2012 Fiscal Year Research-status Report
南洋における日本人社会の形成と変遷 在日外国人との共生の一助として
Project/Area Number |
24617019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
青木 澄夫 中部大学, 国際関係学部, 教授 (30424922)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 南洋 / 日本人会 / 日本人の海外進出 / からゆきさん / 在留邦人 |
Research Abstract |
24年度は、南洋(東南アジア)で第二次世界大戦以前に経済活動を行った日本人に係る資料収集に努めた。具体的には国会図書館、外務省外交史料館等で文献・資料調査を行い、合わせて古書店、オークション等で文献・史資料の収集を行った。 史資料の収集の中で、24年度は日本人が南洋で作成した「古絵葉書」の収集に重点を置いた。第一次世界大戦以前に南洋に進出した男性「市民」は、「からゆきさん」に寄生するものもいたが、吹矢、玉ころがしのような香具師や売薬などに従事した者もいた。少し器用なものは写真機を担ぎ村々を巡回し人々を撮影した。こうした人の中から写真館を経営する者が1900年代半ばから現れた。彼らは人物撮影を主としたが、絵葉書を作成し販売した。これらは現地に在住する欧州人や旅行者を対象にして販売されたため、説明文は欧州語である。日本人が作成したものの、非日本人を顧客としたため日本国内へ発信されたものは少ない。そのため日本国内での入手は困難で海外マーケットに依存せざるを得ない。3月末現在でインドネシア等6ヶ国で、絵葉書を作成した30店以上の日本写真館もしくは日本商店の存在が明らかになった。 海外調査では、インドネシアを中心に現地調査を行い、国立図書館、公文書館、書店、古書店などで史料集に努めた。調査対象地での絵葉書の収集は困難であるが、近年各国とも歴史資料としての古絵葉書の評価が高まり、マレーシア、シンガポールなどでは公文書館等が古絵葉書集を発行し、出版社からEarly Postcardsについての書籍が刊行されている。これら文献資料の収集も行った。 なお、史資料の調達は原則私費にて行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南洋の日本人社会の形成と変遷に関し、未定稿であった「オランダ領東インド(蘭印)時代のスマトラ島メダンにおける1910年代までの日本人社会の形成と変遷」をまとめた。明治大正期における文献収集は、概ね順調にいっているが、未だ外交史料館蔵の外交文書等については手がついたばかりの状態にある。 24年度、25年度に重点を置いている、日本人の主要経済活動の一つであった写真業者(写真館・日本商店)が、現地で作成した絵葉書の入手は私費にて対応しており、収集数は300枚に及んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、本学からサバティカルを取得できたため、海外調査に重点を置きながら、国内での関連資料の収集と分析を合わせて行う。 とりわけ、本年度は研修概要の実績で述べたように、東南アジアで「絵葉書」を作成した日本人写真師の足跡を現地調査と文献等から照合し、「100年前に日本人が撮影した東南アジア」をテーマに分析を行う。 近年朝鮮半島や中国などで日本人が作成した絵葉書が歴史資料として注目を浴びつつあるが、現在までに東南アジアで作成された絵葉書についての研究はほとんど行われたことがなく、絵葉書の存在すら一部のマニアの間で知られてきたに過ぎない状況にある。本件については、12月に開催される東南アジア学会で発表予定である。 26年度は、東南アジア主要都市における日本人社会の形成過程について分析発表し、研究成果を展覧会等で一般公開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、国内調査に重点を置いたため、また25年度にサバティカルの取得が決定したため海外調査は一回にとどめた。そのため、25年度への繰越額は758,000円となったが、25年度は、研究費の大半を海外調査に充てる。調査対象地域は、1920年ころまでに日本人会等を結成した都市が中心となる。具体的には、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ミャンマー等で、第二次世界大戦以前(特に1920年まで)に在住した在留邦人についての資料収集を行い、日本人墓地、旧日本人街等で現地調査を実施する。 物品購入は研究に必要な周辺機器やインク、写真用紙などの消耗品である。 原則、コピー代などを除き、文献・資料の購入は私費にて対応予定である。
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