2012 Fiscal Year Research-status Report
標準評価項目を用いた地域診療所のプライマリケア・サービスの包括的評価研究
Project/Area Number |
24616029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
松村 真司 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 臨床疫学研究室, 医師 (90323542)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プライマリケア・サービス / 診療の質評価 |
Research Abstract |
本年度は地域診療所・医療機関におけるプライマリケア・サービス評価を既に実施している英国・米国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドおよびEU諸国において実際に用いられている既存の外形評価項目を文献的に収集した上でわが国における適用可能性について分析した。とりわけその中で、包括的・網羅的であり、かつ本邦への移行性が高いと思われたカナダ・マクマスター大学の研究者らによって開発されたQuality Book of Tools in Family Practiceについてはこれらの項目について全文の翻訳を行い、それぞれの項目につき詳細に検討した。また国外資料の収集と並行して、日本医療機能評価機構による病院における評価項目およびわが国におけるプライマリケア・サービスに対する住民調査などの先行研究において明らかにされている概念について文献的整理を実施した。さらに地域医療に携わる医師7名と、医療・福祉関係職・行政職関係者7名に対しフォーカスグループ・インタビューもあわせて実施した。これらの結果から、本邦におけるプライマリケア・サービス拠点としての地域診療所の質を表す重要概念であると思われる7軸が抽出された。これらの7軸ならびにここから整理された概念モデルについて、地域の保健・医療・福祉関係者ならびに厚生行政担当者/医師に対し半構造化面接を行い、これらの軸が本邦において適切かつ応用可能であるかについて妥当性を確認した。この7軸に収束させた各概念それぞれについて内外の既存の評価項目および新規に開発された評価項目を用いた外形評価項目原案を作成。最終的に①幅広い診療(59項目)、②アクセス(17項目)、③コミュニケーション(16項目)、④連携(34項目)、⑤地域貢献(20項目)、⑥患者背景の考慮(17項目)、⑦標準的診療(16項目)の7軸、計120項目の評価項目一次案が策定されるに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外、特に国外においてすでに使用されているプライマリケア・サービスの外形評価基準項目について文献ならびに研究者からの直接情報を含め幅広く収集した上でそれらについて概念整理を行うことができた。また、これまでのわが国におけるプライマリケア・サービスならびにかかりつけ医・かかりつけ診療所の質などの基礎調査によって明かになっている診療所における重要な質の概念と比較が行われた。さらに地域の医療保健福祉関係者によるフォーカスグループ・インタビューを行い、より妥当性の高いわが国におけるプライマリケア・サービスの質を評価するための概念形成が行われ、わが国の地域において十分に応用が可能になるような外形評価基準項目の一次案を策定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在作成された120項目についてさらにわが国において妥当性・信頼性が高く、さらに実行可能性の高く持続的に測定が可能な外形評価基準を策定する。策定には当該領域の有識者およびステイクホルダーによるデルファイ変法を使用した科学的合意形成法に基づいた作業を反復することにより項目数を絞っていき最終的には7つの軸でそれぞれ3-4項目、合計20-30項目程度の項目を策定する。策定された項目に応じ、実際に用いられる標準評価手順書を作成する。これらの標準評価手順書を用いて実地のサーベイヤーを訓練したのち、国内の複数の地域診療所においてパイロット調査を行う。その後、パイロット調査を実施し、これらの診療所管理者に対して半構造化インタビューを行い、診療所評価事業に対する妥当性・実行可能性および課題について検証を行う。併せて、診療所において管理している患者に対して無記名質問紙調査を行い、これらの外形基準を用いた評価に対する妥当性・信頼性についての検証も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度はフォーカスグループインタビューおよび文献的調査ならびに現地調査により評価項目の一次案を作成することが出来たが、コンセンサス会議の実施までには至らなかった。本年度は、前年度において開発された外形評価基準の一次案について、有識者ならびに地域プライマリケアに携わっているステイクホルダー(医師・看護師・医療関係者・ケアマネージャーを含む福祉関係者・患者・一般住民)らによって構成されたコンセンサス・パネルを形成。デルファイ変法等の合意形成手法を使用し、最終項目案を確定する予定である。また最終項目案に対して、標準評価手順書ならびに解説マニュアルを策定し円滑な評価の実施案を計画する。また併せて日本プライマリ・ケア連合学会などに所属する診療所医師を対象とした質問紙調査を行い、これらの評価項目の妥当性・実行可能性および評価事業の有効性についての調査を行い、妥当性の高い最終評価項目を策定した上で1-2施設で予備調査を行う予定である。
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