 インタビュー調査では、多数の百寿者についてインタビューを実施、ネット発信を行っている「にっち倶楽部」のインタビューを行った。それを踏まえて、韓国では、慶北大学校の研究協力を得ながら慶尚北道の4地域とソウル特別市、大田広域市に在住する超高齢者に対するインタビューを実施した。日本では山口県、福岡県、兵庫県、そして東京都において同様の調査を行った。 日韓比較の観点からみると、両国のケア環境から多くの類似点が観察された。人口高齢化や高齢期の長期化を個別的かつ社会包括的な課題として受けとめる傾向が認められた。そのため、大衆長寿社会を現役として生き抜くためのライフデザインや健康習慣、社会環境づくりが強調され、課題解決のための認識の共有も図られつつある。一方、百歳以上人口の集団規模面での差異が大きいうえに、現在の百寿者がもつ世代特性、さらには百寿者研究の横断的・縦断的な広がりにも明らかな差異が認められた。百寿者研究の面では、健康長寿のエリートとされる百寿者の要介護率上昇の問題、研究結果の普遍化の難しさ、それゆえに問われる研究成果の還元のあり方についての検討等が今後の課題として注目された。 以上の研究結果から、健康長寿に到達するライフコースの開発・普及のためには、百寿者のみならず百寿予備群に対する体系的な検証と補強が必要であると認識し、次年度の重点課題として設定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた文献考察(百寿者に関する研究レビュー、「100歳時代」到来に対する個別的かつ社会的動向等)やインタビュー調査をスタートできた。インタビュー調査については、韓国の慶北大学校関係者の研究協力によって当初の計画以上に進展していると考える。 ただし、超高齢者(インタビュー対象者のうち承諾の得られた方)の「いま、ここ」を伝える「センテナリアンAgora」(仮)の開設については、平成24年度に一部開設を予定していたが、平成25年度に見送った。理由としては、関係者による発信内容や形式の確認、セキュリティ管理の強化等により慎重を期すべく、敢えて、時間をかけて取り組むことにしたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究成果並びに最終年度までの目標達成のための順当な遂行案として、以下の通り平成25年度の研究計画を立てた。 超高齢者及びその家族を対象とするインタビュー調査を日韓で継続的に実施する。後述の質問紙調査の結果と併せて、超高齢者のケア環境に注意を払いながら、両国の高齢層の世代特徴、ケア当事者間の関係、社会との接点等、超高齢期生活の全体像についての検討を行う。 つぎに、百寿者予備群に対する日韓米共同研究に参画する。各国における70歳代、80歳代、90歳代の各100名に対して質問紙調査を実施する。そして、質問紙調査対象者のうち研究協力の承諾が得られた者を対象にインタビュー調査を行う。調査項目としてはQOLを含む生活実態とケア関係、健康長寿の秘訣(習慣)等である。 最後に、超高齢者の「いま、ここ」を伝える「センテナリアンAgora」(仮)をスタートさせる。健康長寿のための心がけ、長寿文化が主な内容となる。これは、研究成果の社会還元と、大衆長寿社会を生きる当事者認識の低下を招く種々の壁(年齢や関心領域、国境等)を超越する、社会的課題としての幅広い共有を具現化することにねらいがある。 昨年度来の研究成果について、多様な機会(国際老年学会(IAGG)、アジア太平洋アクティブ・エイジング会議(ACAP)、東アジア高齢化研究専門家会議等)を通して発信し、国際的な学術交流と連携、研究の社会的還元に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日韓におけるインタビュー調査のための旅費と、研究協力者(調査結果の整理等)に対する謝金、「センテナリアンAgora」(仮)の開設・運営費、そして研究成果の公開に関わる費用として主に使用する。
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Research Products
(3 results)