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2013 Fiscal Year Research-status Report

宇宙環境における光合成機構の解析

Research Project

Project/Area Number 24620009
Research InstitutionChuo University

Principal Investigator

大森 正之  中央大学, 理工学部, その他 (80013580)

Keywords宇宙実験 / 光合成 / ナノバブル
Research Abstract

今年度は前年度に引き続き、インド回収衛星SRE2を利用する、日本ーインド共同宇宙実験「微小重力下におけるシアノバクテリアの光合成と増殖に関する研究」を想定して、つくばの実験棟において、新たに開発された全自動型光合成活性測定装置を用いて実験を行った。前年度に問題となった、発生ガス採集時における漏れの問題は、バルブの取り付け方を工夫することにより解決した。酸素の安定同位体を含む水からの酸素ガスの発生は時間とともに直線的に増加した。また、炭素の安定同位体を含む炭酸水素ナトリウムを与えた場合、藍藻によって固定された炭素量は時間とともに直線的に増加した。これらの実験結果から、安定同位体を用いることにより、より正確に光合成活性が測定できることが確認された。
陸生藍藻のNostoc communeは気相下でも光合成を行う能力を持つため、水の扱いが難しい微小重力環境下の宇宙船内での培養が容易である利点を持つ。そこで陸生藍藻を実験材料として光合成活性の測定を試みた。野外で採集したNostoc communeを乾燥し、宇宙実験用に準備した小型のプラスチックバッグに挿入し、少量の水を加えて光合成を開始させた。その後一定時間ごとに発生酸素量、二酸化炭素量を測定した。その結果、陸生藍藻も活発に光合成、呼吸をすることが明らかとなり、宇宙における陸生藍藻利用の可能性が高まった。
ナノバブルの作成およびその物性の解析については、前年度に引き続き、暗視野顕微鏡による観察を行って、おおよその粒子直径と個数の測定を試みると同時に、今年度は新たに、Malvern社の微粒子測定装置によるガス微粒子のサイズの測定を行った。その結果、ガス微粒子の直径はおよそ40nmおよび200nmであることが明らかとなった。また、ガス微粒子の表面電位は約-30mVであり、ガス微粒子は水中で1か月以上安定に存在することが判明した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

1) 宇宙における光合成実験に向けた基礎実験及び装置開発について: JAXAがインドとの共同実験用に開発した全自動型微細藻類培養装置を用いた光合成活性の測定は、ほぼ目標通りの成果を上げたと考えられる。前年度発生したいくつかのトラブルも今年度は特に問題になることもなく実験できた。結果として、本装置内でも光合成が時間経過とともに直線的に進行することを明らかにすることができた。また、酸素と炭素の安定同位体を用いることにより、光合成活性をより正確に測定すことが可能になった。資料の扱いが難しい宇宙環境での実験には安定同位体を使用することがいかに有用であるかを検証できたと考える。
2) 陸生藍藻の培養について: 今年度は陸生藍藻のNostoc communeを利用して気相下での光合成活性の測定を試み、ほぼ期待通りの測定結果を得ることができた。この藍藻はスピルリナなどとは異なり、気相中でもある程度の湿り気があれが成長することが可能であるため、火星におけるテラフォーミングなどを想定すると、非常に利用価値の高い光合成生物である。今回の実験結果は、この藍藻の宇宙船内での培養を実現するために貴重なデータを提供するものである。
3)ナノバブルの作成、およびその物性解析について:前年度は、主に暗視野顕微鏡を用いてナノバブルの観察を行っていたが、今年度は、Malvern社の微粒子測定装置も併用して、ガス微粒子のサイズの測定をより厳密に行った。その結果、ガス微粒子の直径は約40nmと200nmであることが明らかとなった。またガス微粒子の表面電位は約-30mVであり、ガス微粒子は水中に一か月以上安定して存在することが明らかとなった。この事実は、ナノバブル水を宇宙に持っていく場合に非常に重要であり、ナノバブル水の宇宙利用をより現実的なものとしたと考える。

