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2012 Fiscal Year Research-status Report

心理学における「関係」および「物語」理論の再構築:養育・療育・看護の現場から

Research Project

Project/Area Number 24616028
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionNara Bunka Women's College

Principal Investigator

東村 知子  奈良文化女子短期大学, その他部局等, 准教授 (30432587)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 西川 勝  大阪大学, コミュニケーションデザイン・センター, 教授 (10420423)
麻生 武  奈良女子大学, その他部局等, 教授 (70184132)
Project Period (FY) 2012-04-01 – 2015-03-31
Keywords物語 / 関係 / ケア / 文献検討 / フィールド研究 / 心理学
Research Abstract

本研究は、哲学・心理学等の文献検討を通して、特に「関係」と「物語」に焦点をあて、心理学における新たなメタ理論の構築を試みるものである。さらに、えられた視点をもとに具体的なケアの現象を記述しなおすことを通して、理論の精緻化をめざしている。平成24年度は、主に研究会におけるヘーゲル「精神現象学」の文献検討、およびフィールドにおけるケア場面に対する考察を行い、次のような成果がえられた。
1.文献検討を通して、(1)物語を語る視点、(2)関係性のもつジレンマの2点に関して以下の示唆がえられた。(1)物語は、語る視点の数だけ物語がある(そしてどれが正しいかは決められない)という相対主義の危険性をはらむ。相対的でありながら絶対的な視点を獲得するにはどうすればよいか。別の角度からいいかえるならば、経験の渦中においてそれを内側から描きながら、バラバラな寄せ集めではない一つの物語を展開するにはどうすればよいか。その答えがヘーゲルの理論展開のプロセスにあると考えられる。(2)母‐子、看護者‐患者などのケアする者とされる者の関係性は、つきつめていけば破綻し反転しうるものであるということが明らかになり、ケア関係をみる新たな視座がえられた。
2.上記の視点をもとに、ケアと物語の関係について考察した。他者の物語を聞き取り、それを語りなおすことが、なぜケアになるのか。大切なのは、相手について可能なかぎり知ることではなく、語られた自己物語が、個を超えた流れの中に位置づけられる(少なくともその可能性が確保される)ことなのではないか。そのように考えると、心理学ではこれまで自己物語の重要性が強調されてきたが、物語の意味は、実は自己が「他者によって語られる」ことにあるのではないか。他者によって語られる自己物語、完結せず連鎖していく物語、物語を聞き取ることの暴力性など、今後取り組むべき新たな問題が明らかになった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

文献検討の対象としたヘーゲル「精神現象学」が非常に難解であったため、当初計画していたその他の既読文献の再検討は十分に行うことができなかった。しかしながら、研究実績の概要で述べたように、時間をかけて検討した結果、物語を語る視点と関係性に関する重要な視点がえられた。特に語る視点の問題について、「語りの不可能性」をいかに乗り越えるかを考えるための新たな方向性が見出されたことは、大きな意味をもつと思われる。養育・療育・看護のそれぞれのフィールドにおける考察にも着手しており、学会や論文等での発表も行うことができた。さらに今後の研究の推進に関しても、次項に述べるように具体的な計画が定まっている。

Strategy for Future Research Activity

平成25年度は、以下の四つを柱として研究を進めていく。
1.理論的な検討  (1)本研究の二大テーマである「関係」と「物語」の接点である「傾聴」に焦点をあててシンポジウムを行う。多様なケアのフィールドにおける経験にもとづき、これまであまり目が向けられてこなかった傾聴のネガティヴな面に着目して論じることで、新たな視点を見出すことを目的とする。(2)ハイデガーの「存在と時間」を取り上げ、定期的に研究会を行って検討する。心理学は長く「個(個人)」をその対象としてきたが、「個」以前の「存在」について掘り下げて考察することで、「関係」の問題に新たな光があてられると考える。
2.フィールド研究  (1)障がい児の親および特別支援教育に携わる学校教員と共同で書籍を執筆する。親からは学校教育および療育に対する不満や要望を聞き取り、それに対して教員から何を重視してどのような実践を行っているかを提示してもらい、研究者が理論的な考察を行う。教員がそれぞれの現場で編み出している有効な実践に理論的な裏付けを与え、それを広く共有できるかたちにすること、また親と教員をつなぎ、相互理解を深めることの二つを目的とする。理論的な考察の補助として、専門家の育成に重要な役割を果たしている教科書の言説分析を行う。(2)在宅ケアの研究会において「別れ」をテーマに哲学カフェを開催し、参加者とのあいだでどのような語りが生まれていくのかを調査・検討する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

1.次年度使用額が生じたのは、予定していた出張の急な変更のためである。
2.次年度の研究費は、(1)文献と、分析および研究発表に使用する物品の購入費用、(2)学会等の参加費用(参加費、シンポジウムの企画費、旅費、登壇者への謝金)、(3)書籍の原稿作成にかかる費用(協力していただく親および学校教員への謝金、ミーティングにかかる経費)(4)アルバイト学生の人件費(研究会のまとめの作成、インタビューおよびシンポジウムのテープ起こし、教科書の分析補助)に充てる。

  • Research Products

    (3 results)

All 2013 2012

All Journal Article (1 results) Presentation (1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 役割遊びが苦手なH君をのプレイセラピー2012

    • Author(s)
      山口真希・麻生武
    • Journal Title

      発達・療育研究

      Volume: 28 Pages: 61-75

  • [Presentation] 障がいのある子どもの親として生きる―地域のピアサポートグループにおける語りの実践2013

    • Author(s)
      東村知子
    • Organizer
      日本発達心理学会第24回大会
    • Place of Presentation
      明治学院大学
    • Year and Date
      20130315-20130317
  • [Book] 孤独に応答する孤独―釜ヶ崎・アフリカから―2013

    • Author(s)
      西川勝
    • Total Pages
      4-11
    • Publisher
      大阪大学コミュニケーションデザイン・センター

URL: 

Published: 2014-07-24  

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