2013 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化のもとでの東アジア移行経済・大都市圏の居住形態の変動と形成メカニズム
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24618015
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
福島 茂 名城大学, 都市情報学部, 教授 (10251349)
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Keywords | ホーチミン / 北京 / 移行経済 / グローバル経済化 / 居住形態 / 土地住宅市場 |
Research Abstract |
本年度は、ベトナム・ホーチミン大都市圏における世代・社会階層からみた大都市圏郊外部の居住形態とその形成メカニズムを明らかにした。ホーチミン大都市圏の新興市街地の居住形態は強い持ち家志向と高密な独立型連棟の住宅地形成によって特徴付けられる。住宅所有率は72.1%に達している。これを世代・学歴別にみると、住宅所有率あるいは住宅・住生活・住環境の質には格差が存在している。持ち家率は、学歴間以上に世代間の格差が大きくなっている。社会主義国のベトナムでは高学歴層の世代を超えた公務員志向の高さがあり、その賃金水準は民間に比べて抑制されている。一方、低・中学歴では自営業就業率が高く、所得水準は学歴以上にビジネスの才覚によるところが大きい。このため、学歴による所得格差(低-高学歴)は1.5~1.8倍にとどまる。 むしろ、どのタイミングで住宅取得ができたかが持家率に影響している。1990年代から2005年頃までの活発なインフォーマル宅地開発が、40代以降の低・中学歴層に対してアフォーダブルな居住機会を提供し、住民の漸進的な住宅改善を可能とした。この結果、50代以上では、学歴を問わず9割前後に達している。2000年以降の政府による土地利用権の正規化とインフラ整備が住環境の改善とフォーマル化を促した。しかし、2000年代前半の土地・住宅価格の高騰と2004年以降のインフォーマルな宅地分譲の規制強化は、20・30代の住宅取得を困難化しており、この傾向は高学歴層にも当てはまる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、ベトナム・ホーチミン大都市圏におけるグローバル経済化・移行経済化のもとでの都市居住の変動とその形成メカニズムについて明らかにした。現在、ベトナム・ホーチミン大都市圏の居住形態のフォーマル化に関する論文発表の準備をしている。また、関連する研究成果として、学術論文「Rapid urbanization and changes in quality of life of Ho Chi Minh City in the Vietnamese Transitional Economy」を『名城アジア研究』に発表した。 また、もう一つの移行経済国である中国の社会経済発展と大都市圏の土地・住宅市場、住宅政策、関連制度について、文献調査を実施した。現在、中国・北京大都市圏での居住形態実態調査の準備中である。一方、平成25年4月から研究代表者が勤務校の副学長に就任したために、当初想定していたエフォート全体に対する本研究の比率をかなり下げざるを得ず、当初予定していた中国・大都市圏における居住形態パイロット調査の実施が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
北京大都市圏郊外部の居住世帯を対象として、居住アンケート調査(ポイントサンプリング調査:400サンプル調査)を行う。主な調査項目は、①社会経済属性と就業・家計の変動(産業近代化・経済成長のインパクト)、②居住履歴と転入・住居選択理由、③住宅・住環境、④通勤事情、⑤住宅費・住宅取得・改善方法、⑥住居に対する価値観・考え方、⑦住宅の将来計画などである。アンケート結果の分析においては、世帯主の年齢層と社会階層(学歴・職業・戸籍タイプ)により世帯を類型化し、異なる世代・社会階層がどうような就業・家計構造をもち、どのような居住履歴を経て今日の居住形態に至ったかを明らかにする。異なる世代・社会階層が達成した居住形態やその格差はどのような要因・プロセスに起因するか、土地・住宅制度・政策は住宅事情の改善にどのように寄与したのか(しなかったのか)を明らかにする。 中国・北京大都市圏とベトナム・ホーチミン大都市圏の居住形態とその形成メカニズムについて国際比較分析を行う。産業化の水準・社会経済構造・人口動態を居住形態の基底条件としつつ、各大都市圏の土地・住宅関連の制度・政策、住宅市場の差異が大都市圏の居住形態にどのような影響を及ぼしたかを比較分析によって明らかにする。この分析結果を踏まえて、東アジア移行経済諸国がグローバル化と移行経済プロセスのもとで、達成した都市居住形態の特質とその要因について検証し、その居住政策のあり方について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額として145,162円が計上されている。その理由としては、中国大都市圏における居住形態に関するパイロット調査を平成26年度中に延期したことによる。 今年度は、前年度繰り越し予算も活用し、北京大都市圏の居住形態実態調査を実施する。
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