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2012 Fiscal Year Research-status Report

定常型社会におけるケアとそのシステム

Research Project

Project/Area Number 24616024
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionHyogo University of Health Sciences

Principal Investigator

紀平 知樹  兵庫医療大学, 共通教育センター, 准教授 (70346154)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 浜渦 辰二  大阪大学, 文学研究科, 教授 (70218527)
大北 全俊  大阪大学, 文学研究科, 助教 (70437325)
Project Period (FY) 2012-04-01 – 2015-03-31
Keywords定常型社会 / ケア / 事前指示 / HIV / 共有地
Research Abstract

初年度である平成24年度は、この研究課題で考察すべき問題点を明るみに出すということを主たる目的とした。研究代表者の紀平は、日本現象学会のワークショップにおいて、現象学の立場から、市場を至上のものと考えるような社会の限界と持続可能な社会の可能性についての報告を行い、参加者たちと意見交換を行った。特に日本では、江戸時代から明治時代への転換期に地租改正が行われ、そのことが共有地のあり方に大きな変化を引き起こしたことを「小繋事件」の経緯を紹介しながら考察した。それはまさに村民たちの生活を成立させるための基盤であった小繋山に、市場経済のシステムが浸透し、商品として対象化された山へと変化していく過程であるとみてよいのではないかと思われる。
本年度は二度の研究会を開催した。一度目は代表者の紀平が定常型社会の理念について報告を行った。そしてこの定常型社会では、生産性という理念の組み替えが必要であることを明らかにした。また分担者の浜渦は、吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』を取り上げて、人間関係を生産関係としてみる視点を批判しつつ、ケア関係の意味について考察を行った。またこの研究会では、作業療法を専門としている稲富宏之氏を招き、作業療法の理念やその方法についての知識提供を行っていただいた。二度目の研究会では、分担者の大北が、HIVコミュニティのあり方と公衆衛生との関連について報告を行った。浜渦が、ドイツにおける事前指示のあり方についての報告を行った。
以上のような研究を通じて、本研究課題で明らかにすべき問題点のいくつかを明確にすることができた。まず現在の市場システムの中核に位置づけられていると思われる「生産」というものをどのように考えるかということである。例えば「人が老いれば、生産力が低下する」といわれるが、それは本当にネガティブなことなのだろうかということをあきらかにしなければならない。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究課題の初年度にあたる本年度は、本研究課題の問題点を明確にすることが目標として掲げられていた。その課題は三つの方面から探求する予定であった。第一に「定常型社会への移行の条件」、第二に「現在のケア理論の総括」、第三に「キュアからケアへの移行が医療職者にもたらす変化」である。
第一の課題については、「生産」という概念を物質量を増大させるという意味ではなく、別の意味へと組み替えたり、あるいはそもそもそうした概念を中心に位置づけないような社会を構想する必要があるということを明らかにしたという意味では、ある程度達成されたであろう。
第二の課題に関しては、浜渦がケアに関する考察を行っている。特に北欧ケアと日本のケアの比較、現象学とケア論の関係についての考察、ケアの倫理と看護についての考察をおこなっており、現在のケアの理論に関する総括を行ったといえるだろう。
第三の課題に関しては、大北がフーコーの生権力/生政治の観点から健康増進といったものを推進する医療制度のあり方に関する考察を行っている。

Strategy for Future Research Activity

今後も引き続き、交付申請書の研究計画に従って、研究を推進していく予定である。特に25年度は定常型社会への移行や健康転換における老人性退行疾患の段階への意向が現実のものとなるに当たって、これまでの社会からどのような変化が生じるかを明らかにしていく必要がある。そのために、議論が抽象化しないように、できる限りそうした問題に関わっている方からの知識提供や、聞き取り調査などを通じて、研究を進めていく必要がある。
また交付申請書では、チーム医療のあり方など、どちらかといえば医療職者の組織のあり方を問題としていたが、前年度の考察の中で徐々に重要性が明らかになってきたのは、医療職者たちのあり方を規定する、医療システムの問題である。したがって当初の計画を若干変更し、政治や経済も含めた医療システムのあり方についての考察を行っていく必要がある。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成25年度は三度の研究会を開催する予定であり、それぞれの研究会では、認知症ケア、在宅医療、定常型社会等に関する専門家をお招きして、その実践的な問題や、理論的な問題に関する知識提供を依頼する。その研究会で使用する会場の費用等も必要である。また例えば、実際に持続可能な開発を行っている現場に出向き、そこに関わる人たちにたいする聞き取り調査なども行いたいと思うので、その旅費が必要である。また各分担者が研究成果を発表するために、学会参加のための旅費が必要がである。さらに、ケア、医療制度、定常型社会などに関連する図書資料の購入も必要である。

  • Research Products

    (8 results)

All 2012 Other

All Journal Article (3 results) Presentation (3 results) (of which Invited: 1 results) Book (1 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] 北欧ケアと日本のケア―哲学の立場からの比較2012

    • Author(s)
      浜渦辰二
    • Journal Title

      地域リハビリテーション

      Volume: 7 Pages: 1042-1045

  • [Journal Article] 北欧ケア研究のために2012

    • Author(s)
      浜渦辰二
    • Journal Title

      看護研究

      Volume: 45 Pages: 426-438

  • [Journal Article] 応用現象学とケア論―北欧現象学との交流のなかから―2012

    • Author(s)
      浜渦辰二
    • Journal Title

      文化と哲学

      Volume: 29 Pages: 1-14

  • [Presentation] 環境問題と生活の基盤の危機

    • Author(s)
      紀平知樹
    • Organizer
      日本現象学会
    • Place of Presentation
      東北大学(宮城県)
  • [Presentation] 医療と福祉をつなぐケア学

    • Author(s)
      浜渦辰二
    • Organizer
      鳥取県福祉研究学会
    • Place of Presentation
      鳥取県立福祉人材研修センター(鳥取県)
    • Invited
  • [Presentation] 健康増進の動きとそれへの応答について―M.フーコーの思索を手がかりに―

    • Author(s)
      大北全俊
    • Organizer
      日本医学哲学・倫理学会
    • Place of Presentation
      金沢大学(石川県)
  • [Book] シリーズ『生命倫理学』第14巻「看護倫理」2012

    • Author(s)
      浜渦辰二
    • Total Pages
      259頁
    • Publisher
      丸善
  • [Remarks] 主な研究業績の紹介:浜渦辰二

    • URL

      http://www.let.osaka-u.ac.jp/~cpshama/gyouseki/gyou-ha0.html

URL: 

Published: 2014-07-24  

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