2012 Fiscal Year Research-status Report
異文化環境における「人生紙芝居」の有効性:コスタリカでの実証研究
Project/Area Number |
24617014
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyushu Lutheran College |
Principal Investigator |
糟谷 知香江 九州ルーテル学院大学, 人文学部, 准教授 (30337274)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 心理学 / ナラティブ / 移民 / 国際協力 / コスタリカ |
Research Abstract |
「人生紙芝居」は、生活史をもとにした手作り紙芝居であり、日本の福祉現場で活用されている。本研究では、この技法が日本以外でも有効であるかを検討する。平成24年度は、紙芝居制作が生活史の語り手に対する心理的支援となっているか検討することを目的として、コスタリカにおいて人生紙芝居を制作した。まず、隣国ニカラグアからの移民、元ストリートチルドレンのコスタリカ人などを対象として、生活史の聞き取り調査を行った。次に、語られた生活史からそれぞれの人生紙芝居を制作し、語り手本人と語り手の家族の前で紙芝居上演会を実施した。その際、上演した紙芝居に対する感想を、質問票によって参加者から収集した。また、上演会における参加者の発言と行動を記録した。主な知見は以下の通りである。制作した人生紙芝居はすべて図版20枚以内であり、語り手の人生のあらすじというべきものである。しかし、語り手は人生紙芝居の上演を通して、改めて自分の人生を振り返り、過去の出来事と当時の感情を想起していた。語り手のなかには、聞き取り調査のときには語らなかった経験を自発的に語り出す者もみられた。人生紙芝居の上演には語り手の自己開示を促す効果があると言えそうである。また、人生紙芝居に対しては、すべての参加者が肯定的な感想を述べた。この最大の理由は、自分や自分の家族が登場するストーリーが日本的な(彼らにとっては異文化の)イラストで表現されているということにあるようであった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度と25年度は人生紙芝居の制作事例数を増やすことを課題としている。完成した人生紙芝居を見た調査地の人々から制作依頼を受けるようになってきており、おおむね順調といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究はマイノリティを支援するための技法を開発するものであり、当初の研究計画では移民を支援対象としていた。しかし現在、移民ではないマイノリティの人々からも制作を依頼される状況になっている。こちらも、できる範囲で対応したいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度同様、人生紙芝居を制作するためにコスタリカへの渡航費と現地での滞在費、研究協力者への謝金が必要となる。また、制作した紙芝居と紙芝居上演会を記録するために、スキャナ、ビデオカメラなどを購入する。その他に、関連する書籍、画材などを購入する。
|
Research Products
(1 results)