2014 Fiscal Year Annual Research Report
地域における介護者支援システムの構築に関する研究-介護殺人の裁判事例の分析から-
Project/Area Number |
24616019
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
湯原 悦子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (60387743)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 介護者支援 / 介護殺人 / 介護者アセスメント |
Outline of Annual Research Achievements |
1)介護殺人事件発生のプロセス解明 日本では介護殺人が起きても加害者の個人的資質が問われ、社会的な課題として検証がなされない。介護者支援の進んでいるイギリスでは介護殺人を社会的に解決すべき課題として位置付ける。日本で過去16年間に生じた介護殺人625件を分析した結果、加害者も60歳以上の事件が7割弱を占めるなど、自らの体調不良が将来への絶望につながり、事件の引き金になっていることが分かった(湯原悦子(2014)「日本における介護殺人事件の実態と予防に向けた課題」第6回アジア犯罪学会 口頭発表)。かつ、そもそも介護を担う能力に欠けている者が介護を担わざるを得ない状況に追い込まれていることを確認した(湯原悦子(2015)「介護殺人事件の裁判における社会福祉専門職の関与に関する研究」56巻1号)。 2)うつ状態の介護者へのアプローチ 介護者自身を対象にした支援が事件の予防に不可欠である。事件が生じる背景には認知症による介護者の混乱やうつがあり、家族介護者の心理ステップに沿った働きかけが不可欠である。それを可能にするため家族介護者に対して支援を行う根拠について整理した(湯原悦子(2014)「家族介護者支援の理論的根拠」日本福祉大学社会福祉論集130号)。 3)介護者アセスメント(日本版)の開発と効果検証 湯原他が開発した「介護者セルフアセスメントシート」をA市で効果検証をしたところ、開発時に想定した諸効果は「ケアプランを見直すきっかけになった」を除き、アンケート回答者の7~8割に認められた。また、介護する相手との関係、自身の生活への支障、自分の時間を持つことができているかという3つの項目を用いることで、このシートは支援が必要な家族介護者を早期に発見するツールとして活用できることを示した(湯原悦子他(2014)「介護者セルフアセスメントシートの効果検証」日本認知症ケア学会誌13巻3号)。
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