2013 Fiscal Year Research-status Report
南洋における日本人社会の形成と変遷 在日外国人との共生の一助として
Project/Area Number |
24617019
|
Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
青木 澄夫 中部大学, 国際関係学部, 教授 (30424922)
|
Keywords | 南洋 / 在留邦人 / 海外発展 / 日本人会 / 南方関与 |
Research Abstract |
平成25年度は、本補助金とともに、中部大学から特別研究費Aと特別研究休暇を与えられたため、国内外の現地調査と資料収集及び解析を中心に研究を行った。具体的には、明治・大正時代に刊行された東南アジア関係の資料・文献の収集と解析、合わせて従来研究してきたアフリカについても継続し、国会図書館、古書店等における資料調査、ネットによる資料収集(主として海外からの絵葉書の購入)、長崎県島原等において日本人のデァスポラに関する現地調査などを行った。 一方、本補助金で4回、他資金で2回、計6回の海外出張(延べ4か月間)を行い、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ミャンマー、タイ、フィリピン、ベトナムの7か国19都市で現地調査を行った。現地では資料収集を行うとともに、日本人墓地、納骨堂、日本人会、国立図書館、公文書館、書店などを訪問し、またかつて日本人が経済活動を行っていた地域を調査した。 本年度は、1900年~1930年代にかけて、東南アジア諸国で写真館を経営し、もしくは商店を営みながら、写真絵葉書を製作・販売した日本人の調査に重点を置いた。調査結果の一部は東南アジア学会で発表し、また中日新聞、京都新聞、じゃかるた新聞、ペナン日本人会報などで、一般の市民へ情報提供を行った。国内外での資料文献収集に要した費用(およそ180万円)は全て私費にて対応した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本補助金と中部大学からの支援を得て、国内外で資料収集と現地調査が実施できた。とりわけ本年度は1900年~1930年代にかけて東南アジアで絵葉書を発行した日本人写真師や日本商店の調査を行い、彼らの活動内容の把握と撮影された場所と現況の比較などを行った。 今まで在南洋の「無名」の日本人の活動については不明なことが多かったが、同時代に絵葉書を発行した(日本人)は、判明しているだけで1904年のミャンマーをはじめとして東南アジア7か国の30以上の都市に及びその数は60名を超えている。 現在までに収集した絵葉書は600枚に及ぶが、これらの絵葉書の購入者はほとんどが欧米人だったため、今まで日本国内で注目を集めることはなかった。一方、近年東南アジア諸国では、歴史的観点から絵葉書や古写真の関連資料が販売されるなど、絵葉書などへの関心が高まっている。 日本の南方関与が強まった1930年代以降には、現地政府からスパイなどの嫌疑をかけられることもあり、製作者の名前を付さないものが大量に発行されたが、それ以前の絵葉書には、当時の都市や農村の景観や人々の営みが映し出されている。市民が残した東南アジア諸国での足跡である。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は最終年度に当たるため、資料の収集と解析を継続するとともに、社会的還元として、以下の二つの企画を予定している。 (1)中部大学民族資料博物館で「日本人写真師が作成した写真絵葉書に見る100年前の東南アジア、アフリカ(仮)」展覧会 (2) 国際関係学部、東南アジア学会中部支部共催「南洋における日本人社会(仮)」シンポジウム また、成果品の発行を、国内と現地で検討しているが出版の目途はまだ立っていない。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた物品の調達が間に合わず余剰金が発生した。 本年度、未調達に終わった物品の購入に充てる。
|