2013 Fiscal Year Research-status Report
ケアの視点に立った超高齢脳卒中リハビリテーションにおける介入ポイントの有用性
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24616025
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
平上 二九三 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (60278976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 輝夫 大阪行岡医療大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00412247)
齋藤 圭介 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (20325913)
野中 哲士 神戸大学人間発達環境学研究科, 公私立大学の部局等, 准教授 (20520133)
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Keywords | 高齢者リハビリテーション / リハビリテーション・ニーズ / 患者中心のアプローチ / チーム医療 / 思考過程 / 介入ポイント |
Research Abstract |
今日の医療は急性期・回復期・維持期へと分断された中で、効率的な医療連携が課題となっている。その中でリハビリテーション(リハ)医療の対象者は、複雑で多様な問題を抱えた超高齢患者が激増している。超高齢患者は、生理的な機能低下は避けられず、やみくもな治療よりもQOLや尊厳が求められる。また慢性疾患や老人退行性疾患・既存障害を有していることが多い。加えて独居や老々介護といった社会的背景を含めると、ケアの視点に立った個別介入が重要になってくる。一方、先行研究を概観するとリハ専門職は、必要な援助内容を提示していない、また患者個々のリハ・ニーズを認知していないと現場でケアの不十分さが指摘されている。 そこで本研究では、早期かつ優先的に解決すべき問題を抽出し、介入ポイントを見極めていくことを臨床現場の症例検討会を通して実証してきた。その中で回復の可能性を見出していく介入ポイントを特定するとともに、機能回復のために必要とされる具体的なケアを現場の事例から提示した。また最善の介入ポイントをチームとして創造的に導き出していく実践方法を編出した。 つまり患者や家族にとって意味のある介入ポイントを同定するケアモデルを構築した。ケアモデルは、臨床像・障害像・心理面・環境面の4次元から構成され、時間的な要素も含めた。それぞれの定義に従って、最小限の情報を組込むことで、主要な問題が識別されていく。リハの専門家は臨床像を十分に理解し、患者や家族の心理面・環境面を確認しつつ、障害像の中に介入ポイントを見出していく。このことからケアモデルの実践活用は、より包括的で個別的であり、さらに現実可能性として効率的なチーム医療になっていくことを報告した。 今後は介入ポイントを同定していくプロセスモデルの構築とその洗練化を図り、併せて介入ポイントの有用性については、リハ専門職教育・研修への応用からも検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24・25年度の2年間で臨床現場から介入ポイントの有用性を実証し、以下5点の研究成果が得られている。 1. 実践研究:(1) The utility of a care model to individualise rehabilitation in adults aged over 80 yearsがTop Stroke Rehabilに26年5月11日に受理された。ケアモデルを用いて介入ポイントを同定していく18例の報告。(2) Design of patient-specific intervention processes and points of very old stroke patientsをDisabil Rehabilに26年2月4日投稿し現在査読中。プロセスモデルを用いて介入ポイントを同定していく一例報告。 2. 研究発表:「80歳以上の回復期脳卒患者における介入方針の層別化の試み」を第39回日本脳卒中学会総会で26年3月13日発表、介入ポイントをケア方針とリハ方針に分けた48例の報告で今後3本目の英語論文にする予定。 3. 書籍出版:図解運動療法ガイドの「移乗」を文光堂から執筆依頼があり26年5月31日提出予定。リハの専門家らしい問題認識と問題解決について10例紹介する。今後、介入ポイントの事例集を単著として出版交渉予定。 4. 学外教育:「わが国のリハビリテーション専門職教育の展望―超高齢の未来を担う療法士教育を求めて―」を第27回教育研究大会・教員研修会で26年8月22日に講演予定。介入ポイントの有用性を専門家(プロフェッショナル)教育に導入することを提案。 5. 学内教育:介入ポイントを中心にして従来の症例レポートを体験報告の書式に変更。また臨床実習を振り返る科目を新設し、介入ポイントが専門家らしい見方や考え方の学びと動機づけになることを検証中。
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Strategy for Future Research Activity |
24・25年度において、回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟に入棟後早期に症例検討会を行い、介入ポイントを明確にする管理システムが整備された。26年の最終年度においては心身機能の回復や活動能力の改善が期待しにくい高齢の慢性疾患患者に着目して、どのような介入ポイントが設定されたかを検討していく。 現在2010年4月から2013年8月までに症例検討会で検討された80歳以上の脳卒中患者48例を対象とし分析している。介入ポイントはリハ方針とケア方針の2つに分け、リハ方針では専門職から見出した情報(状況に変化を与える意味のある介入内容)、ケア方針ではスタッフ全員が共有すべき情報(患者に関るにあたって心得ておく要点)としている。リハ方針からめざす目標でA(寝たきり防止)、B(介助量軽減)、C(ADL自立)の3群に分け、これらの層別化を試みている。さらに現行の医療制度の日常生活機能評価指標を用い重症と判断される10点以上の割合を検討している。 A群は介入にリスクを伴うI(意識障害)とII(全身管理)、介入が受動的になるIII(意思疎通)、介入の意図が通じないIV(認知障害)の4グループに分けられている。I・II・IIIでは座位による離床が求められ、IVは能動的な状況づくりが問題になっている。B群は移乗介助の軽減を図るV(起立不安)と移動介助の軽減を図るVI(立位不安)、またC群は移動の自立を狙うVII(歩行不安)と在宅ケアを狙うVIII(在宅不安)のそれぞれ2グループに分けられる。その中で重症と判断された症例はA群16例中15例、B群16例中11例、C群16例中6例となっている。 このことからA群では当然のことながら大多数が重症と判断されたが、B・C群に重症例が半数以上含まれたことは、重症度での介入方針の決定ではなく、リハ方針とケア方針からの層別化から介入ポイントの有用性を報告していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
臨床現場で収集した情報や画像データを分析し、25年度の科研費は2編の英語論文の作成に費やした。特に本研究は、教科書的な「情報収集→検査・測定→統合と解釈」や「トップダウン・ボトムアップ」といった思考過程の違いでもなく、全く新たな提案になる。研究の必要性は、これまでに誰もが経験したことのない超高齢者がリハの対象になったからである。従来の医学モデルやICF(生活機能分類)の生活機能モデルに加えて、ケアモデルから介入ポイントを見出すことを提案するものである。 論文作成にあたっては、和文雑誌に3回投稿してきたが、その特殊さから査読者の理解が得られる表現ができず苦慮してきた。その度ごとに「重要な研究テーマを扱っているが介入ポイントを導き出す方法が不明瞭」との指摘を受けていた。一流英文誌のDisabil Rehabil.に投稿するためにクリムゾンインタラクティブ会社に翻訳依頼をし、25年度はすべて英文校正に費やした。 クリムゾンインタラクティブ会社はリハ分野の英語ネーティブ校正が2名でおり、質の高い翻訳が出来、翻訳作業中の問い合わせや確認ができ、サポートが充実していた。科研費で支払いために多くの国公立大学が登録業者として会計登録システムに登録しており信頼できた。その支援があって、26年4月18日にTop Stroke Rehabilからaccept pending revisionの通知を受け5月11日受理された。このことから、高齢者リハに対する新たな実践的な介入方法が認められ、その続報としてDisabil Rehabilへ独自のプロセスモデルの実践について報告予定で、第3編も英文校正に26年度科研費を充当していく。あわせて介入ポイントの有用性を分かりやすく体験学習できる事例集についても、出版業者と交渉していく刊行費に充てていく予定である。
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Research Products
(6 results)