2013 Fiscal Year Research-status Report
地域における介護者支援システムの構築に関する研究-介護殺人の裁判事例の分析から-
Project/Area Number |
24616019
|
Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
湯原 悦子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (60387743)
|
Keywords | 介護者支援 / 介護殺人 / 介護者アセスメント |
Research Abstract |
平成25年度の研究成果としては、2013年6月に行われた第14回日本認知症ケア学会大会におけるワークショップ3「高齢者虐待を発見する」において、介護者のうつと介護殺人をテーマに報告を行った。また、2013年9月に行われた第61回日本社会福祉学会において、個別報告「高齢者が被害者となる介護殺人事件の実態 -海外における事件の動向と防止に向けた示唆-」を行った。また、論文では、「介護者セルフアセスメントシートの開発」が日本認知症ケア学会誌 12巻2号、「介護うつ 認知症介護における介護者支援のための課題;司法福祉の立場から」が老年社会科学誌34号4巻、「家族介護者支援の理論的根拠」が日本福祉大学社会福祉論集 130号に掲載された。 介護殺人事件の裁判調書の収集と分類については現在、愛知の検察庁が扱った事例のなかに「犯罪心理鑑定」が行われたものがあり、これは司法福祉の視点からも重要と思われるため、現在、事例分析に取り組んでいる。その結果は2014年11月に早稲田大学で行われる日本社会福祉学会第62回秋季大会で「介護殺人裁判における判決前調査の意義」(仮題)として発表し、論文投稿も行う予定である。なお、判決前調査についてはアメリカでの実践が進んでいるため、介護殺人に対してどのような判決前調査やソーシャルワーカーの関わりがなされているのかを調べる目的で2014年7月に行われるアメリカ司法福祉学会に参加し、実践者へのヒアリングを行う予定である。 介護者アセスメント(日本版)については作成過程とその結果について、認知症ケア学会誌に「介護者セルフアセスメントシートの開発」として論文が掲載され、シルバー新報(2013.3.1)にもニュースとして掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大の懸念であった検察庁からの事例収集について、富山検察庁を除き、許可を得ることができたので分析の目途が立ち、研究の方向性も見えてきた。外部の協力を得なければならない調査は平成25年度でほぼ終了したため、平成26年度は予定通り、分析と研究結果のまとめに専念することができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は研究成果の公表とまとめを行う。研究は介護殺人事件の分類と分析を中心に進めていく。収集した裁判調書(検察庁や裁判所において加害者が行った供述内容や判決文)をもとに、加害者(介護者)は何に困っておりどんな支援を求めていたのか、援助者はどのような支援を行ったのかについて分析、支援の課題を抽出し、論文にまとめる。また、収集したほとんどの事例について、加害者や被害者にうつ状態がみられたが、同時にうつに対する支援はほとんどなされていないことが判明したため、平成26年度は精神医学と社会福祉学の立場から介護に伴ううつ状態と拡大自殺の危険について調べ、介護者のうつに対する注意点や介入のポイントについて明らかにする。そして、介護者支援の立場から保健医療福祉領域の専門職は何ができるか、地域でどのような支援システムを構築することが必要かについて検討する。研究成果については平成26年6月に大阪で行われるアジア犯罪学会(国際大会)、11月に東京で行われる日本社会福祉学会の場で発表する。 介護者アセスメントについて、続く課題は開発したシートの効果検証である。2013年4月から5月にかけ、愛知県内のA自治体で効果検証の研究を行うことができたため、その結果を実践報告としてまとめ、日本認知症ケア学会誌に「介護者セルフアセスメントシートの効果検証」というタイトルで投稿した。現在、査読結果を待っているところである。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
検察庁での記録閲覧に数日かかることを予定していたが、すべての事例の閲覧が1日で終了し、かつ、書類のやりとりだけで資料の入手可な検察庁もあったことから旅費の支出を予定より抑えることができた。なお、国際学会での発表を平成26年度に行うことにしたため、海外への渡航費がかからなかったこと、論文の英訳も平成26年度以降に繰り延べたことが次年度使用額の生じた主な理由である。 未使用額についてはアメリカ司法福祉学会への参加費や旅費・滞在費、そして論文の英訳費用等に充当する予定である。
|