2012 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパ諸国における洪水マップと土地利用関連施策の連携
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24618004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 仁 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (90295684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 孝明 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (30251375)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 洪水マップ / 土地利用 / 空間計画 / 保険制度 / ヨーロッパ |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヨーロッパ諸国(ライン川およびドナウ川流域諸国)を対象に、洪水マップの策定状況と利用実態を調査し、洪水マップが各国の土地利用関連施策(土地利用計画・規制、権利補償、不動産取引におけるリスク情報開示、保険制度との連動など)にどのように反映されているかを把握して、日本における土地利用関連施策を通じた河川洪水対策のあり方を検討することである。 現地調査については、2012年11月にオランダ・ロッテルダムで開催された欧州の洪水リスクマネジメントに関する包括的な国際会議 The 2nd European Conference on Flood Risk Management に参加することで、洪水マップ策定の前提となるハザードやリスクの評価方法、 洪水マップの策定手法とプロセス、洪水マップと空間計画や保険制度との関係などに関して最新の情報を効率的に収集することができた。また、2013年3月には、ドイツ・ハンブルグで開催された欧州の気候変動への適応に関する国際会議 European Climate Change Adaptation Conference 2013 に参加して、さらに情報収集を進めた。 文献調査では、欧州諸国における洪水マップの利用実態を包括的に把握すると同時に、特に、洪水マップと保険制度との連携に関して先進的な事例を把握した。 以上の国際会議参加および文献調査によって、ライン川およびドナウ川流域諸国のみならず、ヨーロッパ諸国における洪水リスクマネジメントの全般的な状況をふまえたうえで、洪水マップ策定の意義や課題を把握することが可能となった。また、洪水マップと土地利用関連施策の連携に関する先進的な事例を把握することができ、今後の研究の展開につなげることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、研究実施初年度(平成24年度)は、ライン川流域国際委員会(ICRP)、ドナウ川流域国際委員会(ICPDR)にヒアリングを行い、流域諸国の洪水マップの策定状況とその利用実態を把握する予定であった。研究対象をライン川およびドナウ川流域諸国に絞ったのは、研究期間と予算の制約が主な理由である。 しかし、ヒアリング調査については、2012年11月に4年ぶりに開催された欧州の洪水リスクマネジメントに関する包括的な国際会議 The 2nd European Conference on Flood Risk Management に参加して情報を収集するほうが、効率的かつ効果的であることが判明したため、そのように計画を変更した。また、2013年3月には、欧州の気候変動への適応に関する国際会議 European Climate Change Adaptation Conference 2013 に参加して、さらに情報収集を進めた。 以上の国際会議への参加によって、ライン川およびドナウ川流域諸国のみならず、ヨーロッパ諸国における洪水リスクマネジメントの全般的な状況をふまえたうえで、洪水マップ策定の意義や課題、洪水マップと土地利用関連施策の連携に関する先進的な事例を把握することができ、当初の計画以上に研究が進展する結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の(残り2年間の研究期間における)研究の推進方策は、以下のとおりである。 1.ヨーロッパ諸国の洪水マップの策定状況と利用実態に関して、初年度に収集したデータの整理・分析をさらに進めるとともに、国際会議参加や文献調査による補足調査を行って、洪水マップ策定の現状と課題をまとめる。 2.ヨーロッパにおいて、洪水マップと土地利用関連施策(土地利用計画・規制、権利補償、不動産取引におけるリスク情報開示、保険制度との連動など)が連携している先進的な事例を選定して、中央政府、地方自治体、関係機関、大学研究者などにヒアリングを行い、その実態と課題を明らかにする。なお、調査対象の事例は、ライン川、ドナウ川流域諸国に限定せず、本研究の最終目的(以下の4)を達成するうえで特に有益と考えられる事例を選定する方針とする。また、対象とする水害には高潮水害も含み、必ずしも河川洪水のみに限定しない方針とする。土地利用計画や保険制度などは国によって法制度の体系が異なることから、洪水マップの利用のあり方もそれに応じて異なっている。その点にも留意しなら調査を進めていく。 3.日本における洪水マップ策定の現状と課題を文献調査で把握する。さらに、洪水マップと土地利用関連施策が連携している先進事例があれば当該自治体にヒアリングを行い、その実態と課題を明らかにする。 4.以上から得られた知見をふまえ、日本における土地利用関連施策を通じた水害対策のあり方を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究初年度は、ヒアリング調査の対象を変更し、国際会議に参加して効率的に情報収集を行ったこと、および2013年3月下旬の国際会議参加の旅費精算を次年度に繰り越したため、当初の計画よりも執行額が減少した。 次年度の研究費は、前年度からの繰り越し金額を効率的に使用して、ヨーロッパ諸国での現地調査費用を拡充する計画とする。具体的には、以下の調査の海外旅費として使用する。 1.ヨーロッパ諸国の洪水マップの策定状況と利用実態に関して、2013年9月に英国で開催される国際会議 International Conference on Flood Resilience:Experiences in Asia and Europe に参加して補足調査を行う。 2.ヨーロッパにおいて、洪水マップと土地利用関連施策(土地利用計画・規制、権利補償、不動産取引におけるリスク情報開示、保険制度との連動など)が連携している先進的な事例を選定して、中央政府、地方自治体、関係機関、大学研究者などにヒアリングを行い、その実態と課題を明らかにする。事例調査の対象国として、英国、フランス、ドイツ、オーストリア、オランダ、ベルギーが候補に挙げられる。
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Research Products
(2 results)