2013 Fiscal Year Research-status Report
ケア学への提言ー街ぐるみ認知症相談センターの実践から
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24616016
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
野村 俊明 日本医科大学, 医学部, 教授 (30339759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 伸 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40161492)
山本 卓 法政大学, 法学部, 教授 (40434203)
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Keywords | 認知症ケア / 利用者ニーズ / ケアする側(ケアラー)のニーズ / 地域連携 / 多職種連携 / 認知症ケアの専門性 |
Research Abstract |
研究活動I:利用者アンケートの内容を来談者への聞き取りをもとに街ぐるみ認知症相談センター勤務の臨床心理士と討議を重ねて平成25年1月末に素案が完成した。3月16日に開催した市民公開講座で試行的にアンケート調査し約250のサンプルを得た。このデータを解析して項目分析を行ない、利用者のニーズを検討した論文を作成した。目下投稿中である。 研究活動II:今年度も専門職向け公開講座を3回実施した。介護福祉士・看護師・ケースワーカー・医師などの専門職がどの会も約80名参加した。講師と内容は次の通りである。第1回遠藤英俊(国立長寿医療研究センター)・認知症と地域包括ケア。第2回野村俊明(日本医科大学)・高齢者の精神医学~認知症、せん妄、うつなどについて。第3回角野孝一(川崎市健康福祉局)・川崎市の認知症施策について、北村伸(日本医科大学)・認知症疾患医療センターの取り組み、根本留美(街ぐるみ認知症相談センター)・認知症の家族支援。 研究活動III:地域で認知症患者の診療にあたるかかりつけ医を対象とする「かかりつけ医ミーティング」を2回開催した。開業医を中心に7-10名の医師が参加し活発な討論が行われた。神経内科・精神科だけでなく一般内科・脳外科・整形外科・訪問診療医など多様な専門の医師が参加した。参加者は増加傾向にあり毎回参加するコアメンバーが形成されつつある。 研究活動IV:共同研究者である山本を中心にケア学に関する理論研究を行った。認知症ケア学会等の学会で発表を行うとともに各地で実践に取り組む人と交流を深めた。11月には野村と山本がスウェーデンに視察を行い当地の認知症ケアの実際に関する見聞を広めるとともに当地の専門家との交流の機会を持った。 研究活動V:共同研究者である北村が引き続き「認知症対策街づくり検討委員会」に参加して川崎市中原区をモデルとする事業を推進した。今年度より野村も会議に参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的には、「(2)おおむね順調に進展している」と評価している。 研究活動I・II・IIIに関しては、街ぐるみ認知症相談センターの活動を行いながら、この一年着実に作業を進めてきた。研究活動Iについては、利用者アンケートがすでにほぼ完成しており、今後は利用者ニーズを把握する研究が進んでいくものと考えている。認知症相談にくる当事者・家族らのケアに関するニーズを把握することは本研究の要であり、今年度も最優先課題として位置付けている。研究活動IIは、街ぐるみ認知症相談センターが設立以来6年以上にわたり開催してきたもので、顔なじみの参加者も多く、日常的な交流が行われている。研究活動IIIは昨年度からの取り組みであり、医師をまきこんだ地域連携を行うために重要な企画である。本企画も2年目に入り、参加者が少しずつ増えつつあり、毎回参加するコアメンバーが形成されつつある。医師とコメディカルの連携の共同討議の場をどのように設定するかが今後の大きな課題であると考えている。 研究活動IVについては、スウェーデン視察によって貴重な経験をすることができた。わが国とスウェーデンの認知症ケアの仕組みの違いの根底には「認知症という病気の捉え方」や「コメデイカルスタッフの権限・役割と責任」などのテーマがあることを改めて認識した。 国内では、認知症ケア学会や認知症予防学会をはじめとして多くの学会での研究発表を行った。 研究活動Vは、「認知症街づくり検討委員会」の活動が施策を具体化する段階に至っておらず明確な展望を持ちにくい現状が続いている。武蔵小杉病院が川崎市から認知症疾患医療センターに認可され、行政・地域包括・医師会・看護協会などが一堂に会する機会が増えており、専門職向け公開講座に川崎市役所の担当者に講師として出席して頂くなどの交流促進ができた。また、センター見学会を開催したところ多数の参加者を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
研究活動I:これまで行ってきたアンケート調査の結果と日々の相談活動で蓄積した経験を総合して利用者ニーズについてとりまとめを行う。 研究活動II・III:専門職向け公開講座・かかりつけ医ミーティングを継続する。地域連携の促進のためには、特に後者を充実させていくことが重要であると考えている。 研究活動IV:昨年度に引き続き認知症ケアの先進国とされている北欧を視察することを計画している。また認知症ケア学会等の学会には引き続き参加して発表を行うとともに交流を深める予定である。平成26年9月に開催される認知症予防学会で「認知症ケア」に関するシンポジウムを研究代表者の野村が企画・司会を担当して行うことが決定している。分担研究者の山本がここで「ケア学」についての理論的なまとめと展望を講演することになっている。 研究活動V:「認知症街づくり検討委員会」に引き続き参加する。また、武蔵小杉病院認知症疾患医療センターの活動を通して行政や他団体との交流促進を目指していく。26年度も地域住民が自発的主体的に行う活動を充実させたい。 今年度は、当科学研究費研究の最終年度にあたるため、これまで多面的に行ってきた認知症ケアに関する活動からえられた知見を「ケア学」というくくりの中でまとめる作業を行なう段階に入る。すでに文中に述べたように、平成26年9月に開催される第4回認知症予防学会にて「認知症ケアの専門性」をテーマにシンポジウムを開催することになっており、このシンポジウムの成果を受けて本研究のまとめを行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外視察に同伴する予定だった研究協力者が参加できなかったため かかりつけ医ミーティング(200,000円):2回実施、講師謝礼、交通費、食事代、郵送費。学会発表(200,000円):2回(2名)、旅費交通費、参加費。国内視察(200,000円):1回4名、旅費交通費、日当、資料。国外視察(600,000円):1回2名旅費交通費、日当、資料。謝金(200,000円):データ分析、テープ起こし、翻訳、研究補助。消耗品(200,000円):研究備品、文房具。会議費、書籍など(100,000円)を予定している
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[Presentation] 川西智也, 根本留美, 稲垣千草, 並木香奈子, 野村俊明, 北村伸.:もの忘れをめぐる高齢者とその家族の相互作用の問題に対し、双方の思いの代弁を通して関係調整を行なった事例2013
Author(s)
川西智也, 根本留美, 稲垣千草, 並木香奈子, 野村俊明, 北村伸
Organizer
第3回日本認知症予防学会
Place of Presentation
新潟
Year and Date
20130927-20130928
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