2012 Fiscal Year Research-status Report
地域における介護者支援システムの構築に関する研究-介護殺人の裁判事例の分析から-
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24616019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
湯原 悦子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (60387743)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 介護者支援 / 介護殺人 / 介護者アセスメント |
Research Abstract |
介護殺人事件の裁判調書の収集と分類について、1998年~2012年までの事例を調べ、研究対象とする事例の抽出を終えた。その結果は介護者のうつと介護殺人に注目した論文としてまとめ、2013年1月に発刊された老年社会科学誌34号4巻において、湯原悦子「介護うつ 認知症介護における介護者支援のための課題;司法福祉の立場から」という内容で発表を行った。また、2013年6月に行われる第14回日本認知症ケア学会大会におけるワークショップ3「高齢者虐待を発見する」において、介護者のうつと介護殺人をテーマに報告を行う予定である。 海外の介護者アセスメントの学習、介護者支援検討会での検討においては、認知症の人と家族の会愛知県支部のメンバーの協力を得、イギリスを中心に海外の介護者アセスメントについて調べ、その意義と課題について確認した。それと並行し、介護の当事者と保健医療福祉の専門職から構成される「介護者支援検討会」を組織し、介護者アセスメント(日本版)の作成に向け、検討を開始した。具体的には、介護者アセスメントについて述べた文献や自治体のホームページを検索し、介護者アセスメントの具体的項目や構成を考えた。また、海外の学術誌に掲載された論文を参照して介護者アセスメントの意義と課題を明らかにするとともに、イギリスの自治体や介護者支援センターの担当者等に問い合わせ、介護者支援やアセスメントに関する現実の運用課題について確認した。そして、これらの成果をもとに介護者アセスメント(日本版)の作成に着手した。このプロセスについては実践報告として論文にまとめ、日本認知症ケア学会誌に「介護者セルフアセスメントシートの開発」というタイトルで投稿した。現在、修正後に掲載可との評価をいただいており、今年度中に掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では介護者アセスメントの検討に先立ち、介護殺人事例の検討を行う予定であったが、認知症の人と家族の会愛知県支部の協力を得ることができたので、現在は介護者アセスメントの作成を優先し、介護殺人事例の裁判事例の収集は平成25年度に行うよう、予定を変更した。今年度、裁判事例の収集を集中して行う。また、介護者を対象にした実態調査についてはすでに一つの自治体で介護者調査を行うことが決まっており、研究はほぼ順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は介護殺人事件の裁判調書の収集と分類、分析を中心に進めていく。刑事確定訴訟記録法に基づき、介護殺人の裁判調書(検察庁や裁判所において加害者が行った供述内容や判決文)を検察庁に閲覧請求し、必要な文書の収集と判決文を入手する。そして収集した介護殺人の事例を分析し、加害者(介護者)は何に困っておりどんな支援を求めていたのか、援助者はどのような支援を行ったのかについて確認する。もし介護者が求めていた支援と援助者の行った支援との間にずれがあるようであれば、なぜそれが生じたのかについて検証する。また、うつ状態の介護者については、実際に何か具体的な支援は行われたのか、もし行われたのであれば、その支援の内容と効果について確認する。得られた分析結果については介護者支援検討会の場で検証し、なぜ事件に至ったのか、同様な事件を未然に防ぐために保健医療福祉領域の専門職は何ができるか、地域でどのような支援システムを構築することが必要かについて検討する。 介護者アセスメントについてはすでに試作版を作ることができたので、効果検証に移りたい。協力をいただく認知症の人と家族の会のメンバー、そして小牧市のケアマネジャーを対象に、作成した介護者アセスメントシートの効果検証を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も予定通り、研究費は介護殺人の判例入手のため裁判所や検察庁を訪問する国内旅費、データ入力謝金などに支出する。国際学会への参加費用として計上していた予算は英文雑誌への論文投稿に向け、翻訳費用として用いる予定である。 昨年度は予定を変更し、今年度と次年度に予定していた介護者アセスメント作成を行ったため、国内旅費の支出が予定より下回った。今年度、余った費用は裁判所や検察庁を訪問する旅費、そして論文の英訳費用に充当する予定である。
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