2012 Fiscal Year Research-status Report
親の離婚を経験した子どもたちの心理学的理解とケアのあり方に関する研究
Project/Area Number |
24616022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tezukayama Gakuin University |
Principal Investigator |
藤田 博康 帝塚山学院大学, 人間科学部, 教授 (80368381)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心理的ケア / 親の離婚 / 子どもの不適応 / リジリエンス / カウンセリング |
Research Abstract |
研究初年度に当たる当該年度においては、1.両親の離婚を経験した子どもたちの心理的苦境やそのプロセスを子どもたちの語りを通じて、実情に即して共感的に理解し、2.子どもたちの不調や不適応、さらには回復力につながる要因を詳細に分析することに主眼をおいた。方法は、主としてとしてインタビュー調査による質的研究である。 その結果、離婚の悪影響が深刻化するプロセスとして、<子どもの家族関係修復への献身的な試み、親への気遣い、配慮、忠誠心などが報われない>⇒<無力感、自責の念、恥の感情、自己効力感や自尊感情の低下>⇒<周囲の子どもたちとの隔たりや孤立、しばしば教師からも否定的に見られる、大人全般への不信>⇒<学校や社会からの閉じこもり→非常に低い自己評価、強い無力感、希望の喪失>といった悪循環が見出され、それは同時に、離婚にまつわる子どもの語りや言葉が奪われてゆくプロセスでもあることが明らかとなった。その結果を踏まえて、援助のポイントとしては、1.離婚の悪影響の深刻化のプロセスを理解していること、2.子どもの関係改善への献身的な試み、親への気遣い、配慮、忠誠心、などが少なくとも誰かに承認され、親の離婚にまつわる子どもの「語り」が、配慮や思いやりのもとで聴き入れられること、3.人への信頼や人との出会いにある程度は開かれ、先生や友人など家庭外での対人関係や居場所に支えられること、4.いわゆるインテンシブな心理療法よりも、さりげない援助や声かけ、自尊感情が保たれるような日常生活場面でのやりとりが大切なこと、などが考えられた。 当該年度の研究成果により、親の離婚を経験した子どもたちに対する適切な理解がなされ、心理的ケアや支援のあり方の可能性が具体的に示されたという点で、重要かつ意義のある結果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、研究初年度である当該年度においては、1.基礎的調査研究、2.インタビュー調査、3.研究協力者らとの援助実践例研究の準備、着手が予定されていた。 このうち、2.インタビュー調査に関しては順調に進展しており、既に来年度の達成目標に近い成果を挙げている。さらには3.援助実践例に関する研究も着手されている。 ただし、1.基礎的調査研究のうち、海外のケア・プログラム等の調査・視察等に関しては、スケジュール調整が困難等の理由で十分に実施されているとはいえない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、1.平成24年度に十分に実施できなかった、国内外のケア・プログラム等の調査・視察を行うとともに、引き続き必要に応じて文献研究等を追加して行う。2.子どもに対するインタビュー調査に関しては、質的研究の最終段階にあり、作業終了後直ちに、学会学術誌への投稿の手続きに入る。3.研究代表者、各研究協力者による臨床的援助やケア実践例の分析・検討を進める。4.学校教育現場で子どもたちにかかわる教員へのインタビュー調査、質問紙調査を試みる。これは、前年度における研究代表者・研究協力者間の研究ミーティングで提起されたものである。5.なお、研究協力者に関しては、転勤、配置換えなどの事情に応じて、適宜、相応の者への協力を要請する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
事前に申請した研究費使用計画に準じて、海外・国内調査視察のための交通費・宿泊費、研究協力者間の研究会のための交通費・会場費、インタビュー調査および質問紙調査謝礼、録音音声逐語録作成費用、その他、必要に応じての関連機器購入等に充当する。
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