2014 Fiscal Year Annual Research Report
イオン価数弁別可能な超高速超伝導ナノストリップライン分子検出器の開発
Project/Area Number |
24619013
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
全 伸幸 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (20455439)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 超伝導 / 検出器 / 超伝導ストリップ / 質量分析 / 価数分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
質量分析装置は、原子やタンパク質などの生体分子をイオン化した後、高電圧パルスを印加して飛行させ、検出器に到達するまでの飛行時間を測定することにより原子・分子イオンの質量電荷比(m/z)を得ることができる分析装置である。しかしながら、原子・分子をイオン化する際にイオンの価数(z)を制御することは不可能であり、質量(m)を一意に決定することはできない。 超伝導ストリップ検出器は、超伝導ストリップ線から構成される検出器であり、超伝導ストリップ線に印加するバイアス電流の大きさを調整することによってイオン価数の識別が可能である。一方、質量分析装置では、イオンビーム径同等のサイズ、かつナノ秒の高速応答を示す検出器が必要とされており、超伝導ストリップ線を並列に接続した並列型超伝導ストリップ検出器によって実現される。しかしながら並列型超伝導ストリップ検出器では、イオンを検出する度に、各超伝導ストリップ線を流れるバイアス電流の大きさが変化してしまい、イオン価数の識別が不可能になってしまう。 本年度は、並列型超伝導ストリップ検出器において、イオンを検出してもバイアス電流の値が変化しない仕組みを発明し[特願2014-218137]、実際に検出器の出力波高値分布を計測することによってバイアス電流が一定であることを確認した[招待講演 2nd International Workshop on Superconducting Sensors and Detectors (IWSSD), Shanghai(China)]。並列型超伝導ストリップ検出器においてイオン価数識別が可能になり、本研究の目的を達成した。ミリメートルの検出器サイズ、ナノ秒の高速応答、および従来の検出器を凌駕する検出感度を併せ持ち、かつ価数識別が可能な本検出器は質量分析のみならず、アトムプローブなど様々な分析装置への応用が期待できる。
|