2015 Fiscal Year Research-status Report
シティズンシップ力を育む被害軽減教育の開発-公共的空間をテーマとして-
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24618013
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
薬袋 奈美子 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (60359718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 永子 横浜市立大学, その他部局等, 准教授 (00551235)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 住教育 / 地理教育 / 地名 / 奄美大島 / 九十九里浜 / 豊間 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに実施した、農村漁村集落における土地利用と公共空間の使い方と災害の経歴の関係についての知見を踏まえて、シティズンシップ力を培うための教育方法についての検討を行った。これまでの調査の結果を踏まえ、伝えるべきことを整理すると、社会科の地理教育における教育の働きかけが良いと考えた。地理教育に携わる教員の集会等に出席し、地形を読み取る地理教育方法についての資料収集を行うと同時に、何名かの教員に意見をいただくことができた。 また十分に調査を終えることのできていなかった奄美大島については、追加的な文献・地図調査の実施を行ったうえで、現地調査での祭礼時期に合わせた調査を行うことができた。文献でしかわかっていなかった祭礼の際の空間遣いの確認と同時に、新たに多くの住民から古い地域の使い方を確認することができた。また災害との関係が深いという仮説を立てて調査を行っている神通については、存在がこれまでの文献等では確認することのできていなかった集落についても、あまり話題になっていないだけで、存在を明らかにすることができた。こういったことは、知っている人が他界した際には、何も伝承として伝わらなくなってしまう危機的な状況にある情報であり、こういった情報の収集をしっかり行う必要があると感じている。 東日本大震災被災地で行ってきた調査については、地域住民に対してその成果の一部を公表することができ、それを踏まえた復興まちづくりに生かされることを期待している。公共空間の使い方について、住民がどのように考えるのかを今後の復興まちづくりの検討の際の議論への参加から確かめ、シティズンシップ教育として、公表した情報がどのように生かされたのかを確かめるための基盤をつくることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
教育分野の実践者との交流および教育方法の普及を予定していたが、交流・伝達をすることが、本務の関係と交流先との日程が合わない等で、十分にできなかった。しかしネットワークを築くことはできたので、中学生、高校生に対する地理教育における現在の状況を踏まえた教育方法の提案を高めていきたい。十分な交流はできていないものの、現在の地理教育における課題として受験対策を意識するあまり、地誌の詳細についての暗記的な学習が中心となってしまっていて、地図をじっくり読み解いたり、グループで議論をしながら理解を深めたり、異なる考え方を受け入れ、自分の考えを深めるといったシティズンシップ力をつけるような教育方法をとる余裕がないことは確かめることができた。 また、農村・漁村にて行った調査について、社会への公表の重要な手段の一つである学会への論文投稿が遅れている。本科研費の最終的なゴールではないものの、ステップとして学会への論文投稿をしっかり行っていくことは重要であると考えている。学会投稿に向けて、多少不足している情報があるため、これらの収集を行う日程をとれなかったことも、投稿が遅れた理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ウェブ上の伝達や学会での発表ばかりでなく、学校教員との交流を一層深め、住教育の実践例を増やす。日本建築学会のような場ではなく、日本地理教育学会での発表を行い、教育の場に利用していただけるようにする。特に高等学校の地理教育では、GISを用いる等、地図をじっくりと読み解き、情報を重ね合わせ、考える力を培う教育への取り組みが検討されているという。この中に、災害への備えを意識させた教育方法として、本研究成果が生かされるように提案をしていきたい。 なお、農村・漁村における集落の土地利用と公共空間の使い方についての論文執筆のための追加調査も予定している。殊に奄美大島、東日本大震災被災地(女川町、いわき市)、奥尻島について、収集した情報をまとめた内容とする予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画で予定をしていた普及啓発活動が、十分にできなかったため。これは、研究集会、学会等の開催日程と、本務との日程が合わなかったことがある。夏休み期間の研修がありいくつかには参加できたが、十分な議論や授業内容検討をお願いするための時間を確保することは難しかった。 また、集落調査についても、最終的な確認調査をするための時間が、大学の本務と先方の都合、そして公共交通機関の都合との関係で調整がうまくいかないまま、時間が経過してしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、調査結果を踏まえた研究成果の公表および住教育案の公表、そして学校の教育現場での試行と普及を行う予定である。実際に高等学校の教員と交流し、また可能であれば実験的に提案授業を実施させていただき、シティズンシップ教育内容の充実をはかりたい。
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