Strategy for Future Research Activity

1) 宇宙における光合成活性測定について: 今年度は、これまでの研究成果をまとめるとともに、実際に宇宙で実験をする際の問題点などを慎重に検討し、JAXAの宇宙実験に応募可能かについて検討を進める。また、これまでの実験で足りない点がなったかを検討し、もしあれば追加実験を行う。光合成生物を宇宙で培養、栽培する技術は人類が宇宙に乗り出していくときに欠くことのできない技術である。今後、多くの植物、微生物研究者と連携して、技術開発を進めたい。特に大型の微細藻類培養装置、並びに大型の植物栽培装置を宇宙基地用に考案検討し、将来の宇宙開発を支援していきたい。
2) ナノバブル水の作成、およびその宇宙での利用について:ガス微粒子を含む水の開発に取り組んだ理由は、将来の宇宙開発において従来私たちが用いてきた水とは異なった性質を持つ水が宇宙環境では求められていると考えたからである。たとえば、オゾンナノバブル水は殺菌をする際に非常に有用であろうと思われるし、二酸化炭素ナノバブル水は、宇宙における効率的な光合成に必須であると考えたからである。ナノバブル水の最大の利点は、水中のガス微粒子が長時間安定に存在することである。地上で作成した様々なナノバブル水を宇宙に持って行けば、宇宙で複雑な工程を経てナノバブル水を作成する必要はない。今後、ナノバブル研究者は増加すると思われるので、それらの研究者と共同して議論、実験を推進し、宇宙のみならず、地上におけるナノバブルのさらなる利用法について、未来に向けて研究を展開して行きたい。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

今年度は、昨年度からの繰越額役140万円が当該年度予算に上乗せされたため、消耗品費、旅費等の経費を差し引いても約88万円を次年度に繰り越すこととなった。これは、使用している装置が全く故障しなかったことと、他の研究室にあった、微粒子測定装置を利用させていただいたことによる。また、人件費、謝金を使用する必要が生じなかったことや、消耗品もすでにあるものを有効利用するなどして、節約に努めた効果もあったと思われる。
次年度は、最終年度となるため、通常の実験経費に加えて、これまでの実験の取りまとめのための国内旅費や、成果発表のための国内外の学会参加費が必要となる。また、論文投稿のための経費も必要である。同位体を利用した実験においては、同位体の分析は外注を予定している。遺伝子解析の必要が生じたときは外注により解析を行う予定である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2014 2013

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] NrrA directly regulates expression of the fraF gene and antisense RNAs for fraE in the heterocyst-forming cyanobacterium Anabaena sp. strain PCC71202014

    • Author(s)
      S.Ehira and M. Ohmori
    • Journal Title

      Microbiol.

      Volume: 160 Pages: 844-850

    • DOI

      10.1099/mic.0.076703-0

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Genome-wide and heterocyst-specific circadian gene expression in the filamentous cyanobacterium Anabaena sp. PCC7120.2013

    • Author(s)
      H. Kushige, H. Kugenuma, M. Matsuoka, S. Ehira, M. Ohmori, H. Iwasaki
    • Journal Title

      J. Bacteriol.

      Volume: 195 Pages: 1276-1284

    • DOI

      10.1128/JB.02067-12

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] Microalgal photosynthesis in space2013

    • Author(s)
      M. Ohmori, Y. Suwa, C.Katsuyama, Y. Shimura, M. Kamada, A. Higashibata, M. Natsuisaka, T. Yamazaki, N. Ishioka
    • Organizer
      The 5th Taiwan-Korea-Japan International Symposium on Microbial Ecology               ial ecology
    • Place of Presentation
      National Central University, Jhongli, Taiwan
    • Year and Date
      20131031-20131102
  • [Book] Cyanobacteria: an economic perspective2014

    • Author(s)
      M. Ohmori and S. Ehira
    • Total Pages
      345ページ
    • Publisher
      Wiley-Blackwell

URL: 

Published: 2015-05-28  

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