2013 Fiscal Year Research-status Report
異文化環境における「人生紙芝居」の有効性:コスタリカでの実証研究
Project/Area Number |
24617014
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Research Institution | Kyushu Lutheran College |
Principal Investigator |
糟谷 知香江 九州ルーテル学院大学, 人文学部, 准教授 (30337274)
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Keywords | ナラティブ / 移民 / 国際協力 / 心理学 / 紙芝居 / コスタリカ |
Research Abstract |
「人生紙芝居」とは生活史を主題とした手作り紙芝居である。25年度は前年度に引き続き、紙芝居の制作事例を増やすことを目的として、コスタリカにおいてストリートチルドレンおよび難病患者の生活史を聞き取り、人生紙芝居を制作した。なお、当初の計画では首都近郊のスラムに居住するニカラグア系移民を調査対象としていたが、25年度は同スラムにおいて対日感情および治安の悪化が懸念される状況が生じたため予定を変更した。本研究は今後、マイノリティに対する理解を促進するために制作した紙芝居を活用する計画もあるので、計画変更の際もマイノリティといえる人々を調査対象者とした。 現地調査以外では、これまでの人生紙芝居の制作事例をもとに論文を執筆し、人生紙芝居の利点について以下の仮説を提示した。すなわち、私たちの過去の経験は日常生活においては未整理なままに記憶の中に存在しがちであるが、他者に語ることを通して経験が順序立てられ、整理されるのではないかと考えられる。また、人生における経験というのは多義的であり、1つの経験も見方によっては異なる意味を持つが、人生紙芝居は生活史の語り手の人生に正当性を与えられるストーリーを備えていると考えられる。このようなストーリーを共有するという観点において、完成した人生紙芝居を語り手とその家族の前で上演することには意義があると考えられる。以上のような心理的支援の機能を人生紙芝居、および人生紙芝居の制作過程が有している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度の課題は、前年度に引き続き「人生紙芝居」の制作事例数を増やすことであった。制作事例は順調に増加しており、当初の計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」の項で述べたように、25年度は調査地の事情により調査対象者を当初の計画より広げることとなった。今後については現地の状況を随時確認しながら判断する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、紙芝居制作途中で調査協力者との打ち合わせが必要になると考え、年度内に2度のコスタリカにおける調査を予定していた。しかし、インターネットおよび電子メールを使用できる環境にある調査協力者が得られたため、コスタリカでの調査を1度実施し、その後の打ち合わせはメール等を介しながら作業を進めることができた。 研究代表者の紙芝居制作および上演の技術を向上させることが今後の研究の発展に必要であると考えられる。これらを目的として日本国内で調査研究を行うための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)